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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
6章

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6-7

 ジーナにこの家を任されている者や警備、護衛などの主要人物を集めての会議は、簡単に終わった。貧民街から連れてきた人間を村人レベルまで教育してきた集団だ。ここまで大規模な開拓は初めてらしいけれど、村を増やすのは何度も経験しているありがたい人材群。ほんと、ジーナ様様です。

 で、彼らにしてみれば、高々スラムの暴力集団。それも、追い出されるレベルの人間は恐怖の対象でも何でもないらしい。暗殺集団だったら困るけれど、一見して暴力的な人間よりも、それと判断されにくい雰囲気の専門家の方が怖いとのこと。まあ確かに。ここもそうだけど、お偉いさんのいる場所は警備も護衛もいるしね。すぐにわかるような暴力装置は簡単に排除できるか。

 武を貴ぶ北部だからか、貴族の屋敷にいる人間は、丁稚や庭師、下級女中に至るまで最低限度の力量が求められるらしい。知らなかった。もちろん、報復は苛烈。それが知られているから、貴族を害するのはたとえ対立していても滅多にない。……少なくとも北部では。村人教育の中で最初に教わることの一つだとか。

 西部じゃそんなことなかったな。まあ、そもそも貴族様には関わるなってことくらいしか覚えてないや。そんなだから学院から放り出されて冒険者をやって、それが、今じゃ俺がお貴族様だからな。人生どうなるかわからないもんだ。


「すると、結論を出すのは見てからになるが、受け入れに問題はないと言うことか?」

「はい。兵士を希望している冒険者の数を考えれば、あの人数なら何があっても十分対処できるかと。魔物などの対応を考え、村人候補にも最低限の指導はしてありますし。兵士を抜いて村人だけで考えても、戦力的には突然の反抗があっても鎮圧には問題ありません。

 しかし、すぐに開拓地へと送るには物資が足りません。春植えの作物は、葉物ですらまだ取れませぬ。冬も明けたばかりですし、百を超える人間に必要な物資はすぐに集まるものではありません。

 こちらである程度揃えるまでの間、徹底的に教育すれば良いだけです」

「……それって、今奴らに俺が会う意味あるのか?お前らだけで十分だろう。今までの村人候補だって、兵士だってほとんど俺会ってないぞ。

 砦建設はまだ始まったばかりだから、できるなら早く戻りたいんだが」

「村でも主要な人間には顔見世をしていただいたかと。それに、ご領主様がこちらに居ないならまだしも、今はいらっしゃいます。どうせ会うなら、早い方が簡単に終わりますから。

 あちらの面子を立たせておけば、余計な一手間が減りますな」

「話を聞かない奴らを聞く体勢に持って行くのは面倒ですからな。反抗心があれば訓練に組み込むにしても時間がかかる。今年は砦周辺での実践訓練を行いたいので、その前にはしつけ(・・・)は終わらせたいですな」

「わざわざご領主様が時間を割いて対面するのです。それがどれだけ価値あることかは、いくら教養がなくとも百を超える人間を率いていた人間には理解できましょう」

「それでも反抗的な奴がいるなら、俺が徹底的にやるよ。なんだったら騎士団の誰だってかまわない。いくら強くたって街の人間だ。ここにいる幹部候補なら負けることはないだろ。

 まあ、街を出る頭に従ってきた奴らだ。上が従順にしていればいたずらには反抗しないだろ」

「皆様の話をまとめますと、受け入れには人数が多いため、物資の確保まで時間がかかる。街のゴロツキなど、迷宮のゴブリンといい勝負が精々。村人達を教育したようにすれば問題にはならないかと。

 しかし、余計な手間を増やす必要はないですから、面通しを兼ねて一度顔合わせを。そこでダグラス殿が護衛として見定めていただく、と。いかがですか?」


 色んな話が出たけど、ほとんどの人が楽観的。いくら強くたって東部のゴロツキレベルなら問題ないって判断だ。そりゃそうだ。俺だってゴブリンどころか、コボルトやオークとだってソロで戦える。オーク以外なら複数体いたって無傷だ。騎士団の幹部級どころか下手すりゃ下っ端だってできる奴がいる。北部の迷宮で魔物との戦いを繰り返す冒険者や騎士の力量は、他地域の追随を許さないのだ。

 年を跨いで鍛え上げられた村人の中にだって、強者はいる。村がある程度自衛できないと、魔物の群れや盗賊に狙われたときに困るし、そもそも反抗しないように騎士や兵士の訓練に参加させていたから、誰でもある程度戦えるのだ。その中で見込みがある者は大半は兵士を希望したんだが、中には村住まいで開拓を希望した者もいる。すでに家族持ちや、日常的な命のやり取りに忌避感がある人間だ。兵士として見ればちょっと難があるが、武に才があり体格に恵まれた村防衛の要である。

 それを凌駕するのが砦を守る兵士であり、直属の騎士であり、護衛であるわけで。その観点からすると街のゴロツキ、それも東部地域のゴロツキなんて相手にならないと。まあ、他所の地域から来た冒険者ですら、一ランクは下に評価するんだから当たり前か。それだけの自負と実績がある。敵対しようが問題ないとの判断も正しいだろう。

 返答前に、別の方向から質問が出る。


「治安の悪化は問題になりませんか?スラムのゴロツキがまともに働くとも思えませんし」

「気にするほどの問題ではありません。反抗されることも想定内です。排除することで、ちょうどよい見せしめになりますので」

「村人候補も長い者で一年以上、部下が鍛えています。時には私も見に行きますが、下級兵士とまではいきませんが、まあゴブリンの小規模な群れであれば問題なく村を守れるようにはなってますよ」

「下手なゴロツキよりも村人の方が強いか」

「他所は知りませんが、この辺りではそうですな。ある程度は戦えないと、いざってときに村を守れませんので。低ランクの冒険者よりも強い村人などゴロゴロしてますよ」

「そもそも、犯罪行為には兵士の目が光っておりますし、小さな村ですから村内なら隠すのは難しいですな。砦で犯罪をなどとの不心得者はおりません」

「ほとんどが兵士だからな。これから徐々に住む人間も増えてくる。そうすれば、どうしても諍いは生じるだろうが……」

「そのために兵士と騎士がおり、組織されておりますからな」

「人との争いよりも、魔物の方が怖いだろ。だから、あまり心配する必要はないんじゃないかな?」

「結論は出たな。

 彼らを、普通の村人として受け入れる。もちろん、希望があれば兵士や職人の見習いもだ。文官につけるには信用に欠けるが、そこはその人物を見て考えることにしよう。人手はいくらあっても足らんからな。

 ……それと、明日。昼過ぎに彼らに会おう。出発は明後日に変更だ」

「「「「はっ」」」」

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