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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
5章

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5-2

「騎士が20、上級兵士が10、中級が30、下級が100。まだまだ足りないわね」

「依頼を受ける冒険者は別だけど、準兵士として組み込んだのが35。賦役の村人が50。それが精いっぱいだね。現状だと増やしようがない。場所も、人も足りない」

「冒険者の残り10が文官系で、他は冒険者ギルドか村人よね?」

「今度の依頼にどれだけ新しく応募してくれるかが問題かな。反応は悪くないって聞いてるけど。

 村人だって、冒険者で増えた分を考えたって200はいかないでしょ?」

「最初は家を数件建てて、数人に畑と村の整備を任せる感じね。畑もどれくらい作物が育つかわからないし。他はみんな砦建設のお手伝いね。食事の準備から洗濯に至るまでやることはたくさんよ。小さな子にだってやってほしい仕事は多いもの」

「その分の賃金や食事代を考えると頭が痛いな」


 開拓、それも一つの村程度ではなく、地域の開拓にかかる金額は膨大だ。紙面上には想像もできないほどの数値が所狭しと書き込まれている。兵士も階級や役職によって支払う金額は変わるが、最低でも月金貨1枚。金貨は2枚もあれば一人なら一年生活できるくらいの価値があるから、かなりの高給取りだ。

 それもそのはず。北は魔物との戦いが多いため、兵士は戦いの日々をおくる。そのため、求められる能力も高く、死傷率も、給金も高くなるのだ。まあ、金額分は働くから問題ないんだけど、運営資金としては厳しいものがある。なので、どこでも開拓当初は兵数が少ない。例え、新規領主ではなく、領地持ちが広げるために行う開拓でも、費用対効果の面から中々に兵士は増やせない。


「だから、開拓当初は税の減免があるんだし、軌道に乗ったときには報奨金もでる。持ち出しと併せて十二分に資金がなければそもそも許可が下りないよ。

 無駄遣いはできないけど、余裕はあるよ」

「そうか。なら良いや。

 教育関係の費用をどうやってねん出しようかと思っていたんだ。ほら、教師とか給金高いだろ?」

「それは言っただろう?兵士や侍女、今なら冒険者などに、業務の一環として教える時間を確保してる。だから、余分なお金はかからない。場所も、ある物を使ってるし。

 兵士希望の冒険者なんかは依頼じゃなくて雇用したから、それくらいはできるだけの人数がいるよ。手が空いている人は警護と迷宮探索だね」

「人材の有効活用だね。普通の開拓だと兵士数とか半分以下なんでしょ?」

「大抵は、他の領地がある領主が開拓するし、十年でなんとか形になるのが普通だから。最初は小規模でやらないとお金も人も足りないわね。特に、作業するのに安全な場所の確保に手間取るの。壁を作る間に魔物に襲われたら意味がないでしょ?

 それがここは堀で安全確保できてるし、そもそも去年とかに粗方間引きしたからね」

「7年くらいで村も砦も形になる予定だよね」

「いえ。堀のおかげで思ったよりも建設に向けられる人手が多くて。5年もあれば、十年以上の開拓と同じくらいにはなるわ。現状でもね。

 砦、いえ、防壁を早期に完成させることができればもっと早いかもね」

「堀ならまだしも、壁作りは俺は手伝えないからなぁ……石材とか煉瓦の作成くらいか?」

「それだけでも、経費も期間もだいぶ短くできるわね。まあ、私も考えていることがあるから」

「え?何々?魔術でドドーンと作れるの?」

「建物を建てる魔術は知らないわね。でも、活用できる魔術はあるから……ちょっと訓練中なの。できるようになったら教えるわ」

「楽しみにしておくよ。

 そうそう、楽しみと言えば、体動かしたいんだけど」

「……ごめんなさいね。これから雪が多く降るようになるから、さすがに迷宮に行けないわ。往復を考えると一週間は籠りたいけれど、それだけまとまった時間は取れないし」

「……だよなぁ。こまごまとした色んなことを決めないといけないもんな。

 給料とか税金とか、賦役とか……だけかと思ったら、報告の書式とか連絡方法とか部署とか法律とか……はぁ」

「できてから慌てて作り上げるよりも、最初からある程度決めてあった方が問題が少なくなるのよ。変更すれば良いだけだから。

 それに、ほとんどは他の領地のやり方をそのまま持ってきているから楽なのよ?本当に一から開拓するとなればもっと大変なんだから」

「それと比べられても……」


 そんな選択肢は、俺の人生になかった。いや、冒険者として有名になり、国を挙げての英雄となれば可能性はあった。それなりの強さと金があれば、西部や東部なら問題なく開拓できただろう。まあ、小さな村だろうけど。

 ひょんなことから――自分の中途半端な土魔術が評価されてってのは嬉しいけれど――寒い地で開拓の日々。それも、字面からは想像できないほどに穏やかに進んでいる。やるべきことは多いが、それは想定よりも開拓速度が大幅に早いから。問題なのはそれくらい。

 数年かけて準備をしていたジーナのおかげだ。冒険者が快く協力してくれるのも、彼女の名声がかなり効いている。

 そんなジーナが重要視しているのは、村人の教育と食料。もちろん、防衛は最低条件だが、それよりも村として継続させるために必要なことを整えようとしている。それがわかるようになったのも最近だ。今まで必死になってやってきて、ほんのちょっと時間が空いたから考えることができた。


「考えたんだけど、数年は村としては小規模にして、教育と砦の建設に力をいれないか?ほら、防壁一つ取ったって、ここレベルのは作るのに一年二年じゃ無理だろ?」

「……ここは冒険者の都リステンよ?北部辺境域再奪還のほぼ当初から多くの兵士が協力して作ったの。多い時には万を超える兵士がここに詰めていたって話だから、ここと比べるのはちょっとね」

「あ、そうなの?

 でも、防壁は低くちゃ駄目でしょ。それに、あそこは川があるだけで平野が多いから開拓した村の防衛体制が、ねぇ」

「平野にしたのは私達だけどね。たくさん伐採したもの。

 防衛施設を作るのは大変よ。ボトラルとの打ち合わせで出てきたけれど、通常であれば堀を掘りつつ、壁を作るのが一般的ね。壁を作る速度が優先されるから、煉瓦は横向きに積むの」

「ある程度作ったら1メートルほど空けてもう一枚。その間に土や小石を入れることで重厚な防壁になる」

「資材と時間と労力に余裕があれば、煉瓦は縦方向、狭い向きが表に出るように繋げた方が良いわね。それが北部城壁の基本ね」

「基本……ね」

「」

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