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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
6章

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6-12

「砦として、河面に対する防壁は予定通りの長さにしよう。その代わり、今後、横に広げられることを想定した造りにできる?」

「もちろんです。河と反対側にも拡大できるように道の流れも考えています。街は広がるものですから」

「……そう言えば、リステンとかも中に防壁があったような」

「はい。あちらも大きな拡張を2度行っておりますね。今は当初の街の部分が主要な施設になり、周辺に住民が住む形です。

 ですが、こちらは河向こうからの襲撃を常に考える形にしないといけないかと。ですので、ここはこんな形で……」

「ああ、防壁にはここの兵舎から出向く形か。でも、こっちの端とかは遠いんじゃ」

「はい。そのため、こちらの街道門との中間点にも兵舎を。リステン側と西部側ですね。どちらも、広くとっておりますのは……」

「騎士団?騎獣舎だったよね、この付属しているの。じゃあ、この広場は演習場を兼ねるのか」

「その通りです。将来的に拡張した際は、演習場は今のままで、騎士団の詰め所は今の街道門と新しい門の間に作るとよろしいかと」

「そうなったら、大きくなるなぁ。この街を通り抜けるのに日が暮れそうだね」

「大量の穀物が集まる東の領都などは、歩けば一日では聞かないそうです」

「はははっ、ディグ。そこまでは考えなくて良いさ。

 ただ、できるだけ余裕を見ておかないと、そんなに簡単に街は広げられないからね。今ならまだなんとかなる」

「でも、防壁だって既に数メートルの高さでかなりできてるじゃないか。この計画図に沿って。

 広げた分、何をするの?」

「最初は畑にすればいいのさ。端には木を植えても良い。人が居れば、どちらもいらなくなることはない。守る兵が少ないから大変だが……いざとなれば、この領主館に全員集まれるんだ。ここを守れれば十分だろう」

「住民よりも、兵士とかの方が集まりが良いんだっけ?」

「そうさ。技能を持たないと生きていきづらい住民よりも、戦えれば問題ない兵士の方がなるだけなら簡単さ。募集すれば冒険者がこぞってやってくる。短期間守るだけなら問題ない」

「その間に、街を作り上げれば良いってことか。

 ……街を作るのに、これだけの防壁が必要なのか。改めてこう見ると、魔物の脅威を実感するよ」


 俺の言葉が気になったのか、会議室にいた面々がしげしげと図面を見つめた。ほとんど皆が北部出身。魔物の脅威は当たり前。防壁は巨大で当たり前な人達だ。でも、ダグならわかってくれるは……ず?

 なんで、まあこんなもんだよねって顔してんだよ。


「ダグ。君もこれだけの防壁が必要だと思うのかい?」

「そりゃまあ。

 今は魔物に対して優勢ですが、それでも脅威は脅威。東部でもこれくらい分厚くはなくても、防壁で囲まれた街が基本なので」

「えっ?東部でも?」

「東部は元々、武に重きを置いた地域でして。中央以外は古くは別の国ですし。魔物とだけでなく、人と人が争った年月も長いんで。国の穀物庫と呼ばれてはいましたが、それが領地経営の中心となったのは、ここ百年ほどです」


 当たり前のように、桁違いの年月を提示してきた。ダグが貴族家出身だってのは知っていたけど、見てる範囲が違うな。他の面々も同じなんだけど、俺ら庶民とは根本的に感覚が違うわぁ。

 理由を聞いても良いんだろうか?

 その思いが顔に出ていたのか、そのまま解説してくれた。


「この北部奪還遠征計画が始まったのがその辺りなんですよ。正確には、北部制圧計画なんですが。食料を増産し、魔物の支配下である北部に人類の領地を広げる計画です。十年以上の年月をかけて食料や武具の生産。魔術の向上など様々なことに国の力を注力したんです。歴史に残る一大事業として」

「しかし、魔物の反撃によりそれまでの生存地域すら失った。国は、総力を挙げて北部のみに魔物の勢力を押し込めることができた。何十年とそれを押し返すことはできなかったが。

 それを再度奪還したのが50年ほど前のお祖母様達だ。その際には、多くの他地域貴族が協力したと聞いている。色々な形で報いはしたが、失ったものも多かったと聞いている」

「武に重きを置いた貴族家が、北部喪失、奪還時に戦功をあげると同時に、多くの家で力を落としました。武力を高めた者が1人死ぬだけで、通常以上の損失となりますから。大半は、確保した地域を魔物から守る任務についていたようですが、全員が常に戦いを無傷で乗り切ることは、なかなか難しいので。

 人を育てるのに金も時間もかかるんで、簡単な怪我でも、数が多くなると無視できない影響があるんですよ」

「だから、回復魔術の評価が高いのか。もちろん、時間をかけずに治せるなんてすごいと思っていたけど、それだけじゃないんだな」

「だてに、そを使えるだけで生きていけると言われてはいないよ。数ある魔術の中でも、随一の評価がされているのは理由があるのさ。

 幸いなことに、まだ河向こうの魔物はさほど増えていないし、迷宮の数も回復していないみたいだ。冬の被害が雪だけだったからね。最近では実力が確かな冒険者が何組か偵察をしてくれているけれど、近場に迷宮はまだ見つかってない。

 今年が勝負年だね。魔物を気にせずに開拓できる期間は思ったよりも短いんだ。今のうちにできる限りの金と人を使って防壁を仕上げよう!」

「「「「「おう!」」」」……ってやっぱりジーナが率いようよ。それが適材適所でしょ」

「まだ言ってる。さっきも言っただろ?今は金と人を費やすべき時だ。君がいるいないで大きく進度が変わる。だから、君の代わりに私が采配する。

 もし、色々な魔術が使えた方が良い場面なら、君がここに詰めて判断をして、私が動く。二人でリロル家なんだから」

「……」

「あー。仲良きことは美しいんですがね。イチャイチャするのは家でお願いします。

 ほら、皆行きましたよ」


 呆れたようなダグの声に我に返ると、室内にはほぼ誰もいなかった。防壁建設の指揮をとる者、計画図面を引きなおす者、人員手配をする者、リステンの冒険者に依頼を発注する者。中には、西部に構えた拠点を統括するカーラムに使いを出し、あちら経由で物資輸送を兼ねて冒険者の送り込みを手配し始めた者もいる。

 元々想定していたのか、誰もが動きに迷いがない。権限の範囲を超える案は、その許可を出せる人間にすぐさま伝えられて決定されていく。俺とジーナのところに来るのは最終確認だけ。うーん、優秀。

 本当、楽させてもらってるわ。

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