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結局のところ。

 ――婚約破棄(あの事件)からおおよそ3週間。


 大きく変わったことは特に何もなくて、今までと違う点があるとするならアイリが日常にいないことだけだ。

 まぁ、婚約者に振られた男っていう評価はつけられてるんだろうけども。


 だから今日もオレはいつも通りライアンと遊ぶべくアイリの家に遊びに来ている。急に(アイリ)がいなくなって寂しがってるし。


「次は何して遊ぶんだ?」

「うーん、なにしようかな。あ、ちょっと待ってて」


 ライアンがどこかに何かを取りに行ったのでオレは机の上に広げっぱなしのすごろくを片付けておく。

 すごろくはライアンのお気に入りで、アイリが昔、誕生日プレゼントで買ってもらったものだ。追加のマップを買えばさらに遊べるようになってる。


「エミリオ君。エミリオ君ならこれ直せる?」

「ん、ぬいぐるみか?」


 ライアンが取ってきたのは腕がちぎれてダランとした綿が飛び出てるイヌのぬいぐるみだった。よく見ると片目もユラユラとしてしていてしっかりくっついてるか怪しい。


「針と糸さえあればなんとかなるとは思う」

「そっか、じゃあ借りてくるね」


 並縫いくらいは出来るしなんとかなるはず。あとはオレの器用貧乏な才能にかけるしかないな。


 ライアンが借りてきた針に糸を通して玉結びをして腕側の布の裏に針を入れて、それから胴体に針を入れた。


 それを繰り返して3分の2ほど縫えたところでアイリが帰ってきた。


「ただいま帰りま……」

「おかえりなさい、姉さん」

「おかえりー」

「な、な、なんであんたがここにいるのよ?!」


 オレはいつも通りに挨拶したが、アイリはかなり驚いて口をパクパクとさせている。なんでオレがアイリの家(ここ)にいるのかって感じだな。


「ライアンと遊ぶためにな」

「そうだったんだ」


 ごく当たり前の光景にアイリは納得して、口を一文字に結んだアイリはぎゅっと服の裾を掴んで、躊躇うようにして口を開いた。


「え、エミリオ。……あのね、その、ごめんな――」

「姉さん、エミリオ君すっごいんだよ!」


 アイリが意を決して謝罪をしようとしたのに、それに気付かずライアンは今思い出したと声を弾ませて、久しぶりの(アイリ)に喋り出す。


「エミリオ君ね、来月からセレスティーナ様の補佐になるんだって!あれ、姉さんどうしたの?」


 オレのことを自慢げにアイリに話していたライアンは、アイリの様子がおかしい事に今気がついたらしく不思議そうな顔をしている。


 なかなか言い出せない謝罪を気合いを入れて一気にと頑張っていたアイリは、ライアンからの横槍が入ったために羞恥に顔を真っ赤にしていた。


 なかなか言い出せずにいたアイリと、久しぶりの姉が嬉しいライアンと……起こるべくしておきたとも言える。まぁ、なんとも言えない空気になってるのは確かなんだよな。


 このままだとアイリはなにも言い出せずに終わるし、ライアンの追及も終わらないだろうしオレが動くしかないわけで。


「アイリは一世一代の告白(プロポーズ)をしようとしてたんだよ」

「え、そうなの?」


 ライアンはおどろいて目を丸くしてアイリの方を見た。うん、素直に信じるあたり、アイリと違ってひねくれてない。


「ち、違うわよ!エミリオに謝ろうと思ってて……」


 即座に否定するアイリはもう一度気合いを入れるために息を大きく吸い込んだものの、一度空回りした気合いは取り戻すのが大変らしく深呼吸をくりかえすだけになっていた。


告白(プロポーズ)だろ。だってオレらの関係性は全く変わってないわけだし、これからもまたお願いしますなんて」

「え、と、でも」


 狼狽えるアイリにオレはライアンを呼んで、この前ライアンにオレが教えたことをアイリにも教えてやれと言った。


「貴族の婚姻等は国王の許可の下行われる、だよね。エミリオ君」

「おー、よく覚えてたな。すごいぞ、ライアン」


 褒められたことで胸を張るライアンの頭を撫でながら、オレはそういうことだとアイリを見る。


 この件に関して国王は何もしていない。つまりオレとアイリは婚約者のままで、破棄も解消もされてない。何も変わってはないのだ。


「ま、オレたちに対する世間の評価は変わったかもだけど。悪い方に」

「うん、そうだよね。……ごめん、ごめんなさいエミリオ。あたしが……」


 俯いたアイリは震える声で謝って、どう言えばいいのか迷って視線をあちらこちらに彷徨わせる。

 オレとしてはごめんの一言さえ聞ければ十分で、元々長い付き合いでアイリの性格もよくわかってるから、どうこうするつもりもなかった。


 それにアイリもオレも、あの王子もこの件に関して言えば同類だ。


「確かにオレもあんなやり方されて傷つかなかったわけじゃないけど、結局のところセレンに利用されたんだよ。じゃなきゃお咎めなしってわけにもならないだろ」

「それってセレスティーナ様じゃなくて陛下じゃない?」

「あー、そうだよな」


 セレンに王位を継がせるために、オレたちは都合のいいコマだったというわけだ。利用した代わりになんのお咎めもないのだから受け入れるしかないわけだけど。


「なんか納得出来ないところもあるけど……。ところでなにやってるのよ?」

「ライアンのぬいぐるみの補修」

「……貸して、あたしがやる」


 縫い後を見て呆れたアイリがスイスイと縫っていく。オレと違って縫い目が綺麗に整っていて、あのアイリにしては丁寧な仕事だと感心した。


「あ、そうだ。アイリ、空いてる日ってあるか」

「大体空いてると思うけど、何よ急に」

「指輪。セレンとフランシスから言われてんだよ。アイリみたいのが寄り付かないように虫除けに作っておけって」


 王太子になる王女の補佐だから高給取りになるのは確かで、オレは必要とは思わなかったが狙ってくる女は必ずいるからとセレンに作るようにとかなりキツめの口調で言われている。


 アイリは自分のやったことを引き合いに出されダメージを食らって大人しくなったのでオレは1人話を進める。


「アイリ好みのでっかい宝石は無理だけど、デザインくらいなら出来ると思って」

「ううん、それがいい。それでどこまで行くの?」

「どこって、すぐそこの鍛冶屋のおっちゃんのとこ。娘さん夫婦がデザイン手伝ってくれるってさ」


 ムードもなにもあったものじゃないけど、まぁこれがオレたちらしさってものなんだろう。


最後までお読みいただきありがとうございました!


あ、王子にも婚約者はいます。

アイリにお咎めがなかったことに一役買ってます。

彼女は旦那様の後ろを3歩下がってついて行く淑女だったのですが、なんでも言い合える仲のいいエミリオとアイリに憧れていたので陛下に減刑を願い出ています。

彼女は王子をちゃんと愛していて現在はアイリのように言いたいことを言えるよう修行中の模様。


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