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1-1 才能

今回も関西弁が出てきます。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈












面接の日。

人生で2度目なので緊張しないと思っていたが、やはり少ししてしまう。電話で応募した時はしなかったのに。

ちなみに1度目の面接をしたバイトはネカフェだった。

時給も他のところより高かったし、家からも近かったのでそこにした。が、3ヶ月で辞めた。

そこで働いていた社員の人が大嫌いになったからだ。






「服装自由って言っとったけど、常識的に考えてジーパンはあかんよな……。」






電話でははっきりとジーパンはダメ、とは言われていなかったが、第一印象は絶対悪く見られるのでこれは無しだ。

動きやすくて好きだが、仕方がない。

他のズボンはもう黒いのしかなかったので、それを履いた。

上の服もパーカーとTシャツ数枚と白い羽織ものぐらいしかなかったので、服の前の真ん中にちょこっとデザインされているTシャツの上から羽織ものを着た。







「うし。」







持ち物と時間と場所を確認して1階まで下りると、ドアを1枚挟んだ向こうのリビングから呼ばれた気がした。

階段を下りる足音で気づいたのだろう。

無視して玄関で靴紐を結んでいると、リビングから母親が出てきた。鬱陶しい。






優矢(ゆうや)、聞いてるの?」


「何。」


「どこに行くのって聞いてるのよ。」






でた。

声色からして怒っているのがわかる。

沢合(さわい)がどこかに行こうとする度にいつも聞いてくるのだ。

真面目に答えていた小学生の時の自分を今思えば、アホやなと思う。






「遊びに行くだけ。」






わざわざ母親の顔を見て話す気も起きないので、いつもと同じ言い訳を言って家を出た。

出る時に「ちょっと!」と呼び止める声がしたが、そんなのも無視した。



外に出てチラッと空を見ると、雲ひとつない快晴だった。なんだかバカにされているような気分になって、沢合(さわい)の頭に血が上っていく。







こっちだって怒っているのだ。もう何年も前から。









──────────────────────────










スマホの地図アプリで目的地を設定し、経路通りに進んでいく。

家から20分。まあまあかかるが、たまたま見つけたバイトにしては近い方だった。

いつもは家のポストなんて見ないのに、何故かあの時はふと、ポストの中身が気になったのだ。

それで見つけたのがあのチラシ。







(運命というかなんというか……。)







今思えば、ある意味、運命だったのかもしれない。









歩いて15分。

大通りの道を歩いていたはずなのに、そこから道を1本外れただけで建物が少なくなっていき、田んぼが増え、最終的に着いたところが田んぼに囲まれた大きな"森"だった。

入口はややアーチ型に穴を開けたようになっていて、トラックは多分無理だが、背の高い軽自動車ならギリギリ入れそうな大きさだ。







「……。」






ここで合ってるのか不安になってきた。

"森"の入口で面接場所をメモした紙を何度も何度も地図アプリで確認したが、赤いピンは変わらずここを指している。






(やべ!時間!)






そんなことをしてる間に10分も時間が経ってしまった。

せっかく早め着いたのに、遅刻したら元も子もない。



面接時間まであと数分。間違ってたら謝るしかない。



なんとかなれー!という気持ちで沢合(さわい)は怪しい"森"の中に小走りで入っていった。






入ってすぐ急な坂道があったので、小走りからダッシュに切り替えて無理やり登った。

登り切ると、目の前には"家"があった。






(…事務所?これが?)






バイトのチラシに"雨瀬事務所"と書かれていたが、どこをどう見ても"家"だ。

割と珍しいレモン色の塗装がされている三角屋根の2階建てだ。かなりでかい。

そして多分、というか絶対にいらない大きくて豪華なアーチ型の門扉もある。車1台分は通れそうだ。


門扉の向こう側を覗くと、少しだけ整地されている小さな庭と誰もが持ってそうな背が低めの普通車があった。

車はそれほど高そうには見えないが、それ以外の物で判断すると間違いなく、この家の主は金持ちだ。

沢合(さわい)は、想像していた事務所の見た目と違いすぎてしばらく見とれていた。






(……は!こんなことしてる場合ちゃう!とりあえずチャイムを……。)






ピンポーン




カメラ付きインターホンを鳴らしてしばらくすると、出てきたのは若い声をした男性だった。






『はい。』


「あ、こんにちは。そちらにバイトの応募をさせて頂きました。沢合(さわい)です。」


『あーはいはい!ちょっと待っててくださいね。』







良かった、ここで合っていた。

よくよく声を聞いてみると、電話で応募した時に対応してくれた人と同じだ。


少し待っていると、家の中から真四角のメガネをかけた若そうな男性が出てきた。

メガネの男性は門扉を開けて「どうぞ、着いてきてください。」と沢合(さわい)を敷地内に入れた。

ドアの前には2段ほどの小さな階段があった。

メガネの男性はそれを上って中に入っていったので、沢合(さわい)も彼の後に続いた。



中に入ると、目の前にはドアがあった。

ドアの向こう側は多分リビングなのだろう、閉められていたので中までは見えなかった。

玄関を上がってすぐ左側に片持ち階段があり、メガネの男性は「こちらです。」と言って上って行く。






(すげー!こんな階段テレビでしか見いひんわ!)






興奮気味になりながら2階に到着すると、すぐ目の前に部屋があった。

部屋に入ると、中は全体的にシックな雰囲気だった。

家具は黒色で統一されていて、見るからに高そうなものばかりだ。






「ここに座ってちょっと待っててください。」


「あ、わかりました。」






メガネの男性は爽やかな笑顔でそう言って下へ降りて行った。

言われた通り椅子に座ったが、落ち着くはずがない。

椅子の前にあるテーブルはガラステーブルで、背もたれは沢合(さわい)の頭よりちょっと上まで長い変な椅子だ。見るからに高い。

どこに売っているんだこんな椅子。



そんな風に思いながら部屋を見渡していると、ある写真に目がとまった。

写っていたのはあのメガネの男性と短く2つ結びをした小さな女の子、そしてベリーショートの女性の3人だった。3人はいい笑顔で写っていて、幸せそうな家族だなと感じさせる写真だ。






(子どもおるんや……。)






心の中で呟いていると、ドアが開く音がした。






「お待たせしました、お茶をいれてきたのでよかったらどうぞ。」


「わざわざありがとうございます!」






日差しがまだ痛い日もあるが、風の冷たさで季節の移り変わりを感じさせるこの9月終盤。


余裕ぶっこいてこういう時期に半袖で来てしまったので、温かいお茶はありがたかった。


一口飲んでる間に、メガネの男性は沢合(さわい)の前の椅子に座ってノートを開いた。







「それでは面接、始めましょうか。」









──────────────────────────









面接の形式は1体1で、メガネの男性が面接官だった。

質問された内容は簡単なもので、沢合(さわい)は一度も詰まることなく答えることができた。






「質問はこれで以上です。なにか聞きたいことはありますか?」


「うーーーん。……特にないっすね…。」


「そうですか。それでは最後にやってみて欲しいことがあるんですが、いいですか?」


「?はい、大丈夫っすけど……。」







沢合(さわい)は頭にクエスチョンマークを浮かべながら面接官について行くと、面接した部屋とはまた別の部屋に案内された。

中はさっきの部屋よりも少し狭く、窓も無ければ家具も無い。

唯一あるものと言ったら、奥の壁に画鋲で固定されているまあまあな大きさの"的"があった。

その下には小さな箱も置いてある。







「これであの的の真ん中に穴を開けられますか?」







爽やかな笑顔で面接官はが渡してきたのは"本物に似ている銃"だった。どっから出してきたんだ。


「え」と沢合(さわい)がびっくりしていると、慌てるように弁解してきた。







「あ、もちろん本物じゃないですよ!弾はBB弾というプラスチックでできてる物を使用しているので、人に向けなければ安全です。」






怪しすぎるが、もしここで拒否してバイトが不合格になったら……と思うと口が勝手に「わかりました。」と動いていた。

沢合(さわい)は自分の荷物をその場に置いて、面接官からBB弾が入った銃を受け取った。

銃を使ったことはおもちゃを含め、一切無い。

なのでドラマでよく見る構え方をしたが、なんかやりずらかったのでしっくりくる構え方を探した。

最終的に辿り着いたのは"両脇を締める"構え方だ。

こっちの方がまだやりやすい。






「何発撃てばいいんすか?」


「何発でもいいですよ。」


「了解す。」






銃の凸凹したところ、いわゆる照準点を的の真ん中に合わせるんだろうなと思いながら合わせていると、集中力も自然と高まる。

ここかな、と思ったタイミングでとりあえず3発撃ってみた。


銃を下ろして的を見てみると、思わず「お。」と声が出た。





沢合(さわい)が撃った3発は全て、的の真ん中に命中していた。





撃った場所から的までの距離は5mほどだったが、初めてにしては上出来だ。




的を見た面接官はメガネのブリッジを上げてこう言った。







「合格です。」











最後まで読んで頂きありがとうございます。

面接官が関西弁じゃないのは生まれも育ちも関東だからです。関西に引っ越してきたのは2年ほど前のことなので関西弁はまだ喋れません。ちなみに奥さんは関西人です。

それでは。

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