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ボーダーファミリー 3

 柿本たちが『せいちや』で会合を開いた次の日だ。

「パパ、これをみて。何か変じゃない?」

 見晴らしのいいオフィスで、レディーとの再会を喜んでいた時、Bは警視庁の防犯カメラに映る柿本のスケジュール変更に気が付いた。

 五日後の国会初日、さくらメディカルセンター入院とある。

 国会初日に入院予定とは、何か不都合が生じたのか、又は命の危険を察知し避難するのか。

「やっとAの出した暗号が解明できたのか」

「ちょっと待ってください、もう少し探ってみます」

 Bはそう言うと、警視庁のデータベースに深くもぐりこんだ。

 警視庁内の監視カメラに、当の柿本が映っているではないか。

 その後ろには警視総監の辺見が付き従い、ある部屋に入ってゆく。

 Bの指は、巧みにキーボードを操る。

 話し声が聞こえてくる。

「危機管理意識の低い警視総監なんて、楽勝だよ」

 どうやら辺見のスマートフォンが周囲の音声を拾っている様だ。

 監視カメラには、別の男がドアの前で身だしなみを整えて姿勢を正しているのが映っている。

 ドアがノックされる。

「楢崎警部補であります。お呼びですか」

 壁越しだというのによく通る声だ。

「入りなさい」


 柿本たちが描くシナリオが少し見えた。

 彼らはまだ、相手が『ボル』であることは把握していない。

 それどころか、楢崎という警察官に首相を狙撃させ、テロリストに諦めさせる、又はおびき寄せるなどと。

 この場合のテロリストとは、我々のことだろう。

 そのおびき寄せる先が、さくらメディカルセンターということか。

 馬鹿な奴らだ、お前たちが引き寄せるのは、黒衣をまとった人の形をした死神だぞ。

「おっ、これ見てください。さくらメディカルセンターが、今日から国会開会日までの五日間、急募をかけています。紛争地への医療従事経験者を短期で。緊急医療の講習会をするので、講師又はスタッフとして。と、ありますね」

「狙いは、自分の所のスタッフを当日休ませたいんだな。その気持ち、上司として理解できる」

 実際は、先日の救急車暴走事故であてにしていた臨時医療スタッフに欠員が出たため仕方なく募集をかけたのだった。

「ちょうどいいじゃない。アタシ、ここに入れば『ボル』に会えるんじゃない」

「あなたは、真逆。紛争地の戦闘従事経験者でしょ」

「似たようなモノよ。むしろ『ボル』相手じゃ、戦闘経験者のアタシの方がどんな医者より使えるわよ」

 五人全員が頷く。

「あと、この楢崎って男、腕は確かなの?外したら作戦がパーになるけど」

「顔無し、サポート願えるかな」

「問題ない、彼の後方より監視して、万が一の場合は私が柿本を撃ち抜きます」

「殺しちゃ駄目よ、顔無しさん。殺しちゃったら『ボル』が出てこない」

「問題ない、防弾服で止まるよう優しく撃つから」

 一抹の不安を五人は抱えなければならなかった。


 国会開会当日、レディーのスマートフォンにAの笑顔の写真が届いた。

 警視庁内は、総理及び国会周辺警護のため、早朝から人員が出払っていた。

 当然Aが収監されていた独居房には監視員がいたが、なぜかその日は交代員がなかなか来なく、便意をもよおした監視員は、たまらず席を立った。

 出がけに寄ったコンビニで、珍しくスピードくじが当たって、栄養剤をもらったけど、ジャイアントフランクと、相性が悪かったのかな。

 そんなことを考え意識を他に逸らしながら、内股早歩きでトイレに向かった。

 その隙にBが電子ロックを解除し、後はレディーと同じ、まんまとAは桜田門の外へ戻っていた。

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