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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
4章

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4-16

「……本当に、お兄様は大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫。あれは考え事しているだけだから。

 今までも何回かあるのよ。周りが安全な時しかしないから安心して」

「でも、ジーナお義姉さま。村でああしているのを見た記憶がなくてですね……話しかけても反応がないですし、とても心配です」

「えっそう?ダグ?」

「俺が会ったときには、宿の中や飯屋で時々ああなることがあったぞ。深く考えるときの癖だろうな。

 さすがにここまで反応がないのは見たことないが」

「私達がいるから大丈夫。『索敵』でもこの周りに魔物も獣もいないってでてるし。

 シルビアが面白いアイデアを出してくれたから、それについて色々考えてるんだよ」

「……それなら、頬をつつくのは止められた方が……」

「ははっ。

 反応がないのも楽しくてね」

「おい、ディグ!そろそろ行くぞ!」

「……っん、はっう、うん。わかった」


 考え込んでいたらダグに肩を叩かれた。馬鹿力め。分厚い毛皮の上からなのに、結構な痛みだぞ。

 周りを見ると、ジーナだけでなくシルビアまで、なぜか微妙な表情で俺を見ていた。理由がわからず、小首をかしげて見返すと小さく首を左右に振られる。ん?まあいいや。

 あまり遅くなると、今日中にリロルの砦予定地に着かない。この時期に野営はしたくないから早く行こうか。

 出発すると、先日までとは違って楽しい。周りの風景がころころと変わるから見飽きないのだ。高い木に低い木。枯れた草の中には、この時期でも青々とした葉を付けた植物もある。もう見慣れたけれど、こっちに来るまでは見たことがない植物ばかり。ほとんどの木は冬でも緑の葉っぱを持つんだから変わってるよね。

 道をきちんと整備しているから、周りを見る余裕がある。自分でやったことだけど、使ってみると、これは評価されるべき仕事だって実感する。まあ、貴族になる程かと言われるとあれだけど、ほぼ一人で、短期間でやったことを考えるとそれだけの価値はあるのだろう。今ならそう思える。

 川の流れる音が少しずつ聞こえてきた。まだまだ凍ってはいないようだ。これなら、雪もないだろう。道は全然悪くなっていない。西部の道にはちょっと風雨で削られたところがあったけれど、こっちは周りの木々が壁になったのかほぼ変化なし。馬車の歩みは順調で、日が中天を過ぎるころには燻製小屋がちらりと木々の間から見えた。

 まだ少しかかるので一度馬を休ませ、軽食を取る。本格的な昼飯にしても良かったんだけど、日が陰る前には小屋で休みたい。みんなの意見が一致したので休憩も短めだ。


「おや?馬車が一台停まっているね。まだ誰かいるのかな?」

「小屋の中身とか運んだりしたら、リステンで村人の教育をお願いしてたと思うんだけど……忘れ物とか」

「いや、開拓の作業をしてくれていたみたいだな」


 近づくと小屋の横に大き目の馬車が一台あった。馬は簡易な造りの厩舎にいるらしい。堀と柵があるとはいえ、外にそのまま置いておくのは不用心だからね。

 何をしているのかと疑問に思ったら、ダグが広場の端を示しながら納得したようにつぶやいた。そちらを見れば、行くときの倍近い煉瓦と材木が整然と積まれ、掘り起こされた切り株や岩が所狭しと並んでいる。この量の作業があの人数でできるのか?

 そう考えていたら、小屋の向こう側から十人以上の大所帯。何台かの荷車を引いている。先頭は『早春の誓い』リーダーの斧使いダグラスだ。あの巨体は見間違えない。こちらに気付かず、瞬く間に煉瓦を荷車に乗せ、半分が引いていった。残りはどうするのかと思ったら、いつの間にか馬を繋いだ荷馬車がやってきて、そこにも煉瓦を積んでいく。荷馬車と人足を他に任せて送り出し、ダグラスだけが残った。どうするのかと思ったら、こちらを向いて頭を下げてきた。あ、気付いてたのね。

 柵に近づいていくと、ちょっとだけ立派になった門が見えてくる。外と唯一地続きな訳だから、門の周りも簡単な柵だけでなく、板壁になってる。広めの堀があるから、橋も大き目だ。建設が始まるまでのつなぎで架けた橋だけど、加工が面倒だったから結果的に分厚い物になってる。まあ、煉瓦やら岩やら運ぶんだから良いんだけど、架け替えるときは大変かも。そこも要検討だな。

 用心のためかきっちり閉まっていた門を開けてもらおうと、ジーナが『身体強化』をダグラスにかけていた。あの筋肉ですら一人じゃ無理なのか。まとめ役のミルトンはリステンの屋敷で村人教育の真っ最中。でも、勉強ばかりじゃ嫌だったのか、現地を体感するとの理由付けで冒険者と一緒の一部の男連中がこっちの作業に参加しているようだ。リステンで買い付けた建築素材の運搬や分配、帰りにはこちらに溜まっていた魔物素材や干し肉を積んでいってるので無駄にはなっていない。

 その機転のおかげで、運営資金と作業計画に思った以上の余裕ができそうだ。一部の素材は小屋で冬越えしても仕方ないと思ってたから、無駄にならなくて済んだ。まだロル村の倉庫はできてないから、あっちへ持って行って交易って訳にもいかないし。


「リロル様。後一月もしないで雪が降りだします。

 そろそろこちでの作業も終わりにしようと思っていましたんで、もし良ければ、皆で一緒にリステンまで行くって訳にはいきませんかね?」

「別に構わないよ。纏まって移動した方が、安全だよね。

 そもそもこんなぎりぎりまで頑張ってくれるとは思ってもみなかったし、村人にも作業を振り分けて進めてくれてるなんて助かるよ。もうすでにあっちで迷宮に籠っているかと思ってた」

「その辺りは、ミルトンの考えです。あいつらも、俺らと同じく、勉強だけってのが性に合わない奴も多いみたいで」


 すでに遠くに行った村人達の方を示しながらダグラスが言う。ちょっと恥ずかしいのか、右手で頭を掻きながら、口調も砕けてる。うん。これくらい気安く話てもらいたいね。それにしても、やっぱりミルトンの指示か。Bランクにまで上り詰めたんだから、ダグラスだってただ豪快なだけじゃなく、気配りだってできる。でも、村人にも気を配れるのはやっぱりミルトンだね。


「リステンで詳しく説明がありますが、クランの雪兎も開拓にほぼ全員が参加したいとの話が来てます。一部は冒険者を引退して冒険者ギルドの支部の一員としてって話です。支部については、商業ギルドもですね。こちらは特に人員の話は聞いてません。

 村人はここにいるのを含めて53人。幼いのはまだリステンで冬越ししないみたいですね」

「たしか、職人の下働きしている人や力仕事ができる人を優先してこちらに連れてきてるんだっけ?でも、思ったよりも少ないね」

「暖かくなれば、作業の人足として追加で連れて来るようです。最初はそこまで人数要らないですから」


 無駄な人員を抱えても、食料と防衛の問題があるからね。作業人員を増やすのは、砦予定地に休める場所を作りつつじゃないと色々と問題になるし。

 いなかった間の報告を軽く聞きながら、本日の寝床へと到着。

 明日は朝から、みんなでリステンに移動だね。

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