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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
6章

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6-8

「お忙しいご領主様にお時間を取っていただいて申し訳ありません」

「かまわん。移住を希望する村人候補だし、人数も多い。

 職人頭トビーの願いでもある」


 目の前にいるのは5人の男。席に座るのは中央の一人だけだ。見た目は誰もが筋肉で太目。全員が眩しいくらいに禿である。着ている服はかなり厚め。こっちの冬に慣れていないのだろう。俺も一年目はそうだった。この部屋はそこそこ暖かいから、長くいたら汗をかきそうだな。いや、すでに汗をかきそうなほど暑苦しいか。

 この部屋にあるのはお互いが座る革張りのソファーと間のテーブルのみ。身分が低いものと短時間だけ会うための部屋だ。本当なら棚や見せびらかすための物品などが所狭しと陳列されているらしいけれど、そこまでの労力をかける必要性がないので殺風景だ。なぜならリステンは隣の領地。そこに屋敷は必要ない。ここは仮宿であり、荷物も家具類も将来的には領地の屋敷へと運ぶし、ここで外交をする予定もつもりもない。結果として、この屋敷の装飾品は最低限度だ。なお一番華やかなのはジーナの部屋。個人的な宝飾品や美術品、服飾の類のためである。俺の私物はそもそもすくないし、今は余裕があるなら領地開拓に突っ込んでるからその辺りの増加は最低限に抑えられている。

 もし、他の貴族が来たのならばジーナの私物を移すなどして見栄えを確保するけれど、平民、それも自らの領民になるのを希望する人間に、特別に会うのだからそこまでの配慮は不要らしい。彼らも、不満は表していない。……少なくとも表面上は。


「多少の無礼もかまわん」

「重ね重ね……」

「そもそも、私も元々平民だからな。礼儀など付け焼刃だ。ただ、守るべきものは守らねばならん。曲がりなりにも貴族の一員になっているのでな」

「はっ」

「領民希望者にこうして直接相対することが通常ではないと理解してくれ。だから、そちらの事情を汲もうとまでは思わん。トビーのような技術があるならともかく、おぬしらにそれをする意味もない。こちらが乞うて来てもらったわけではないからな。

 だが、無理を押す気もない。

 で、だ。おぬしらの希望としては、村に入りたいのか?それとも砦か?」


 俺の言葉は平民同士であれば無礼極まりない。ただ、平民と貴族と考えれば当たり前のことだ。身分の壁は高い。まあ、慣れないけど、でもこれからはこれをやっていかなくてはならないから予行練習を兼ねて。そう。この場は彼らの面接であり、俺の教育の場でもあるのだ。だから、執事のカールがひっそりと部屋の隅に立っている。貴族としての振る舞いに一番詳しいのが彼だから、無理を言って立ち会ってもらっているのだ。尊大に、しかし、驕らず。その区別が難しい。本当なら、面倒なので丁寧語で話したいんだけど。使い分けなんて面倒じゃないか。

 平民同士として考えればかなりひどいことを言ってるんだけど、彼らの真面目そうな雰囲気は変わらない。うーん。思ったよりもちゃんとしている。


「この度は領民として迎えていただけるとのことで、誠にありがとうございます。お聞き及びかもしれませんが、私どもは、東部領都から離れた街ペルトンのスラムから参りました。私はまとめをしてますヘタンでございます。こちらの職人頭であるトビーは、何年も会っておりませんでしたが私の実の息子となります。

 ペルトンでの勢力争いの影響を受け、スラムも騒がしくなりました。このままではひどい事態となると思い、郎党を引き連れお邪魔したわけです。あちらでの権益は分けてきましたので、こちらまで諍いが影響することはないかと思います」

「ふむ。だから、女子供が半分近くいるわけだ」

「関係しておりました孤児院にペルトンから出ることを伝えた際、孤児院ごとついてくることになりまして……申し訳ございません」

「かまわん。領民にはそれくらいの子が少ないから助かるくらいだ」

「はっ。

 後ろにいますのは、トカ、ボカ、テカ、リック。トカ、ボカが男衆をまとめております。テカが孤児院、リックが家族の取りまとめ役でございます。こちらの生活に慣れてませんのでご迷惑をかけるかと思いますが、何かあれば私か、こいつらにお伝えいただければ」

「「「「お願いしやす!」」」」

「……ふむ。道理くらいは理解してそうだが」

「へえ。ただ、私と同じく馬鹿ですので、力仕事くらいしかお役に立てないかと。ですが、馬鹿やる者がいないようには見張らせますので。

 ガキの中には冒険者になりたい者や兵士になりたい者もおります。おりますが、その辺りはお気になさらず。村でも砦でも、必要なところに振り分けいただければ」

「希望を聞いたのだがな」

「へい。そのお気持ちは嬉しいですが、ついてきたのはスラム、良くて貧民街の者です。街から逃げ出したのに砦どころか村で生活できるなんて望外の幸せです。スラムの人間ですから飯が食えるなら、どんな仕事でも厭わずやります。もちろん、教えていただければ規則は守らせます。はねっかえりや馬鹿も多いですから、時間がかかるかもしれませんが」

「ダグ」

「護衛長のダグだ。ヘタン。そこの4人はお前らの中では強いのか?」

「連れてきた人間の中ではこの4人に勝てるのはおりますまい。スラムでは、弱い者には中々素直に従う者ばかりではありませんので」

「兵士……いや、見習い兵士並みか。御当主様、これならば問題にはなりえません」


 わざとらしく実力を低く見積もっても、表情筋すら動かさない。こっちの兵士について知らなければ、かなり馬鹿にされたと感じてもおかしくないのに、だいぶ腹を括って来てるな。それとも、北部の戦闘力を噂で過大評価しているのか。迷宮をポコポコ潰す騎士団があるからな。でも、強い人は多いけれど、見習いは見習い。普通に弱いよ?

 それでも、迷宮に入れる、つまりゴブリンは問題なく倒せるだけの実力は必要だ。西部と比べるとちょっと要求が高いかな。あまりに弱すぎても壁にすらならないからね。見たところ、護衛代わりの四人は正式に兵士に取りたてても実力的には問題ないくらいには戦えそうだ。先に連れてる人員を見た者からの報告では、北部の住人としてだと大分苦労しそうな戦闘力しかない見たいだけど、やっぱり上の人間はそれなりに戦えるんだな。

 さて、そろそろ本題に入りたい。要望は何だろうか。

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