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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
5章

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5-3

 通常であれば。基本。

 さっきから、ジーナが繰り返している説明は、俺達にとっては前提条件が違う。


「ダグと、協力してくれた冒険者のおかげで防衛に関してはかなり有利な状況だよね。川のこっち側では魔物が少ないし」

「あら。

 私も頑張ったのよ?」

「もちろん、ジーナの魔術は前提条件だよ」

「貴方の作った堀もね。あれがあるから、じっくりと防壁が作れるし、沢山煉瓦を作ったから両側共に縦置きで厚めの防壁を作る予定よ」

「あ、その件だけど」

「防壁?」

「違う、煉瓦。

 ほら、この間から小石とかを煉瓦と同じ大きさの石材にできないかって試していただろ?それが、まあ、無理だったんだけど……」

「知ってる。でも、何かしら考えがあるんでしょ?」

「うん。纏めることはできないんだけど……発想を転換して、切り出すことにしたんだ。大き目の石から」

「つまり、石工師がいなくても石材が作れるってこと?」

「まあ、簡単なやつなら、ね。細かい細工は俺には無理だけど、煉瓦とか石畳なら問題なく」

「……問題ない割には浮かない表情ね。かなり良い情報なのに」


 まあ、塊の石、いや岩には城壁の一部に取り込むなどの使い道がある。無理に煉瓦サイズに分ける必要性は高くない。まあ、運搬性が上がるし使い勝手は良くなるから良いんだけど。

 問題は、使い物にならない小石がたくさん出るってことだ。そのまま使うなら壁の出っ張りになるんだけど、切るとなると端っこがどうしても余る。今ですら何か使い道がないかって減らす方法を考えているのに、逆に増やしちゃうんだから。問題解決にはなってない。

 そう思ったんだけど、ジーナが笑っていた。


「なら、今練習していることが活用できそうね。さっきは伝えなかったんだけど、今私は『岩生成』を練習しているのよ」

「魔力で岩を作ったり、石を集めて岩にしたりする魔術だよな。あ、それで小石をまとめるのか」

「その通り。練習内容は、思った通りの形にすることなのよね。ほら、壁と壁の間に小石をまとめて入れて、岩にするわけ。まだできないけれど、下半分を杭として地面に埋め込めれば、単純に砂だけにするよりも頑丈になると思わない?」

「できるようになれば有用だね。あ、補修もできるんじゃない?」

「実際に、魔術使いに補修の依頼はよくあるわよ。冒険者ギルドに掲示されているわ。

 それに、『焚火』も練習しているの。まだ5分が精々だけど、長く使えるようになって悪いことはないもの。薪がなくても燃え続けるから、燃料の消費が抑えられるわ」

「……熱心だね。俺も負けてられないな」

「何言ってるのよ。貴方が色々と工夫して、努力しているから、私もそうしようと思ったのよ。ほら、ちょうどどちらの魔術も消費魔力は少ないし」

「……そっか」


 隣の芝生は青く見える。

 俺にとってはジーナが眩しく見えるんだけど、彼女には俺が努力して成果をあげているように見えるんだな。相乗効果で今回は良かったけれど、この先はどうなるかわからないから、こまめに話し合うようにしよう。

 改めてそう決めた。まずは、さっきの話で気になったことを。


「話は変わるけど、兵士を含めて砦に詰めるのが300人くらいだと、砦の建設と防衛で手一杯かな?本当に十年でできるの?」

「うーん。うちは防壁をかなり広く作るから他の地域はあまり参考にならないけれど、基本は大丈夫よ。防壁は長いけれど、中はスカスカ。いざとなったら魔物を誘い込んでせん滅する必要があるから」

「あ、だから砦の真ん中を抜ける道の脇に、騎士団の修練場があるんだね。それと、ここの畑も?」

「そうよ。こっちの市場も同じ理由。

 騎士団や兵士の宿舎や倉庫、領主館が防壁につながっているのも、街並みがきっちりとしているのも、全て迎撃しやすいように。冒険者ギルドや商業ギルド、他にも治療院とかは入り口だけではなくて、防壁にも直接出られるようになっているわ。もちろん、封鎖も簡単」

「雪を入れる水路も堀の代わりになるんだね。そんな目線で見てなかったなぁ」

「いくつもの視点から最も有効な手を打つ。それが領主には求められるの。少しずつ慣れていきましょ」

「領主の仕事って多いな。色んな承認も求められるし、何より、こんなに人に会うなんて……面接なんて、されることはともかく、する方になるとは思わなかった。と言うか、そもそもジーナが選んだ人間だろ?面接なんてしなくても良いじゃんか」

「この先は、貴方が領主をするのよ?その貴方が面談しなくて誰がするのよ。計画だってそう。私が素案を作ったとしても、貴方が納得しなければダメなの」

「……でも、俺だぞ?」

「……まったく。相変わらず自分の評価が低いんだから……」

「何度もジーナに言われるから改善しようとはしてるんだけどな……なかなかなぁ」

「……すでに、貴族の一端ではあるのよ?お祖母様も期待しているのは報酬からしてもわかるでしょ?私にではなくて、貴方に支払われたんだし。

 結婚だって、私が、貴方と接したうえで決めたのよ。それくらいは理解しているわよね?」

「わかってる。わかってるんだけどな、ほら、俺は元々辺境の農家の息子だろ?」

「知ってるわ」

「それが、村の期待を一身に背負って、有頂天になって学院に行って、育った自尊心ごとボロボロに叩きのめされて」

「それでも腐らずに頑張ったじゃない」

「……努力したって言い訳が欲しかったんだよ。俺は頑張ったって……」

「それでも」

「ああ、わかってる。それがあっての今だからな。そこまで卑屈にはならないよ。でも、そんなことがあったんだ。まだまだ俺の、俺に対する評価は低いんだよ。戦闘力も低いし」

「……ダグと比べちゃ駄目よ。あれは、戦いの申し子よ。食事もとらずに訓練しすぎて弱体化してもまだ止めないくらいに狂ってるわ」

「あれは本人も反省しているぞ。ガキの過ちとして勘弁してやってくれ。

 でも、休憩って点ではジーナだって、働きづめだろ?少しは休まないと」

「ディグもそうでしょ……って、そうしているのは私だけどね。ごめんね、もう少ししたら余裕ができるから」

「ん?ああ、雪が深くなれば人の往来も途絶えるから、面談とか減るよな。相談もほとんどしたし」

「あら。相談はまだまだ基本的な方針だけよ?具体的な話とか、さらに先の話はこれからが本番。

 でも、雪がひどいと人は来ないし、迷宮にだって行けないでしょ?今みたいに半日行くのは、往復を考えるとちょっと効率が悪いし、何日も籠るのは仕事の面で困るからなし。だから、それなりに余裕ができるのよ」

「……去年は、それでも迷宮に行っていたけど……?」

「去年頑張ったおかげで魔力も増えたし、今年はそこまで根詰めてやらなくても大丈夫よ。空いた時間は訓練もするけれど、それ以外のこともしましょうね」


 目が泳いでいるのは何故ですか?

 まあ、目に見えて強くなったおかげで今年は作業全般が楽だったんで良いけどさ。

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