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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
6章

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6-1

だいぶ時間が空いてしまいました。

淡々と、ゆっくりと続けていければと思います。

 奇麗に掘り起こされた畑をボーっと眺めていると、本当にほっとする。冒険者や貴族になったとしても、俺の根っこは農民なんだと感じる。土の臭いは故郷とは異なるけれど、なぜか落ち着くのだ。農民の子倅から魔術使いもどき、冒険者、下級貴族となり、思い描いていた未来とは違うけれど、大出世した。俺は、偉大な魔術師や英雄的な冒険者にはなれなかったけれど、ある意味立志伝中の人間である。若くして平民、それも農民から貴族だからね。ま、頭ではわかってはいるけれど、そこまでの自覚はない。近くにもっとすごい奴がいるってのが強いと思う。

 北部でも南西にあるここリロル地方は、これから一足早い春を迎える。冬に過ごしたリステンもまだ雪の中。リロルの森も大地も今はまだ緑が少ないが、これから温かくなるにつれてどんどんと色鮮やかになっていくのが今から楽しみだ。今年は、砦の防壁だけでなく、いくつかの家屋や、西部辺境との境を守る砦の建設を進めたい。いちいちリステンに戻るのはやっぱり効率が悪いんだ。


「思ったよりも雪の量が少なかったな。これなら、今年の冬はこっちで過ごせそうだね」

「西部との交易も始められそうね。せっかく送った人員を無駄にしなくて済みそうね」

「先日来た報告だと、あっちの倉庫はもうほとんどできてるってことだから、今頃はほぼ完成だろうな。日持ちする穀物とかが最初にできた倉庫に積まれてるってさ。あちらが落ち着き次第、順次送ってくれるって」

「田舎町に倉庫街が突然できて村にも迷惑をかけたかもね」

「みんなは気にしないさ。どうせ使ってなかった村外れだ。

 それに、この先のことを考えれば喜びはすれども怒ることはないよ。今までの村の場所は変わらずに畑を作るだろうし、新しい柵の中だって畑の予定だ。売り先が増えて、しかも高く買ってくれるんだから嬉しいだろうさ」

「それだと良いね。こっちの都合で無理やり発展させる面もあるし、ね。

 他所からも買い集めるから、色んなおこぼれもあると思うし、収入も増えるから、その辺りで納得してもらえると良いんだけど」

「ジーナは心配性だな」


 あの村には俺の家族もいるし、村長をはじめ、みんないい人ばかりだ。開発についても承知している。それに、こっちの人間もすでに多く移住している。中には爵位持ちだっているんだ。トラブルにはなりにくいだろう。

 ジーナが色々と心配しているのは、俺に急な依頼が入ったから。俺じゃなくてはいけないので、こちらにはジーナが残る。つまり、色んな事の決定権が彼女にあるってこと。俺にとっては、今までと大して変わらない状況なんだけど、なぜか、ジーナは少しテンパっている。領地経営の経験者でしょ?


「違うのよ。今までは補助の者が居たし、判断が困難な内容などほとんどなかったわ。周りにはお母様などもいらっしゃったし、実務をする領地の代官や文官、武官は優秀だったもの。

 でも、今は違うわ。なってみて初めてわかったの。良くも悪くも自分たち次第。私の決定が領地の未来を決めるとなると、かなりの重圧を感じるわ」

「……そりゃ、辺境伯家の直系が治める土地だもんな、手厚いのは当たり前か。

 大丈夫大丈夫。優秀な部下がいるのはこっちも同じ。みんな、ちゃんと学んできたんでしょ?それに、今やることは防壁作って、家造るだけ。場所だってすでに区割りしてあるじゃんか。それに、作る家は一時的なもので内壁ができたら取り壊しだよ?少しくらい何かあったって問題にならないよ」

「将来の訓練場に作るんだものね。訓練場をその用途で使う頃には住宅街は別にできてる予定だし、何かあっても訓練場なら問題ない。そう決めたけれど、やはり、それで良かったのかと思うことがあるのよ。今更とは、私自身でも思うけれど」

「そこまで俺も長くは空けないよ。リステンに行って、帰ってだから……半月ほど?移動は空馬車でダグと行くつもりだし。荷物軽くしたいから積むのは飼葉だけ」

「そう言えば、来るときに休憩した場所で井戸を作ったわよね。あれが早速役に立つわね」

「……強行軍で馬が大変なことになっていたからやったけど、結果的には良かったよ。訓練になったし」

「道の雪もどけてもらったし、ほんと、開拓向きの能力よね」

「色々できる君には負けるけどね」

「おーい、イチャイチャしているところ悪いが、そろそろ良いか?

 サッと行って、サッと帰ろうぜ」

「迎えありがとう、ダグ。

 じゃあ、ジーナ行ってくる」

「気を付けていってらっしゃい」


 ジーナに別れの挨拶をして、ダグと共にリステンへとんぼ返り。そこで依頼を片付ければ一休みできそうだ。ここ半月は本当に忙しかった。

 まず、本格的な雪解け前にリロルの状況を調べる部隊を送り出したのがそもそもの発端。こちらでは、雪が融けきる前に畑の土を起こし、温かくなって種を植える前に再度掘り起こすのだそう。今年は少しは作物も作る試験がしたい。なので、状況を調べたかったんだ。

 忙しい原因は天候に関する事前情報との変化だった。リステンよりも雪深いと聞いていたリロルだけど、先行部隊が進むにつれ、リステンよりも雪が少ないことが発覚。予定ではその二週間後、今くらいに向こうを出発するつもりだったんだが、リロルの雪解けが早いならばと、急遽、二日後の旅立ちとなった。いくつもの手配や人員を残しての出立だったので心配もしたが、それよりも移動の時は道から雪をどけるし、休憩場所では井戸を掘るし、畑予定地では土を起こす。思い立って、道端で薬草が生えていた場所では単純に土を起こすのではなく、薬草は残してそれ以外を土に漉き込んでみた。人工的に薬草の群生地ができないかとの試みだ。

 そして、畑から出た石や作業中に出た小石を集めてジーナに岩にしてもらい、石材の追加生産。こいつは、リロルの降雪状況や融雪状況、防壁や燻製小屋、倉庫の破損状況の確認をしつつつの作業だ。来る途中は野営だったけれど、面倒だったので無事だった燻製小屋にて寝泊まり。皆が過ごすための小屋も順次建設中だ。

 一段落したら、住居建設部隊を除いて西部との境の砦へ。石材の切り出しとこちらでも防壁の建設。ただ、重要性はちょっと劣るため、広めの堀と簡単な防壁を造ったら、切り出し部隊、その護衛を残して半分くらいはリロルへと戻す予定。当面は、はぐれの魔物が西部辺境へと行かないようにだけできれば良い。切り出ししつつ、少しずつ防壁を作ってもらうのだ。この付近の迷宮が崩壊したとしても、簡易砦の先、荒野の西部よりは、整備された道の先、リロルへとなだれ込んでくるだろうとの予測。なので、急場を凌げればよいとの考えだ。

 境界砦も大体の流れが確定したら砦へとんぼ返り。そしたら、石材を追加して、予定や進み具合を確認して、畑を掘り返して、今ここ、である。

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