表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/97

4-12

「積み荷の確認はできたから、明日には出発したいんだが……だいぶ、修練を積んだようだね」

「……ああ、そっちは毎日掘り返してる。日に日に広い範囲を一度でできるようになってるんだ。ほら、そこに棒がさしてるだろ?それを目安にやってるんだけど、指一本分くらいずつ広がってる感じかな」

「短時間で目に見えるほどの成果が出るとは羨ましい」

「自分がやりなれた魔術の応用だからかな。それに、数もこなしているからね」


 広がった畑を見る。先日まではただの草原に過ぎなかったのに、今は見渡す限りの土。連日掘り返しているだけあって、雑草もなく、やわらかだ。一度、肥料を混ぜたので、誰がなんと言おうと畑と断言できる。春に植える種も用意してあるんだが、こっちで働く人員の手配は終わっていない。冬の間に会う予定の責任者、カーラム・クーラム――クーラム子爵家の三男――商家に縁があり、計算と人付き合いに長けている北方では珍しい人種。彼がすでにある程度の人員を手配しているとジーナは目星をつけている。

 あんまり情報がないのにそんなことしているようなら、めちゃくちゃ頭が良いか無謀かのどちらかだとちょっと不安になったけど、すぐにジーナは種明かしをしてくれた。


「商会を立ち上げようとしていたところを抱き込んだんだ。元々腹心や部下は複数いたはずだし、情報収集はお手の物。私について調べればすぐに君と領地にたどり着く。戦いは苦手だからそちらの要件ではないことはわかるだろうし。

 その先が読めないほど馬鹿ではないよ」

「すごい人なんだね。俺で大丈夫かな」

「心配性だな……上に立つ人間は、要所要所を抑えておけば良い。この場所なら、畑の広さ、収穫量、北への運搬量、作業人数。試している新しい作物なんかは概略を知っていれば十分。交易量や取引額は、月毎、種類毎に纏めさせれば良い。それだけで、だいたい把握できる。

 それに、ちょっと足を延ばせば簡単に来れる距離だから、そうそう不正もできない。ほとんど任せっきりで問題ないさ」

「その辺りのさじ加減も勉強する必要があるんだね……はぁ~大変だぁ」

「ふつうなら、譜代の執事や家臣が居て、その辺りは仕事をしながら慣れていくんだけどね。そこは新興貴族の大変なところさ。

 だから、寄親や後見人がいる。もちろん、彼らも下手なことはしない。優秀な部下の優秀な次男や三男を送り込むと、双方から感謝されるし、世話した貴族が活躍すればそれは名誉なことと賞される。逆に、送り込んだ人間が悪ければ自分の評価にもかかわる。

 特に、一度滅びて再興している北部はある意味、新興貴族の集団さ。支援の手段も内容も、他の地域に比べて何倍も洗練されているから何の心配もする必要がない」

「寄子が栄えれば寄親にも利益があるんだな。当たり前か」

「純粋な善意は長く続かないし、それをあてにした領地運営はしてはいけない。お互いに利益がある方が長く続くんだ。

 特に、北部は一度滅びて魔物の領域になっている。お祖母様が解放するまでだから……数十年だけど、荒廃するには十分な時間だ。どの貴族も領土は狭く、力もない。まあ、武力だけは圧倒的だけどね。お互いに協力し、発展していかないといつまた魔物の逆襲があるかわからないからね。特に、高齢の貴族家当主ほどその意識が高いね」

「実際に、自分が経験しているから?そうなると、自分たちの代がちょっと怖いかも」

「そこまで心配する必要もないよ。実際に、目の前に迷宮と魔物と言う脅威が依然としてあるんだから。

 母や騎士団、冒険者が迷宮の討伐を行っているけれど、減っている感じはあまりしないからね」

「森の奥深くとか行くのは大変だものな」

「そう。だから、私たちの生活圏を守る力が重要になる。つまりは、君は価値が高いのさ。だから、周りの協力は多いし、部下も良く働くよ」

「ああ、そういう話だったっけ」


 興味深い話だったから話が発展しても気にならなかったけれど、元々は領地運営とこちらでの権益確保に対する不安が話の初めだったな。まあ、話を聞く限りでは、こちらにも、故郷にも良い感じみたいなんで、責任者(予定)のカーラム氏が変な人じゃなければ問題なさそうだ。

 明日には北へと旅立つけれど、こちらでやるべきことは済ませた。一緒に来る妹――シルビアの持ち物は少なく、ほぼ着の身着のまま。防寒具などはこちらの手持ちがあるし、そのほかの物も共通で使えばいいだけだ。ジーナもいるし何の問題もない。なお、ダグとシルビアは最初は戸惑ったみたいだけど、一日もすればごく普通に会話している。農民と冒険者で共通となる話題なんてあるわけないが、意外に如才ないダグが簡単な冒険譚や旅の話をしてから一気に壁がなくなった。

 そうなると、少々手持ち無沙汰だ。今日の夜も実家に泊まる。今回ばかりは、ジーナも一緒だ。夕食も豪華な予定。ダグは念のための見張りを兼ねて馬車内で寝るが、さすがに食事は一緒だ。まだまだ夕暮れには早い。魔力も十分にある。そうなると、まだ訓練したくなるな。


「多彩な攻撃手段と手軽になる開拓。どっちが優先度高いと思う?」

「なんだ、また魔術の開発かい?熱心だね。

 ……そうだなぁ、領主として考えれば開拓。時間は有限だからね。そちらが手軽になれば攻撃手段を模索する時間をひねり出せるだろう?」

「ああ、そう言われればそうだね……うん。確かに。

 なら、一つ気になってることがあって」


 今俺は、泥を固めることで煉瓦を作ることができる。魔術で固めることでなぜか乾いて、かなり固めになるので防壁を作るのに重宝している。普通は焼き煉瓦か日干し煉瓦を使うらしいけれど、それらと比べてもそん色ない強固さだ。

 でも、さすがに石材に比べるとどうしても脆い。そこをどうにかしたかった。

 それに、開拓をすると時々出てくる大岩。山を切り崩して道を作ったときはそこまで岩な感じがなかったから掘り上げれば細かくなって、煉瓦にすることも問題なかった。でも、石が入っている煉瓦は、脆かった。見た目も通常の硬さも同じだけど、結構割れる。明確な理由はわからないが、割れるときに石が見えることから土の部分と石の部分のくっつきが悪いんだと思う。石工に頼むか、粉々にしないと使えない。石は重いし邪魔な存在だ。

 でも、それって、もしかするともしかして。石だけで煉瓦ができるなら良いんじゃないかな?そうは思わない?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ