ボーダーファミリー 1
ナキ大使館周辺で、中山達が二名の容疑者を確保した頃、五人の男たちは見晴らしの良いオフィスビルの一室で、大画面モニターを囲みながら軽口をたたいている。
「ブラザー・Aとレディーが捕まった」
「定時連絡後、直ぐみたい」
「早いな。内通者か?Bお前、今朝Aと揉めてただろ」
「いや、どの国にも鼻の利く番犬が居るものさ。そいつが一番厄介だけどな」
「何で、身内を売ると思ってんだよ」
「へへへ、冗談だよ」
「あの爺さん、強いな、パパとどっちが強いかな」
「う~んでもパパじゃない。パパと同じマスタークラスよ。絶対」
「流石、カラテとジュウドウの国だね」
「違うよ、ケンシロウの国だからだよ」
「お前とレディーは、アニメの見過ぎだ。しかも古い」
「参ったな。シーマに怒られるよ」
「ジェイに知られたら、俺たちみんな消されちまうぜ」
「ジェイが戻ったらな」
――沈黙が一瞬訪れたが、すぐにBが雑音を発した。
「二人と一緒に居た娘は、『JK』?」
「いや、あの子は何も知らないただの女子大生のアルバイト、『JD』?とでも言うのか」
「『JD』ね。初耳だな。ワールドワイドでは無いよね」
「馬鹿言ってないで、これからどうする。パパ」
パパと呼ばれた巨漢の男は、他の四人を見回した後、静かに言った。
「問題ない。計画は続行だ」
四人は、当然そうだろうと、それぞれの持ち場に戻っていった。