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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
6章

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6-13

 壮観だなぁ。

 俺にとって、日々広がっていく防壁を毎朝眺めるのが、最近の朝の楽しみになっていた。当初の予定でも2㎞弱の長い防壁が、既に5㎞の距離にわたって築かれている。それも、一番低くても高さ2メートルはある。少々高く作られている領主館(|作りかけ)の上階からならやっと森が見えるが、もう街中予定地からは見えない。それが安心感を作ったのか、想定よりも街道をゆく行商人の数が多い。途中の村もないから最初は大きめの商隊だけかと思ったんだけど。

 後で調べると、行商人の大半はリステンとここの往復だって。ま、そうだよね。

 想定よりも大量の人間が行きかうと、自然と街が、それも周辺に、できていく。さすがに、開拓村予定地として切り拓いている場所に勝手に住み着く不届き者はいないが、その中間点に野営地がいくつかできているようだ。将来的には兵士が巡回とかしないとまずいかもな。

 新規の村人候補や街の住人候補も続々とやってきている。今のところ敷地のすべてを領主の所有物としているから、大半は防壁建築や資材運搬の仕事や、炊き出し。その他、生活に必要な仕事を引き受けてこっちにやってきている。当初からジーナ達が教育していた人達は、貧民街にいた頃が思い出せないくらいに目まぐるしく立場が変わり、中心人物や下手したら指導的立場になりつつあるとか。まあ、取りまとめはジーナが領地から引っ張ってきた人員がしているから問題ないし、問題を起こしそうな人間は予め排除してるから。

 防壁にはある程度の人を割り振っているが、あっちはまだまだ完成には時間がかかりそう。一部の人員を街中の建物建築へと回したからね。おかげで、少しは見られる街になりつつある。


「もう起きてたのかい。きちんと寝ないと疲れが取れないよ?」

「君ほどじゃないよジーナ。いつも朝の警戒班に自分を入れてるじゃないか」

「明け方の襲撃が一番怖い。魔術師の私が万全の状態で待っているんだ。これ以上ない防衛策だよ。

 その分、早めに寝ているから大丈夫さ」

「……もっと冒険者を兵士に組み込んで、数を増やすよ。イザって時の戦力として領主一族がいるのは良いけれど、最初から当てにされてるんじゃ困るだろ?何かあったら一気に瓦解するぞ」

「わかってるんだけど、なかなかね。気になるし……守りたいと思うんだよ。君と私が力を合わせて作り上げている大切な街。慈しむべき領民。そう思うと、ね」

「君に言うのは憚られるけど、領民はただ守られるものじゃないだろ?俺よりよっぽど強い人間だってたくさんいる。わかってるんだろ?」

「ディグ、君に諭されるとは……なんでだろう、なぜか嬉しいんだ」


 それは、俺が領主である自覚が出てきたと感じられるからじゃないかな。日々できてくる街を見ていると、建設や運営の打ち合わせを繰り返していると、自然と自分が領主だと思えるようになってきた。まあ、最終決定をしてるからね。責任者だよね。

 護衛であるダグも、妻――正確には、まだ婚約者――であるジーナも、もちろん補佐や各担当も意見や駄目出しなどをくれるが、大きな内容は最終的には自分か、ジーナが決める。それを繰り返すことで、責任感が育ってきた。なんとなく、これが貴族の後継者育成方法だと思えた。職人や商人が働いているところを見せ、体験させながら育てていくのと同じことだ。

 ジーナが最初からそれを目論んでいたのかはわからない。が、徐々に増えていく決断する場面と、複雑化していく内容を考えると、まあ、彼女の思惑通りなんだろうな。最初のうちは、難しすぎることはジーナが判断して、さりげなく報告してくれていたんだろう。それがやっとわかるようになってきた。

 自分でも、成長していることがわかって嬉しいんだから、それを先導してきたジーナにとっても嬉しい……と良いなぁ。


「今年の夏の終わりにでも、収穫祭ができないかな?俺達は今年の冬をこっちで越すんだろ?」

「盛大なものはまだ難しいだろうけど、それはやりたいね。要望も出てる。ほら、これだ。

 秋が深くなる前にやれば、消費した食料なども確保する時間は十分にある。まあ、祭りを見越して、保存食は早めに確保するけどね」

「まだ、柵程度しかない村で冬を越すのは危険だ。食料の確保も心配だ。それに、冬の最中でもやってほしい作業はたくさんある。だから、村人達も、畑が終わったらこっちの街で冬を越してもらう。その方向で行こう。

 食糧庫も住居も十分あるだろ?」

「ほかの予定と一緒に前倒しして作っているよ。このペースだと、旅の商隊や行商人を迎え入れても余るくらいには家が建つね。倉庫も、春祭りができる余裕があるくらいには食料や資材を置いておけるさ」

「春祭りか……楽しみだな。こんなに早く領地でできるようになるとは思いもしなかったよ。かなり大勢が協力してくれていても、時間がかかると思ってたから」

「そうか?君がいるから、想定よりもかなり早く街ができると言っていたと思うんだが」

「そうだね。聞いてはいたし、計画も見てはいたけど、実際にできてくるのを見ると早いなあって。

 村だと、柵一つ作るにも時間かかったし、リステンとか他の街でも大変そうだったから」

「ああ、そちらは、仕事を作っている面もあるから。誰もが魔術を使えるわけでもないし、冒険者のように身体能力が上がっているわけでもない。新人だっている。急ぎではない仕事ならそちらに回さないといけないんだ」

「経済を回すって話だっけ?確かに、新人冒険者の大半はいつもお金に困ってたなぁ」

「そうだ。

 お金が全てではないけれど、それがないだけで犯罪を犯す者も出てくる。まともに働ける場所を作るのも、領主の役目さ」

「それなら、今のリロルは問題ないね。逆に、仕事がありすぎて困るくらいだからね」

「そうでもない。人手が足らないのも問題だし、街の建設が一段落着いたときに、あぶれた人間をどうするかも考えておかないと。領主は、十年、二十年先を考える仕事なのさ」

「……大変だなぁ」

「大丈夫。一人じゃない」

「そうだね」


 さしあたってやることは、ここで冬が越せるだけの最低限以上を作り上げること。冬の魔物を防ぐための、中心的な防壁に建物。兵士や領民、俺達が生活する場所の構築。西部と北部を繋ぐ道。

 道はほぼ整備された。野営に適した場所は広場にしかしていないけれど、少しずつ柵を作ったり、石で囲いや竈を作ったりしている。巡回兵の仕事の一つだ。なので、日々交易が盛んになっている。西部へ魔物が抜けないように砦も作っているけれど、最低限の機能を作ってからは進んでいない。冬場にあちらで過ごす兵士たちの仕事だからだ。今は、石の切り出しや周辺の探索に力を入れてもらっている。

 街としてのリロルは、このペースなら問題なく夏のうちに中央部分が完成するだろう。そこは将来的にはリロルの最中央部分となり、商業区や職人街、住居部分はまだ数年かかる。なにせ、そっちの方が数倍広いのだから。

 ……結局、どれだけ広くなるんだっけ?急に不安になった。どんどん計画が大きくなるから……。

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