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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
4章

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4-13

「……それって、煉瓦ではなく普通の石材じゃないかな?」


 すごく言いづらそうにジーナからの突っ込みが入った。


 そうともいうね。


 石を固めた煉瓦は、石材。うん。至言だ。……いや、違う。いや、違わないけれど違う。俺に必要なのは、そこのところじゃなくて、そこらへんに転がっている使い道のない小石を固めて石材を作れないかと、石工を用意しなくても大きな邪魔な石を割って、石材にできないか。

 ジーナに聞くと、魔術を使って簡単にできそうだけど、俺の『穴掘り』でできるなら作業効率はかなり良くなる。やっぱり、イザって時のために、範囲魔術が使えるジーナも魔力は残しておきたいし。

 なので、石を固める練習から。

 どうせ馬車は馬任せで、整備された素晴らしい道(自画自賛)を歩かせるだけ。魔物の警戒はダグがするし、シルビアはジーナと一緒の馬車だから俺は手持ち無沙汰なのだ。今の俺には復習が一番必要なんだけど、一人で御者をしながらッてのは難しいんでね。

 あ、そうそう。ジーナの予想通り、追加の移民は無理でした。各地で余っていた人員は、やっぱり故郷のロル村に吸収されてしまった。商都ロンドリアや領都ローラであれば貧民街やスラム的な場所があって、余分な人間――領主的に――はいる。が、それをそのまま交易相手に押し付けるのは躊躇われたのか、今回北へと向かう移民希望者はゼロである。

 考えようによっては良かったかも。来年以降であれば、ロル村に出張所ができ、そこである程度の選別と教育を施して北へと送り出すことができる。もちろん、交易と抱き合わせでだ。そうしないと、途中で野垂れ死にするかもしれないしね。

 そんなことを考えながらも、『穴掘り』の応用で石を固めようとするけれど、まったくうまくいかない。そもそも固まらないし、威力を強くすると割れる。一見固まったように見えても、衝撃を与えるとボロボロに崩れてしまう。

 ひとしきり練習をしていたら、空が赤く染まり、家に帰る時間になってしまった。建てるべき倉庫や家に関して色々と周りを見ながらぶつぶつと呟いていたジーナに声をかけ、一緒に戻ることにした。


「石を固める魔術、か。うーん……石を媒介に『岩生成』を使えばいけるかな?それなりに魔力を消費するから連発はできないけれど」

「大きなのはある程度使い道があるけれど、小さいのは邪魔なだけだからどうにかしたいなぁって。でも、ジーナは色々と忙しいし、魔力も余裕を持っていてほしい。いつ迷宮が崩壊するかなんてわからないんだから。

 あとは、大きな岩も石工にお願いしなくても加工できれば助かるよね。どっちも、俺の『穴掘り』でなんとかできると良いんだけど」

「まあ、気長にやることだ。それよりも、予定していた木材では全く足りなそうだ。かなり準備したんだけれど、予定よりもかなり多く倉庫を建てられることになったからね。今のうちに村長に追加でお願いしておかないと」

「一度にすべてやる必要はないんじゃない?倉庫なら何年かかけて順番に作っても問題ないと思うけど」

「大工がずっとここにいるのであれば問題ないんだけどね。さすがに、居て2年ほどだろう。その間にできるだけ建ててもらわないと後々困るのさ」


 そうか。大工にも予定があるはずだし、ここで何年もかかるほどの仕事があるはずがな……村が発展するならあるんじゃないかな?そうジーナに聞くと、ここに居着いても良い弟子がいれば可能性はあるとのこと。ただ、幸運にすがって予定を立てても良い事はないので、あらかじめできることはしておくべきだと。確かにそうだ。

 結果として、北へと持って行く予定だった利益のうち、大半を吐き出して追加の材木を手配してもらうことにした。不要になった場合でも、村内で家を建てるときには使える。つまり、売り先は確保できるのだから多すぎても問題ない。村が発展することを考えると、長期的に見れば木材の高騰は避けられない。それに、建設が始まれば人手が取られる。二重三重に高騰する要因が予見されるわけだ。

 商人や貴族は、そういった長期的な視点から動いたり、お金を動かすとのこと。難しいが、今後は考えていく必要があるんだって。お貴族様も楽じゃないね。


 実家では、シルビアを送り出すためか豪華な夕食の準備がされていた。俺が学院へと旅立った時と同じようで、懐かしくなる。違うのは、ジーナがいることと、食事が豪華なことだろうか。

 酒類には、今回の交易で得た物だけでなく、北から運び入れた雪芋の酒もある。小樽を置いていくので、余ったら家族でちびちびと飲んでもらいたい。収穫前にしては小麦類も豊富なのは、手が足りる範囲で畑を増やしたので、野菜や早生の小麦、雑穀などが十二分に確保できているから。それと、俺達用に持ってきていた干し肉。どうせ後は帰るだけ。最初から、必要分に少しの余裕を持たせた残りは、ここに置いていくつもりだった。その半分程度を惜しげもなく出してきた。うちの家族らしい対応だけど、もう少し自分達のことを優先してほしいな。

 笑って泣いてまた笑って。シルビアと家族の宴は、遅くまで続いた。まだ彼女が幼かったときの話からこれからのことまで。話が尽きることがなかった。時々、俺に飛び火するのだけは止めてほしい。ジーナもダグもいるんで、気恥ずかしい。

 村から出る、それは、一生の別れを意味する。

 集落の外は、決して安全ではない。まあ、集落だって、今回みたいに襲撃されることがあるけれど、それでも柵や堀なんかで守られているけれど、外ではそうはいかない。たとえ街道が整備されていても危険は避けられない。命がかかるのだから、隣村に行くのだってそれなりに理由がなければ難しい。ましてや、片道一週間かかったり、山を越えた先になんて行こうもんなら、村人にとっては今生の別れだ。商人や冒険者なんかが例外なんだ。

 上に兄二人がいるとはいえ、俺とシルビアは遠く離れて行く。両親の心のうちはわからないが、心配なんだろう。時々目に光るものがあり、二人とも言葉数が多い。それでも、俺達のために引き留めようとしない家族を見て、また帰ってこようと心から思った。

 たとえ、こちらに派遣する部下から俺達が元気だと聞いていようとも、実際に会って、こうやって話をする機会を作りたい。そう思った。

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