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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
3章

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3-16

「夏祭りの時期が来るわ。

 そろそろ夏が終わるわね」

「……早いね」

「そうね。やることがたくさんあると、時が過ぎるのが早く感じるわね」

「違うよ。時期が早いって言ったんだ」

「冬が長いからね。おたおたしてたら雪が降るよ。

 この辺りも雪が降るだろうけれど、量はどうかな?今年は家もまだまだできてないからリステンで冬を越すけれど、来年からはこっちで過ごしたいな」

「建物の破損具合で冬に降る雪の量を量るんだっけ?どこも壊れなければ良いんだけどな。西も近いから何とかなるんじゃないかと願ってるんだが」

「燻製小屋は壊れると思うけど、倉庫と家は問題ないんじゃないかな。リステンの雪も少なかったし、こっちも少ないでしょ」

「……あれで少ない?マジで?」


 何もしなければ家が埋まるような雪が少ないってのはないと思う。ただまあ、領都リアンナも、ジーナが育ったマタイって街も、月に一度は屋根の雪下ろしをするのを前提とした街造りだってんだから、それと比べちゃ仕方ないかも。冒険者のみんなも頷いているしね。西は冬の間に数回降れば多い方なのに。

 リステンはそこまでの雪じゃないって言うけれど、それでも冬の間には数回道の雪かきと屋根の雪下ろしをした。ここの砦も、雪を想定した造りを考えているので、雪を溜める場所や、道幅をかなり確保してある。城壁の内側にもいくつか堀を要望されていたから何かと思ったんだけど、雪捨て場だったりした。

 他の場所にある砦も同じ感じらしく、どこでも守るための砦は広く大きいんだけど、実際はすかっすかのようだ。まあ、対魔物兵器が山ほど用意されていて、少ない人数でも問題ないって聞いてるけど。その辺りは、長くこの地で生きてきた人の言う通りにしようと思っている。何も知らない素人が横から口を出すことには何の意味もない。口を出すなら、少しは詳しくなってからだ。……はぁ勉強しよ。


「彼らには、どれくらいの雪か、何もしないとどれくらい被害が出るのかを調べてもらおうと思っているんだ。それと、リステンに来ている村人候補達の教育。特に、冬の過ごし方とかだね。冬の獣は狩りづらいから」

「冬の依頼もあるのか。まあ、そうだよね」

「ふふっ。ほとんどないから依頼した冒険者たちからは喜ばれてるよ。特に低ランクだと稼ぐのが難しいからね。冬場のメイン仕事が屋根の雪下ろしや雪かきだって言えば理解できるでしょ」

「それじゃ収入なんてたかが知れてるでしょ。食べ物どころか宿にも困るんじゃない?

 雪の間は魔物の襲来も少ないんだろ?」

「下手に野営すると冬の終わりに氷像で見つかるわね。

 冬にしか出てこない魔物を狙うのも手だけど、そこには熟練の技術が必要になるわ」

「低ランクのうちは、共同で大き目の家を借りるんですよ。少しでも支出を抑えるために。

 それと、ギルドに認められれば迷宮に潜れますし」

「え?Dにならなきゃダメなんでしょミルトン。ジーナもギルドもそう言ってたよ」

「真面目に依頼をこなしてきた低ランク冒険者に対する冬の間だけの特例ですね。リロル様はジーナ殿とパーティーを組んでいらしたから対象から外れていて、特に説明がなかったのでしょう。

 ランクに合わせて、低階層の探索を許可されるのですが、パーティーを組むことやギルド内での訓練、もめ事を起こさないなどのルールがありまして。それを守れない者は特例を受けられません。なので、北の冒険者には規律違反をする者は少ないんですよ」


 冬を越せませんから。

 笑顔で吐かれたその言葉は、かなり冷たかった。

 でもそうだよな。当たり前だけど、通常はランクが上がらないと入れない迷宮に特例で入れさせるんだから、トラブルなんて起こされたら目も当てられない。ただでさえ、一部では冒険者は粗野で乱暴者だって言われるんだから。

 冒険者の集う地。そう呼ばれる北の大地は、厳しい土地柄だ。俺が生まれ育った西部に比べると、街の中も村の中もきれいに整っていて、過ごしやすく感じる。余分なものがないのだ。娯楽もなければ富もない。弱者が弱者でい続けるための場所も余裕もない。犯罪者が隠れる貧困街もなければ、厳しい冬のさなかに犯罪者に渡せる資源もない。

 だから、北部では犯罪組織はほぼないそうだ。少なくとも、表立ってはいない。厳しい冬は、なんだかんだ言って協力し合わなければ越えられないのだから。

 そのことをこの辺りの冒険者は低ランクでも骨身にしみている。だから、新しい村人候補達に叩き込む役をやってもらうのがジーナの計画だ。その間、俺らを含めた高ランクパーティーは迷宮で稼ぐ。低階層では魔石とぼろいアイテムしか手に入らない迷宮でも、奥の方では色々な物が手に入る。中には、食べ物や飲み物もあると聞く。まあ、メインは魔道具や装備、ポーションの類で、それらに使える素材も高額で取引されている。その辺りも手に入れば開拓資金にさらに余裕が出るんだけど……。俺はまだまだ弱いから、低階層から抜けられないだろうな。残念。


「祭りに合わせてリステンに皆で行こう。今年の開拓はそこでおしまい。ジーナの計画通り、この建物で次の冬が越せるかどうかのチェックと資材の手配。人の手配は……今、すでに村人候補達はリステンにいるんだよね?」

「ええ。広めの家を借りて様々な教育を与えてます。

 農作業に木工。皮革加工に簡易鍛冶。解体や狩猟の他、調剤なども一通り。一人でも適性がある人間が居れば儲けものです。作業ができる人間はいくらいても良い。あ、槍と弓は全員必須で」

「万が一の時、村を守れる手段は多い方が良いもんね。盗賊は少ないだろうけれど、魔物はいるから」

「住み着く冒険者だけでは手が足りませんからね。堀と柵だけでは村の守りは頼りないですし。訓練相手として、暇な冒険者に依頼を出していただけると助かりますね。そうすれば、私たちは迷宮に専念できます」

「それは良いけど……怪我はしないでよねミルトン。君らも既に計画に組み込まれているんだから」

「……はい」


 それなりにまともな北の冒険者の中でも、俺達が信頼して仕事を任せられ、信用できる冒険者は少ない。何せ、伝手がないので顔も名前も知らないし。村を作り、発展させるためには俺達だけじゃ無理だ。上手に冒険者や商人を活用しないと余計な時間とお金がかかる。砦防衛のための兵士はジーナが手配してくれているけれど、兵士だけで砦が回る訳じゃない。リステンの住人と少なくないつながりがある高ランク冒険者は確実に確保しておきたい。

 つーかミルトン。君、執事や家宰狙いでしょ?現状ですらいなくなったら困るんだから、怪我しないでくれよな。

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