表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

1.これまでとこれから

Tips:筋力は所持重量の上限と使用可能な武器に影響がある。また、持ち上げる動作など物を動かす行動に影響がある他、白兵攻撃にボーナスがつく。

 部屋に戻ってインスタントコーヒーを飲む。砂糖はたっぷり。牛乳ましまし。甘ったるいコーヒー牛乳を飲んで一息ついた。


「包丁に血はついていなかった。返り血もなかった」


 ゾンパニでは出血の描写はあったが、返り血は浴びていなかった。そしてさっきのゾンビを倒した時は出血したようには見えなかった。

 返り血は当然浴びていない。現実味の無い結果を見て、理解できた。


 今の世界は、ゾンパニの設定が反映されている。



---ステータス表示

外見:小柄

状態:恐慌(小)


ポイント:10

筋力:4

耐久:4

体力:8

精神:6

敏捷:6

器用:10


EXスキル:『弾数節約Lv1』

スキル:『料理Lv2』『道具作成Lv2』Up!『短剣技Lv2』『跳躍Lv1』new!『剣術Lv1』new!『白兵Lv1』

---


 ゾンパニというゲームでやることは大きく分けて3つだ。


 敵を倒す。

 罠や領地拡大を含めた拠点の強化をする。

 家具や食料を含めた道具類を作成する。


 この3つの内、何を行ってもポイントは増えるし、スキルは習得・習熟される。


 スキルの種類があまりに多いので、一つの行動で複数のスキルが生える(・・・)ことは良くある。公式情報は殆どないためスキル効果はプレイヤーの有志が作ったWiki参照となる。

 それによると、『剣術』は刀剣類の使用時、攻撃力を上昇させる。『白兵』は近接武器装備時の回避率とクリティカル率上昇。

 ゾンパニで包丁を使った時は一撃で倒したことは殆どなかったけど、どうやら急所にクリティカルさせれば包丁でもワンパン出来るらしい。


 白兵戦でゾンビと闘える事は分かった。しかし包丁だけで戦うのは勘弁したい。だから次は銃を手に入れたい。

 理由は簡単だ。ポイントは貴重だが、『弾数節約』のレベルを上げないといけない。EXスキルは強力なスキルが多い。レアなスキルはもっと強力だ。

 『弾数節約』。これが俺の生命線だ。早く銃を使えるようにしないといけない。


 ところで。ゾンパニの仕様だが、完成品を買う場合と部品を買う場合で合計金額が大きく変わる。

 【器用】が低くても重火器を使えば威力のごり押しが可能なので、高筋力の重火器蹂躙という戦術も確立されていた。そういう場合、高くつくが完成品を買っていくのだ。

 高【器用】のガンナースタイルなら重火器以外のどの武器でも使用可能だし、道具を作成する際の成功率も高いので、当然部品購入をする。


 後でサブマシンガンを買う事を考えて、最初の銃は威力高めの拳銃にした。


 M1911。コルトガバメントの通称で知られる古強者だ。【筋力】4ならギリギリ扱える範囲のオートマチック拳銃だ。購入すると効果音と共に、手の中に銃が現れた。

 ずしりと重いM1911が落ちないよう、グリップを握る。手に伝わる硬質感と、重みに比例した殺傷能力を感じた。


「これで敵を倒すか。あ、でも弾数管理とかどうしよう」


 7発マガジンの拳銃なので、予備マガジンを二つ持っていても合計21発。スキル上げをするには少々物足りない弾数だ。1発1ゾンビで十分元が取れるが、もっと効率のいい方法はないだろうか。

 包丁を振って飛び跳ねてを2時間ほど続けて、やっとLv1だ。敵を倒せば上がりやすいとはいえ、敵を倒さずに事前にスキル上げ出来るに越したことはない。


 部屋の中を歩き回って考え事をしていると、ふと足元で充電しているバッテリーに気づいた。電動銃用のバッテリーだ。

 一人暮らしを始めて、なんとなくモデルガンが欲しくなって、拳銃やサブマシンガンなどガスも電動も含めて何丁か買っていた。サバゲ―をする予定も、一緒にサバゲ―する友人もないのに。

 何でバッテリーを充電しているんだと思って、モデルガンを当て続けたらゾンビを倒せないかと、ダメ元で準備していたことを思い出した。


「これ、使えるかも」


**************************


 バッテリーを見つけてから数十分が経過した。


 その間何をしていたかと言うと、まず最初に風呂場へ座布団を持ち込んだ。

 次にバッテリーやマガジンを装着した電動のサブマシンガンを用意し、延々と座布団目掛けて電動のサブマシンガンを撃ち続けた。

 フルオート特有の稼働音が立て続けに鳴り、リコイルの反動が手に伝わる。被弾したら痛いのにサバゲ―する人の気が知れなかったけど、この銃を撃っている感は気持ちがいい。これを味わうだけでも楽しい。

 しかし問題はある。跳弾だ。小さな樹脂製の玉を使用しているが、これがまた、景気よく跳ねる。

 そこそこ柔らかい座布団目掛けて撃っているのに、たまに跳弾して顔に当たる。痛い。目に当たったら失明しそうだけどゴーグルが無いので、当たったら我慢だ。


 なお、モデルガンを買うときに一応調べたのだが。モデルガンを撃つときは必ず失明予防のため、ゴーグルを付けなければいけない。何で俺はモデルガンだけを買っていたんだろう。わからない。


 片手で目をかばいながら、片手構えで射撃射撃。バッテリー切れを起こすまでの間、撃つ、弾を集める、弾を込めるのサイクルを繰り返し続けた。予備バッテリーを2つ買っていたので、それも使った。


 成果は出た。途中から目に見えて、弾が増えて(・・・)いた。最初は気のせいかと思った。

 しかし撃ち終わった弾を込めていくとマガジンから弾が溢れる様になり、マガジンに入りきらなかった弾の数が全弾撃ち終わる度に増えて行く。フルオートで撃ち続ける時間も当然伸びていた。それだけなら気のせいだったで済んでいた。

 溢れる玉を見れば答えは明快だ。込めた弾より撃ち終わった弾の数が多くなっていくなら、こう考えるべきだ。


 マガジン内部の弾を使わずに撃つのが『弾数節約』なんだろう。何がどうなっているか見当もつかないが、撃つはずだった弾と同じ物を撃ち出すスキルなんだろう。原理も不明で物理法則も無視してるが、今更だ。



---ステータス表示

外見:小柄

状態:普通


ポイント:15

筋力:4

耐久:4

体力:8

精神:6

敏捷:6

器用:10


EXスキル:up!『弾数節約Lv4』

スキル:『料理Lv2』『道具作成Lv2』『短剣技Lv2』『跳躍Lv1』『白兵Lv1』new!『短機銃技Lv3』new!『射撃Lv3』

---


 さすがに上がり過ぎだろう。敵も倒さずにこの速度でスキル上昇するのは良い誤算だ。まぁ、合計したら1000発くらい撃っているから、そういうもんだろう。これでMP5が買える。


 MP5は32発。念のために包丁も持って行けば、多少遠出をしても生還可能だ。遠距離武器って素晴らしい。【器用】MAXの俺の本領発揮だ。さぁ、やるぞぉ!


 でも今日はもう夜だから、明日にしよう。



**************************



 翌日、朝7時に目が覚めた。


 世界がこんな風になってもゲームで遊ぶ人はいるだろう。昨日の朝までは俺も同じだったけど、昨晩の俺は違った。

 遠足を楽しみにする子供みたいに早くに寝て、自然と目が覚めた。朝食はしっかりと食べる派なので、炊いたご飯と昨日の残りを食べる。


 肩からビニール紐を通したMP5を提げる。腰にはM1911とマガジンが各1本ずつ、サバゲーに使う予定だった腰ベルトに接続するマガジンケースに入れていく。銃の暴発で死ぬとか嫌なので、マガジンは抜いている。

 MP5と反対側には要らない紙を重ねて鞘をこしらえた包丁を下げている。こちらもビニールひもを鞘に通している。固定とか出来ていないから走る時はかなり不便だけど、いざというときは両手が空くようにしている。


 あと、背負うサックにはおやつのクッキーとチョコ。非常食の乾パンとか常備していないから、これが非常食代わりだ。今はこれで問題ない。敵を倒せるなら食糧問題は解決したのと同じだ。


 職員寮を出て、近くの駐車場に行く。

 駐車場に4体のゾンビが居たので、MP5のマガジンを取り出し、セットする。セーフティを外して駐車場の様子を確認すると、ゾンビが近付いて来ていた。

 だけど問題ない。距離は十分にとってある。4体のゾンビも、銃があれば怖くない。構えて、撃つ。

 セミオートにしているので、一発ずつ、脳天目掛けて撃っていく。

 人生初の実銃射撃で4連続ヘッドショットを決めた。


 MP5の有効射程って現実だと何メートルだったっけ。30メートル以内なら当たるのかな。まぁ、どのゾンビも30メートル以内だったから、ゲーム仕様なのか分からなかったけど。

 【器用】が高過ぎて元々の有効射程なのかゲーム補正付きなのか分からない。まぁ、ゲーム補正が無かったら絶対に当たっていないから補正ついているのは確定なんだけどさ。


 駐車場に置いている軽自動車(マイカー)に近づき、鍵を差し込む。慣れた手つきで車内に入り、車を発進させる。


「あ」


 あることに気づいて、いったん車を止める。周囲確認、良し。安全確認、よし。


「やばかったな」


 俺は助手席に放り込んだMP5を手に取る。銃確認、良くなし。使用した後、銃のセーフティ外したままだった。銃のトリガーを引かないと弾は出ないけど、使わない時はセーフティをするのが基本だ。安全だから。


 もう一度周囲にゾンビが居ないことを確認して、MP5のセーフティをかける。映画とかゲームだとセーフティかけていないように見えるけど、暴発は怖いよな。とりあえず、近くのスーパーまで走ろう。



**************************



 10分ほど車を走らせて馴染みのスーパーに辿り着いた。


 到着するまでに10体ぐらいのゾンビが居た。毎回車から降りてゾンビを倒していたから、少し時間がかかった。全部銃で倒せば、こんなに時間はかからなかった。

 スキル上げも兼ねて、銃で2体になるまで減らしてから包丁で倒していたのだから仕方ない。

 『弾数節約』があるからと言って、気軽に撃ってばかりじゃ弾切れを起こす。特に今から行く場所は、ゾンビがうようよいるはずだ。ゾンパニでもそうだったから。


 ゾンパニではマップの各地にランダムでNPCが配置されている。全部合わせると100人か200人か不明だが、建物内に居るゾンビの半分は元NPCだと言われている。NPCはゾンビに殺されるとゾンビになるのだ。

 ゾンパニで建物内にいるNPCを襲うためにゾンビが集まるのなら、現実でもスーパーに逃げ込む人を襲うゾンビが集まっているはずだ。ゾンパニでは毎日日付が変わるごとにゾンビがPOPするが、建物内にはPOPしない。建物内のゾンビを片付けることは、後々のためになる。


 ゾンパニではマップ内にある全ての建物を自分の拠点に設定することが可能だ。その拠点に設定する第一条件が、ゾンビが建物内に居ないことだ。安全地帯を作るためでも、拠点予定地を確保する上でも、建物内のお掃除は大事なのだ。


 ちなみに。今日、スーパーに来た理由は簡単。食糧確保だ。出来るなら非常食よりも傷みやすい生鮮食品を確保したい。

 まだ2日3日しか経っていないが、そろそろ消費期限が切れてくる頃だろう。どのお店も無料ご奉仕大セール中になっているだろうから、普段は買い控えている牛肉をジャンジャンゲットしよう。

 一応、食糧確保の方法は複数ある。食糧はポイントでも買えるのだ。しかし、タダで手に入るならそれに越したことが無い。

 盗難? 犯罪? 治安機構が復活してから言ってくれ。生憎今は緊急事態でね。逮捕も裁判も後にしてくれ。

「飯作る気力ねぇ」

「SNSはもう悲鳴しかねぇし」

「やるきでねぇ」


「ゾンパニでもやるか」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ