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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
6章

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6-2

 リロル砦への帰り道は、境界砦、いや、石切り場からの石材を積んでいたので、行きよりもすこしだけ時間がかかった。まあ、御者席にディグとジーナが乗り、護衛のダグは走ると言う、領主って何よって状況だったけど。

 車体が重くなっても街道にへこみはなく、それなりに急いだ往復で、その素晴らしさが実感できた。ちょっとだけ自画自賛。おかげで、予定通りの移動時間だったし。やっぱり、道は重要だね。

 んで、リロル周辺の畑予定地で再度土を起こす。見回りを兼ねてになるけれど、気の早い春草なんかは芽が出始めていたから丁度良かった。本当なら、もう一周間ほど後になるんだけど、俺がリステンに行く予定があるからね。それに、畑作業する人間がまだほとんどいないから仕方ない。

 一部の雑草、いや、薬草もどきについては、クラン『雪兎』を代表とする生産職の方々のおかげで、簡易的な回復薬や虫下しの薬などの簡易薬に姿を変えている。もちろん、残っていた牙や毛皮、数は少ないがここ数日で獲れた魔物などの素材も手が入れられている。いくつかは売り物になりそうなくらいに。

 その一部をリステンに持って行く案もあったけれど、それよりも移動時間を短くしかったので、リステンへの移動馬車の荷物は飼葉のみ。水は井戸を活用する予定だ。おかげで一週間はかかる行程を数日削ることができた。今は、リロルに注力したいから、これが正解。


「どっから情報得たのかな?わざわざ俺に依頼するなんて。『穴掘り』しかでいないって言ってあったのに」

「……できる領主だって話だから、お前の魔術でできることを考えただけじゃないか?凍った川の氷を空中に飛ばしたところなんか、ばっちり報告されているだろ。魔術が穴掘りしかできないのに色々とできることだって、貴族になったときの情報で知ってたのかも」

「そこから畑を耕すことを連想できるのか?新しいちょっとしたことができるようになるまで、俺がどんだけ頭をひねって、訓練してるか……貴族の頭の中はどんなつくりなんだか」

「少しの事実から多くのことを推測し、対策を取るのが良い領主だ。特に、利益になること、不利益になることについては鼻が利く人間が多い。それが貴族だ」

「……はぁ。その顔だと、俺もそうなれってこと?

 無理だよそんなの」

「すぐにではなく、順々にな。御当主様の決断次第で、領地の繁栄が決まるんだ」

「笑いながら言うなよ……わかってるって」


 俺の愚痴に対してダグがからかい半分に言ってくる。ジーナから教わっているのでわかってはいるが、貴族って本当に面倒。でも、よくよく考えれば、自らの利益を確保したいなんてのは、貴族だろうが農民だろうが、冒険者だろうが同じこと。どこだってそんなに違いはないのかもしれない。ただ、利益になること、不利益になることを理解するには、ある程度の知識がないといけない。物事の影響を考えられるだけの基礎能力が不可欠だ。つまりは、領地や産業、天気に農業治水など、沢山のことを知らなくてはいけない。それも、単体ではなく、体系立てて、かつ、つながりも一緒にだ。領地を盛り立てていくには、必要不可欠なことだ。

 自らの選択で領地の将来が決まる。そのことを改めて胸に刻み、死ぬまで勉強に果てがないことに気づいて愕然とした。誰だよ、貴族なんて遊んでいるだけだって言ったの。冒険者からしてみたら権力を持って贅沢しているだけだったんだけど、実際は違うんだな。

 そんな話をしながらでも、馬は軽快に馬車を運ぶ。荷物らしい荷物は自らの食餌と御者だけだから、いつもと比べたら軽いもんだろう。いつもは、石材を運んでくれているからね。

 まあ、おかげで順調すぎるほどに順調だ。途中に出てもおかしくない魔物や獣もいないし、行きに井戸と休憩場所を整備したし、道も雪をどけて固めなおしたし。街道は広く、対向から向かってくる馬車どころか人もいない。なので、堂々と道の真ん中を速度を出して走れるのも大きい。結構速度が出ているのに、顔色一つ変えず呼吸も乱さず並走するダグは変態である。装備だって、西部の商都ロンドリアにいたころに比べれば重くなっているはずなのに。


「よくまあ馬についてこれるな」

「話題を変えたな……まあ、御当主様が仕事と勉強に忙しくしている間、ほとんど訓練してるからな。体力も技術も、あのころとは大違いだ。

 いやぁ、御当主様についてきて大正解だ。強くなる方法には事欠かない。奥様の護衛は技術が高いし、高位の冒険者も強者揃い。とても勉強になってるよ」

「……ああ、そうだよな。俺も時々訓練を受けているけど、手加減されてても一本どころかかすりもしないからすごい強いことはわかるけど、ダグでもか」

「手も足も出ない」

「楽しそうだね」

「そりゃそうさ!強くなるためだけに家を出てきたんだ。尚武の地である北部での修行は最終的な目的だったのに、いつの間にか修行をすることも仕事になったし、色んな流派に教わることができてる。普通なら、簡単に外部の人間に教えたりしないんだぞ。

 ロンドリアでディグに会えたことを本当に感謝してるよ」

「こっちも訓練とか護衛とかで本当に助かってるよ。これからもよろしく、護衛団長」

「おう!任せろ!」


 人間離れしているとしか思えない体力を誇るダグ。でも、この地にいる強者達はもっとすごいとのこと。なにせ、ここには迷宮が多数ある。いざというとき、いつ終わるかわからない魔物の襲撃に対して、戦い続けられなければ死が待つのみ。なので、ここでは戦う術を学ぶことが奨励されているし、戦い続けられる体力が重要視されているのだ。人によっては、他の地域よりも冒険者ランクが一つ違うとまで言うほどに、こちらでは戦闘能力が重視されている。

 元々がむしゃらに訓練していたので運動量が多かったダグだけど、やり方はほぼ自己流。剣の腕は高かったが、体力は同年代に比べればあるけれど、決してランク以上に飛びぬけているとは思えなかった。有力な新人冒険者止まりだった。こちらに来て、かなりの年月と労力を積み重ねた訓練方法を学び、数段は強くなっている。

 おかげで、リステンに舞い戻るまで予定よりも数日短縮できた。休憩だって、ダグの体力や疲労を考えると言うよりも、俺の尻が痛くなったことの方が理由として多かったほどだからな。

 急遽戻った館で追加の資材や食料の手配、その他報告などをしている間に、領主のところへと使者を出す。依頼内容は簡単にしか聞いてないからね。

 それにしても、冬場に固まった畑を掘り返す依頼って……今までできてたんだからそっちで良いじゃん。金が儲かるからこっちは嬉しいけどさ。

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