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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
3章

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3-15

「よーし!今日の作業はここまで!

 ほら、炊き出し班は夕食の準備。砦班は汗を流して」

「加工班もそろそろお終いにしよう。枝はいつもの通り分類分けして。板は小屋建設予定地へ。

 採取班は素材ごとに分けてくれ。

 それと、ゴブリン、オーク、ウルフ。そしてオーガの牙は倉庫10に。オーガのは袋に入れてくれよ!」

「「「はい!」」」


 本格的な開拓準備を始めた春。あれから、それなりに時間が経った。爽やかな風はいつの間にか熱を増し、ささやかな緑も迷惑なほどに増えた。砦と村の整備も進み、大雑把に作ってあった堀をきちんと作り直し、村の位置も細かく決めた。半分くらい掘り直しになったけれど、川からの引水を含め、かなりきちんと考えられた位置になっている……気がする。ジーナが、後々の拡張も考えて、丘を削ってまで位置決めしたからね。

 乾かすべき材木は枝を払い、皮をむかれて積んである。煉瓦も、城壁の半分程度の量は確保できている。今は、壁の間に詰める土と、レンガ同士をつなげる素材を作る用意を進めている状況だ。

 最初は持ち込んだテントや馬車で寝ていたけれど、一月もしないうちに簡易的な小屋が10棟建ち、その全ては未だ倉庫になっている。先日、開拓心あふれる行商人がこちらに来てくれたおかげで、燻製肉や干し肉、毛皮をそれなりの量持って行ってくれたので余裕もある。代わりに野菜を持ってきてくれたので、食事が華やかになった。野草よりも野菜の方が美味いんだよね。

 ついでに種を持ってきてくれたんだが、まだ農地はきちんとしていない。そのため、急遽畑を耕すことになった。遅撒きの種でそんなに数もなかったので、秋に『穴掘り』で掘り返してあった場所をもう一度掘るだけで済んだのは僥倖。ついでに、新しい魔術の訓練もできた。草を残して薄く土だけ移動させる『穴掘り』だ。通称、『草取り』。根っこが重要な薬草を上手に採取するために改良した『穴掘り』だ。最初は失敗したんだけど、改良を何度も経験していたからか、一日練習したらできるようになった。二日後には、広範囲でもできるようになり、畑に種が撒けるようになるのに三日しかかからなかった。……俺、領主候補とか開拓責任者ってよりも、農作業の方が向いてるかも。

 春の初めに作った簡易的な燻製小屋は2棟に増え、家を建てるのに皆が慣れたところで、寝泊まりするための大き目の小屋を3棟建てた。一つは女性専用だ。その時にも、『穴掘り』の応用が大活躍した。




「いやぁ~土で煉瓦を作る要領で、柱ができるとは」

「木を押し固めているだけだから軽くはならないけどね。やはり、君は優秀だね」

「……ジーナだってできるだろ?君ならすぐのはずだ」

「そりゃ『重圧』の魔術を使えばできるさ。でも、消費魔力を考えると、君の『穴掘り』の方が優れているんだよ。褒めてるんだ、素直に受け取り給え」

「……ありがとう。魔術師的には色々な魔術を使いこなしている君の方が、俺の何十倍もすごいんだけどな」

「ははっ。私からしたら、一つの魔術を極め、応用する君が何十倍も素晴らしいのさ!」

「はいはい。いつものいつもの」


 こっちの努力の結果を褒められるのは嬉しいけれど、ちょっと納得がいかない。ジーナにつられてか、皆も褒めてくれるんだけど、ジーナの方がもっとすごいのに。俺にできるのは、『穴掘り』の応用だけだもの。できないことの方が多いんだ。

 それでも、必要とされるものがあれば、何かできないかって毎日考えている。開拓に関するジーナの考えを考察するのと同様、日課だ。おかげで、できることも増えた。

 皮をむいた木材の四方を、煉瓦を作るときと同じ感じで押し固めれば、角材の完成!呪文はわかりやすく『角材』にした。できた角材は柱にしても良いんだけど、後々のことを考えて、積み上げる形で家の壁にした。板を使うのと違って、ちょっとやそっとの風じゃびくともしないし、隙間風もないし、素晴らしかった。ただ、窓を作るのが大変だけど、そこは、短めの角材を用意することで落ち着いた。床も同じ角材だけど、さすがに屋根はそうもいかず、板である。雪対策で、知っている物よりもかなり斜めなので最初は見慣れなかったけど、今じゃ当たり前の光景だ。

 最初は角材を量産しようと思ったけれど、建築に詳しい人が来て、その話を聞いてからの方が無駄がないだろうってことになった。だから、ジーナが魔術で斬って作る板も必要最小限のみ。この建物の方が冬が越しやすいなら良いんだけど、そうじゃなかったときに無駄になっちゃうからね。今はそれよりも足りない煉瓦造り……なんだけど、それも土が足りない。なので、西部地域への街道。つまり、北部と西部を分ける山の切り開いた部分をさらに切り取って、煉瓦にすることになった。そこそこ高い山をそれなりの峠にしたんだけど、それを丘……とまではいかなくても、低めの峠にするのだ。ついでに、街道わきの山が崩れないように余剰地を作り、斜面を緩やかにしたり、押し固めたり。まあ、山の切り崩しだよな。

 川やら何やらで魔物の流れがほぼないからできるんだけど、こんなことしたら北部から西部へと魔物の流出がありえるだろうにと心配したんだけど、そこの話は上の方でついてるんだって。間に荒野があるからそこまで多くの魔物が西部に居つくこともないだろうし、防御も固めるから問題ないんだと。俺にできることは、また向こうの村々に寄ったときに、堀を深くすることくらいかな。

 そんなこんなで、食と住については、日々向上している。自分たちでやっていかないといけないから、調理に始まり様々なことが上手になっていく。低ランクの冒険者は、すでに冒険者と言うよりも開拓民に近くなってる。ジーナの目論見通りらしい。

 開拓してすぐに冒険者ギルドができることは少なく、住民が戦える方が開拓成功率が高くなる。普通の村人に比べると冒険者は体力もあり、力仕事も苦にしない。彼らなら俺らと苦楽を共にしているから、運営もしやすい。なんだったら、そのまま村を守る戦力を率いる存在になってくれたって良い。低ランクの冒険者だってそうなんだから、まして、高ランク冒険者なら願ったりかなったりだ。

 まあ、ここにいる『早春の誓い』『春の足音』はそれを考慮したうえで参加したはずだ。『雪兎のしっぽ』なんかは、大規模クラン『雪兎』の一員で、開拓の行方を見定めるための試金石として参加したようだ。

 彼女らの目には、どう見えているのだろうか。良い景色だと嬉しいのだけど。

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