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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
6章

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6-6

「つまり……要点はなんだ?」


 さっきから、トビーの話は貧民街の現状だけだ。知らなかったこともあったが、まあ、一時的に人が減った以外の何物でもない。村人候補を引き抜いているんだから当たり前だ。なので、何が言いたいのかわからない。

 小首をかしげていると、一度つばを飲み込んだトビーが恐る恐る話の続きを始めた。でもやはり本題とは思えない。

 それも、ここリステンではなく、なぜか東部の話だった。


「自分も行ったことはありませんが、麦の栽培が盛んな東部は大きな街がたくさんあります。ここリステンなんて目じゃないほどの街がいくつもあるって話です。そうなると、貧民街やスラムも、それに合わせて大きいとのことです」

「そうだな。私は西部出身だ。東部に比べると大地の恵みに乏しいと言われるが、ここに比べれば桁違いに豊かだ。何より温かく、冬を越すのは何倍も楽だ。だから貧民街やスラムは、こちらよりも大きいんだろうな。実際のところはわからんが」

「ええ。東部では、貧民街ですら凍死しないと言いますんで。食料も得られやすいので、今も人が増えているとか。

 なので、それなりに貧民街もスラムも勢力争いが活発なんです」

「……そうか?いや、そうか。人が居れば争いもあるか。食料や燃料の争いどころか、魔物との争いがが絶えないこちらから見たら羨ましい限りだ」

「はい。

 父がいた街でもスラムで争いがあり、父の派閥が力を弱めたらしく、総出でこちらに来まして……」

「……はい?」

「ですので、派閥総出でこちらに。もちろん、これを機に袂を別れた者もいたようですが、利権の一切合切を付けて置いてきたとのことで。ありったけの資産と食料は持ってきたようですが」


 聞き間違いではなかったらしい。街が大きな東部において、一派閥の人間がごっそりとこっちへやってきたと。それも暴力が染みついたスラムの人間が。家族などの関係者も併せてだろうから、いったいどれだけの数なんだか。

 聞いてみると、そこまで多くはなかった。いや。新規開拓の村として考えるならかなりの人数だけど、街にまでなっている場所からだからとすると、少なめだ。派閥の人間だけで200を少し割り、家族などで150ちょっと。合わせると丁度350人。大半が独り者みたいなんだけど、バックについていた孤児院の人間が丸々一緒なので関係者が増えたみたい。

 先々のことを考えると子供は重要だ。今の村人候補や砦の人間は働ける層が多く、子供の数は少なめなのだ。領土の発展を考えると、これから先を担う子供が増えるのは大歓迎。でも、スラムかぁ。


「それで、そいつらの面倒を見れば良いのか?村人として?それとも砦での人員か?」

「……そこまではお願いできません。私らを貧民街から救い出してくださった領主様にそんな迷惑をかけてたら、仲間に顔向けできませんので。ですが、この先、父達はどう考えてもご迷惑しかかねないかと。

 なので、職人頭にしていただいた恩も返せておりませんが、私を解任していただければと思いまして、お願いに上がった次第です」

「……ふむ」


 トビーの懸念はわかる。せっかく貧民街から仲間と一緒にちゃんとした村人や未来の街の主要人物的地位にと将来が開けたわけだ。そこに、自分の過去が――自分のせいではないが――やってきてそれを邪魔しようとしている。もし、これが原因で俺に迷惑が掛かったら開拓がどうなるか。その原因となったトビーだけでなく、その周りまで被害を受ける可能性は高い。真面目な質のトビーは、仲間のせっかくの機会を自分のせいでふいにするわけにはいかないと考えたのだろう。

 でもさぁ。俺の立場からすると、せっかく育成した職人頭がいなくなるんだよ。確か、結婚してて、妻も要職についていたはず。もちろん、領地の幹部でもないから替えはきく。でも、村や砦の運営に与える影響は少なくない。それに、かけた費用と、これから必要となる時間を考えるとなぁ。

 ん?そうだ、確認しないと。


「スラム出身が多いが、全員なのか?」

「いえ。孤児院は貧民街の外れに。家族も大半は貧民街だと聞いてます。それでも、大半はスラムの住人です」

「スラムのやつらは男ばかりか?仕事は何をしていた?」

「あちらでは女のメンバーもいたようですが、こちらに来たのは男ばかりです。血の気が多い連中ですが、上には逆らいません。生業は用心棒。守る代わりに金を貰っていたようです。薬物や無駄な殺しはしない方針で、盗品の売買にも手を付けていたとのこと。ただ、自ら盗みはしなかったようで。

 ……話を聞く限りでは、ですが」

「用心棒か……そいつらは強いのか?」

「へっ?……まあ、ガタイは良いですし、喧嘩には慣れてますんで、強い弱いで言ったら強いでしょうね。私なんかじゃ勝てませんよ」

「冒険者としてだ」

「……荒事に慣れてますから下手な新人よりは強いですし、対人では新人って感じじゃないと思います。魔物相手はわかりません」

「こちらの兵士は見習いはまだしも、上に立つには最低限Cランク以上の実力を持つ人間となる。それに勝てるような人間がいるのか?」

「……正面からでは戦いにならないでしょうね。しかし、搦め手を使えば……」

「ははっ。実力者を正面から倒せないときに使うのが搦め手だ。そうすれば勝てる可能性があるのは承知している。どこの兵士だって同じだ。単体で負けなければ問題ない。こちらのDランクに正面切って勝てるほどの者がいて、道理をわきまえていないようだと困るからな。

 治安維持にまともな対応が可能かどうかが重要なのだ」


 ジーナから教わった治安維持の方法には、こちら側が絶対的な武力を持つことが重要だった。力を持った人間には逆らわないよねってこと。馬鹿でもない限り、権力と武力を持つ兵士に喧嘩を売るような奴はいない。力ある者ががきちんと見ているならば、地域の安全は守られるのだ。

 まあ、魔物の襲来を防げることが最低限求められる武力なので、それを可能にするならば絶対的な武力になるだろう。もちろん、騎士団や兵士とは集団としての力であり、単体では高ランク冒険者に勝てないこともしばしばある。しかし、数は力であり、人数が多くなれば、必然的に猛者の数も増え、実力も高くなる。

 今回活動場所を移したり仕えてくれたりすることになった冒険者の中には、ソロでもBランク相当と目されている人もいる。ジーナやダグを抜いても、リロルの戦力はかなりなものになるのだ。

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