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決着

宮地はあの瞬間、私が意識を取り戻したのを察し、賭けに出た。

銃を置くとき、黒梟からは死角になり、私の手のひらの前に来るように、置いた銃を蹴り弾いたのだ。

あたかも自身から銃を遠ざける行為のように。

銃を撃たない私に全てを託したのだ。

私を信じ託してくれたのだ。

そうでなければ、あんな行動には出ないだろう。ありがとう宮地。確かにあの化け物を討ったぞ。



「晴彦君、片桐さんの言うこと、真に受けちゃだめよ。その人、ただの銀行員だったのよ」

「そうなんですか」

「そうよ。退職後、奥さんに離婚されて、娘さんたちも皆離れちゃって。今まで、家事を何一つやってこなくて、買い物ひとつ出来なかったそうよ」

晴彦は、車椅子で眠っている片桐に、視線を落とした。

「自宅の階段から落ちて、誰にも気づいてもらえず、餓死寸前だったそうよ。それでおかしくなっちゃったみたい。その〈中山〉って言うのが、片桐さんの理想の自分だったみたい」

晴彦は、年配女性の先輩介護士に『分かってますよ』と微笑み、老人の乗った車椅子を、音を立てずにゆっくりと押し、エレベーターへ乗り込んだ。


見晴らしのいいオフィスで、レディーは六人の仲間に結果報告をした。

「パパ、『ボル』は確かに存在したわ」

腕組みをした大柄な男が大きく頷いた。

「『ジェイ』の居場所も教えてもらえることになった」

ヒュー。

トラが軽く口笛を吹いた。

「ただ、こちらのネットワークを寄越せと言ってたわ」

一呼吸、静寂が通り過ぎたがそれだけだった。

「仕方がないが、奴なら勝手に入ってくることもできるだろう。いや、よくやった」

パパはその大きな手でレディーの頭を優しくなでた。

「奴は、日本政府の黄島という男に取りついていたわ。やはり全身は黒色の服を着ていた。あと、メガネ。眼鏡をかけているときは奴の眼を見ても大丈夫だって言ってたわ」

「それは本当か!」

「えぇ、……多分。だって『ボル』本人が言ってたの。でも怖くて私は目を見れなかった」

相手があのボルならまぁ、仕方がない。

しかし、それが真実であればある意味、今回の最大の収穫なのかもしれない。

六人はそんな表情でお互いを見合った。

「でも、レディーが無事でよかった。中山も、そう、マスターも一命を取り留めたらしい」

パパの顔が優しく綻んだ。

「マスター生きていたの」

「あぁ。日本の警察はクレイジーだ。あの『ボル』を一時とはいえ退けたのだから。ただ顔無しのダメ押しの狙撃があったから、中山は今生きている。顔無しに感謝してもらいたいな」

「いや、奴の体はあの時もう窓際に出てきた時点でほぼ詰んでいた。こっちは引き金を引くだけだった」

「でもこれで顔無しも箔が付いたんじゃない。『ボル』を撃った男って」

「よせよ。『ボル』に個人的に狙われたらたまったもんじゃない」

「そりゃそうだ、このことは我々だけの秘密だ」

パパは一同を厳しい顔で見まわした。

「とりあえず。我々の任務は完了した。NASへは私から連絡する。『ジェイ』のことは『ボル』からの連絡を持とう。では皆、機会があればまた会おう」

七人はお互いを称えあい、やがて一人、また一人とオフィスをあとにした。

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