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思うがままに

 ――高々に王子が宣言されたのは婚約破棄。


 あーちがうちがう、そっちじゃない。


 王子の対面にいる美人なご令嬢じゃなくて、その奥の頬をかいてる男ね。まぁ、オレなんだけど……。


 え、王子の婚約者が男?と勘違いしてる人もいるかもしれないが、王子から視線を左にやるとちゃんと女の子がいるからご心配なく。


 女の子はオレの幼なじみ兼婚約者のアイリなんだけど、まさか有言実行するとは――。


 驚きや戸惑いよりもそんな感想が出でくる自体あれなんだけど、他に何も思い浮かばないので仕方がない。


 アイリは昔から上昇志向の強いやつで、昔から王子とか宰相の息子とか、将来有望な騎士とかと結ばれてみせるとか言って、あんたとは結婚なんてしないと言われ続けてたし。

 まぁ勝手に決められたものだしそう言いたくなるのはオレもわかるんだけどさ。


 そーゆうことで、相思相愛の2人からオレはアイリとの婚約破棄を突きつけられてるってわけ。2人の愛を邪魔する悪者扱いで。


「あーうん、分かった。どうぞお幸せに」


 ショックだとかそんなこと思うよりも早くいつも通りの言い方が自然と口からこぼれた。

 なんていうか、友達どうしの軽い別れの挨拶みたいな。昨日までと何ひとつ変わらない感じで。


 騒ぎを起こして申し訳ないと一言だけ詫びをいれたオレはこれ以上空気を悪くするのも嫌なのでさっさと帰ることにする。


 そうしようとして一瞬よぎった心配事に、オレは振り返ってアイリを呼んだ。これまたいつもの調子で。


 パーティー会場で大声なんてマナーが悪いんだけど、いつもやってることってつい出るもんだな。


「あ、そうだアイリ!帰りは送ってもらうんだよな、そうじゃないなら馬車は置いて帰るけど」

「ちょ、どうやってかえ――」

「アイリの名を軽々しく呼ぶな。心配せずともアイリは俺様が責任もって送り届けるからさっさと帰るがいい」


 シッシッと手で王子に追い払われながら今度こそオレは会場を後にした。


 ☆☆☆


 家に帰るとオレは深呼吸をしながら両親の元に向かった。


 言わなくてもすぐ広まって耳に入るだろうけど、当事者だけに言わないのは出来ないし。いやまぁ後で知られ方が余計に怒られるから。


「――ってことがありました」

「……お前がしっかり繋ぎ止めておかないからこんなことになったんだ!」


 苛立つように拳を作った父親はダンっと机を叩いいて怒鳴ったがそれ以上何も言わなかった。それは母親も同じで、アイリの性格を良くも悪くも分かっているからオレだけを責めることが出来ないのだろう。


 いつも通りとはいかない眠りについて翌日、眠気が飛ばない頭で朝食をとるためリビングの扉を開けると――。


「――うちの娘が申し訳ない、エミリオ君!」


 床に頭と手をつけて謝罪してくるアイリの家族の姿があった。両親と弟の3人だ。弟はよく分からないけどアイリ()が悪いことしたくらいの理解のようだった。


「頭を上げてください。おじさんおばさん、ライアンも」


 こんな朝早くから真摯に謝罪に来てくれるだけで十分。それに本音を言うなら謝罪なんかなくったって別に良かったんだ。

 この人たちは悪くないし、家族みたいに心配してくれる、それだけで。


「オレはアイリがそれでちゃんと幸せになれるなら構いませんから」

「いや、それでは……」

「まぁ、結婚するチャンスは逃したかもですけど。代わりにオレも自由に出来るチャンスをもらえたわけですし」


 恋とも無縁な生活してるし、なによりモテないのでそっちは縁があればでいいわけだし。今まで言い出せなかったつきたい仕事につけるチャンスが巡ってきたんだ。


「本当に申し訳ない……」


 これ以上謝罪されてもオレが嫌だし。なにより、おじさんたちの辛そうな顔をみるのがオレには辛い。


「それなら1つだけお願いしてもいい?」

「なんでも言ってちょうだい」

「全力を尽くそう」


 う〜ん、言い出しにくい。

 なんか命を差し出せっていったらそのまま差し出しそうな雰囲気があるだけに。そんなことを言うつもりは全くないんだけど。


「いままで通り仲良くして欲しい」

「……そんなことでいいのかい?」


 呆気にとられたように返したおじさんにオレは大きく頷いた。

 これはオレの本心からの望みだから。


「うん。だってオレはおじさんたちのこと大好きだし、疎遠になりたくないから」


 長い付き合いだから、おじさんたちにはオレの気持ちが嘘や冗談じゃないことがしっかりと分かったらしい。


 謝罪の言葉を口にしかけて取りやめたおじさんたちは、代わりに感謝の言葉を口にして涙をこぼしていた。


 アイリの家族の先にいる両親を見れば、2人ともオレの出した答えに大きく頷いた。


オレと同じようにアイリの家族に対して困ったように笑いながら――。


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