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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
4章

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4-4

「ははっ。なんだい、そんな心配していたのかい?大丈夫だよ、君は熱心だからね。私もサポートするし、数年もすれば立派な当主になれるさ」

「でも、貴族なんて、物心ついた頃からそんなことばかりしているんだろ?とてもそんなことできるとは思えないよ」

「いやいや。それは勘違いさ。ほとんどの貴族は、領地経営に忙しくてそんなことしている暇はないよ。

 もちろん、社交や会話術。交渉術などは幼いころから学ぶけれど、実践相手はせいぜい出入りの商人。同じ年頃の他の貴族となどは無難な付き合いをするのさ。下手なことをして、将来にわたって溝ができたら困るだろ?

 宮廷雀を別にすれば、そこまで裏のある会話など滅多にないさ」


 ジーナの回答をもらって、俺は安堵した。会話の一文、一言、一単語に神経を使うのはかなり疲れる。こんなことを日常的にやってるなら貴族ってすごいなと素直に思ったくらいだ。

 ……ちなみに、村長とのやり取りの分析についての答え合わせ。概ね合っていたそうな。なお、初級編ですらなく、入門編の前の訓練扱い。どちらかと言えば、商人よりの会話だったらしい。俺、木っ端貴族としてやっていけるだろうか。不安である。


「特に北の貴族はそんな会話をしないよ。寡黙で誠実。それが北の貴族さ。口数が少ないから、そもそも、そんなに会話をしないから」

「それなら助かるけど……会話しないって逆に困らないか?」

「寒いからかな。余計なことを言わず、直接的に言う人間が多いね。言葉を重ねるよりも、行動で示すよ。だから自然と口数が少なくなる。

 付き合いやすいけれど扱いにくいとはよく聞くね」

「貴族としてどころか、人としてどうなのさ、それ」

「ははっ。人としては付き合いやすいんだよ。嘘はないし、身内には親切だ。寡黙で職人気質の人はどこにでもいるだろ?それがただ貴族なだけさ。

 新興貴族へのやっかみなんかもあまりないから、君にはやりやすいと思うよ」

「普通は色々あると思うけれど……」

「王より授けられる貴族位ならまた話は別だろうけれど、辺境伯の責任で渡せるレベルの爵位だもの。中央に行ったら大した箔付けにもならないから。地元から離れることはほぼないからそっちも心配無用だけれどね。

 むしろ、雪深い故郷を共にする身内ができたと大喜びさ」


 俺の知る貴族とはなんか違う気がするが、北で生まれ育ったジーナがそう言うならまあそうなんだろう。故郷でも、東の人間はのんびりだとか、地域性がどうとかって話はあったし、どちらにせよこれから長い付き合いになるんだからすぐにわかるだろ。

 それよりも、同じ貴族位でも王に任命された貴族と、各貴族が任命した貴族で格差があることはきちんと覚えておかないと。王が任命した貴族の方が一段高い扱いを受けるんだね。辺境伯や侯爵は子爵まで、公爵や伯爵は男爵。子爵や男爵は騎士爵までは任命できるけれど、任命したからには給料や領地など、相応の待遇を用意しなくてはならない。だから、軽々しく任命されることはないけれど、功績を上げれば平民でも成り上がれる。有力な男爵や子爵には、数代前は平民だったという家もそれなりにあるらしい。

 で、俺は準騎士爵。貰った領地はない。ないが、その代わりに開拓権と開拓費を貰ったわけだ。もちろん、街道整備の報酬は別だし、ジーナの分も別。ジーナは準男爵から男爵に陞爵したので、元々持っていた領地――小さめの町一つ――の近くにある村を3つ追加で貰った。普通の男爵位なら、砦を含めた一帯を管理しているけれど、街と呼ばれるほどには発展している集落はない。ジーナの領地はそこそこ大き目の街がある地域だけど、統治の勉強のために授けられた領地だからか、砦と近くの街は辺境伯がそのまま管理している。将来的には返上してここリロル地方の発展に力を注ぐ予定。

 いろいろと心配になる判断なんだが、彼女は「交易の中心となる地域だ。私達の孫の代には北部でも指折りの大都市ができていても不思議じゃない」と笑う。俺はそこまでの自信はないけれど……。


「抜け目ない商人とのやり取りだって、そこまで心配する必要はないよ。辺境伯家の縁者となる者にあくどい真似をする商人はなかなかいない。もちろん、ある程度はぼられる可能性はあるが、そこは、一商家を重用しなければ良いだけの話さ。

 交易の中継点となるこの地であれば、ある程度の形になれば行商人からそこそこの商人まで集うようになる。自然と広く付き合うようになるさ」

「思ってたのと違うけど、やっぱり開拓って大変だな」

「何を言ってるんだい。こんなの大変なんかじゃないさ。

 普通の開拓なら、今の位置ですら数年、いや下手したら十年もかかる。木を伐るにも、街道を作るのも、堀を掘るのも人力だからね。あ、もちろん、従事する人数は十倍以上だ。

 なにせ、まず最初に砦よりも中心となる村ができあがるんだよ?ここみたいに簡素で、しかし守られた砦が出来上がるところなどそうそうない。辺境伯の力を持っても、魔術師を開拓に従事させておけるような状況じゃないからね」

「やっぱり魔術師は偉大だな」

「それに君だ!確かに、魔術師は色々な魔術を使い、様々なことができる。魔術師どころか魔術使いが一人いれば、どれだけ作業が捗るか。実感したからわかるだろ?

 しかし、魔力は有限だ。やるべきことも多い。魔物もやってくる。だから、人力で問題ない所は、手でやることになるんだが、我らの領土は違う。ここでやっているように、堀から道から畑。もっとも人手と時間を使うところが魔術で簡単にできる。それも、消費魔力が少ないから積極的に魔術を使ってお願いできる。これほどまでに恵まれた開拓はないさ」


 つまり、コストと時間がかかるところを俺がやって、それ以外の魔術が必要なところはジーナがやって。通常の開拓とは比べ物にならないくらいに恵まれた状況だと。

 まあ、これだけ評価されればある程度は理解できる。魔術師にはなれなかったけれど、俺は強い!……違うな、偉い!……これでもない。使える!……ん、まあこんなもんだろう。

 俺にとって、魔術学院で見た、桁違いな魔術師――ジーナほどではなかったかもしれんが――の印象が強すぎて、一年で放校された自分がみじめすぎて、他の魔術師に対する評価が高く、自分への評価は低い。……らしい。まあ、増長しなくて良いんじゃないかと思うんだけどね。

 戦いに向くタイプじゃないので、冒険者としての活躍もあまり期待できないけれど、開拓や整備などの内政にはすこぶる役立つ。……たぶん。他の使い方も考えていかないと、領地の運営が軌道に乗り始めたらやることなくって困るかもしれんけど。

 で、通常の何倍もの速さで領地ができていくので、通常なら数年かける勉強や経験を半年とかに詰め込まれて大変、と。……自業自得?ちょっとへこむわ。頑張った結果がこれだもん。

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