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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
3章

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3-11

「そっちは終わったかい?なら少し休憩しよう。汗がすごいから水浴びでもする?」

「そりゃ助かるけど、魔力は大丈夫?なんなら、そこの井戸で水汲むけど」

「休憩なのに、疲れさせるわけにはいかないよ。魔力も問題ない。さ、そこに立って『水源』っと」

「ふぅ~さっぱりした。

 ……こうやって見ると、広いな」

「それはそうさ。砦なんて小さくても数百人が生活できるくらいの広さが必要なんだから。

 砦や村の場所にもう少し資材が置かれたら広いとは思えなくなるよ」


 リロル地方を北西と南東に分断する名もなき川の中流域と下流域に設置される大き目の湖。避けた土のほとんどは煉瓦として砦を構成する元になる。完成したら川と併せて命名しなきゃだけど、それはジーナに一任したいと思う。村の名前やら何やら、付けなきゃいけない名前が多すぎるんだよ。

 今は湖予定地の端から順に煉瓦にして運んでいるところ。ダグには川向こうの間引きをお願いしている。こっちが終わったらあちらもやらなくちゃだからね。秋口にここを通ったときに、新しい道沿いの木はほとんど伐採して冬のうちに乾燥状態にステップアップしてある。道沿いに転がしておいたんだが、今は予定地も更地にしてあり、そちらで伐った木々と併せて山と積んである。その横に、大量の煉瓦の山。これを見ると、よくやったなって自分自身を褒めてあげたくなる。見上げるほどの小山がここだけで3山もあるんだから。

 煉瓦を作るだけ作って、魔力がなくなってきたら休憩がてらに運ぶこと数日。立派な成果だ。……休憩って何って思わない?

 川のこちら側だけだけど、湖予定地の形は大体整ったので明日にはジーナの魔術で壁を崩し、湖作りは一段落。


「あちらの湖作りが一段落したら川の整備。雪解け水や大雨での氾濫が怖いからね。ちょっと川幅を広げようか。それができたら一度リステンに帰って迷宮で訓練かな。また一週間ほど潜ろうか。

 ちょっと私にもやることがあるから……向こうでの滞在は二週間ほどかな。

 こちら側は適度な大きさの森を残すために、近場は伐るだけ伐ったから、こっちに戻ってきたらまずは跡地整備しないと。運搬も必要だし……そろそろ依頼も冒険者に浸透したころだろうし」

「本当は薬草とかの採取もお願いしたいんだけど、難しいよね。広すぎて」

「そんなこと考慮せずに切り払ったからねぇ。もちろん、群生地や珍しい薬草があるような場所は森として残したけれど……」

「その辺りは、川の向こうでお願いします。ってところか。元々こっちにはほとんど人が入ってなかったみたいだから問題ないって思おうよ。珍しかったり高価な薬草なんかはなかったんだ、最初から。

 で、石材と木材の運搬が依頼内容だよね。討伐はお願いしないの?」

「冒険者への依頼料は、金銭とこちらで討伐した魔物とかの有用部位。そうするとこちらで運ぶ荷物が減るでしょ。討伐は砦とかできてからかな。住む場所もまともにないんだから、低ランクの冒険者にはきついもの。川幅が広がれば当分、魔物も獣も気にしなくてよくなるだろうし。

 野生の薬草とかは切り拓いた場所で空いた時間に採取する分には問題なし。どうせこっちじゃ管理できないもの」

「単純作業だけど力仕事だから、魔術使いでも来てくれると助かるけどな」

「そこまで贅沢は言えないよ、残念ながら。ま、私が『身体強化』をかけてあげよう。有料でね」


 そいつは良案だ。冒険者は疲労軽減になるし、物もたくさん運べる。こっちは魔術の訓練になるし、わずかとはいえ収入になる。ま、ジーナ個人の資産になるだろうけど。

 ああ、資産。資産で思い出した。今、俺の財産ってほとんどないんだよな。生活費を稼ぐのにヒーヒー言ってる状態。そもそも、ここに来る前に貯めていた金はほぼ全部装備と旅の準備で消えてる。護衛依頼の報酬は貰ったし、西への街道を拓いた功績でも報奨金を貰った。それこそ、合わせれば農家としてなら一生問題なく暮らせるくらいの金額のはず。けれど、そのほとんどは開拓に投入した。

 まあ、将来的に自分の領地になるって言われれば、そうするよね。実感はわかないし、今でも疑っている。ジーナが辺境伯の身内だってのは本当だったし、開拓したら領地になるってのも本当のようなんだが……あの話自体はジーナに向けて言ってたからね。それでも、武術に魔術の師匠役がいて、低ランクなのに迷宮にも問題なく入れるなんて、冒険者として強くなるための条件は揃っていて、少しくらいは付き合ってあげようかと思える状態なわけだ。

 正直、ここまで投資したのは、今のところ生活に不自由はないし、イザって時に自分の『穴掘り』で十分生活費が稼げるし、まあいっかと考えたからだ。それに、領主を俺じゃなくジーナがやることになっても、今までの労働を考えれば、十分な広さの畑くらいは余裕で買えるだけの報酬は手に入る。そう考えたからだ。

 ダグは単純に戦う機会が増え、野生化して強力になった魔物や迷宮など自分の力を磨くのにとても良い環境が得られたから二つ返事で護衛兼仲間を継続してくれている。日に日に経験を積んで強くなっていくダグを見れば、その選択は間違ってなかった。伐った木を運んだり、レンガを運んだりって作業もしてくれているから助かってます、はい。

 ジーナは、自分の資産を湯水のように突っ込んでる。……たぶん。詳しくは教えてくれないのでよくわからないが、辺境伯家の財産ではなく、個人財産を使って村人候補を教育し、北部へと移転させる計画を進めている。そのために、騎士団の一部を動かしていて、その経費も自腹らしい。だから、移動の際に交易的なこともできて、かなりの経費を回収しているらしいが、それでも使っている費用の方が大きいのは確かだ。冒険者として稼いだ金も、迷宮での利益の分け前も使って、なりふり構わずリロル地方を成功させようとしている。

 何がそこまで彼女を駆り立てるのかはわからない。でも、思わず聞いてしまった。


「金は足りるのか?冒険者を雇うのだってタダじゃないだろ」

「開拓については、最初に決めたでしょ。将来的な報酬は別途考えるとして、収入があったら経費を除いた後に、五等分して3つは個人に。1つはパーティーの予備費」

「最後は開拓費用。だったよな。それじゃ足らないだろ?」

「そうでもない。ほら、素材を支払いに活用しているし、後々必要になる素材は確保してあるし、そもそも食費どころか経費だってほとんどかかってないし」

「んな馬鹿な。パンは」

「素材を大量にギルドに卸してる関係で、タダで貰ってる。まあ、お得意様だからウチ。肉なんて、干し肉にして売るほどあるし、野菜は無理だけど食べられる野草は今の時期たくさんあるでしょ。薪だって、魔石だって、自前じゃない。こっちにいる間は経費らしい経費はかかってないの。

 岩塩が採れる山もあるし、肥沃で平らな土地もある。大きな川があって水には困らないし、川を渡れば迷宮も、深い森もある。ここは開拓のし甲斐があるわ」


 明るい将来を見据えてあでやかに笑うジーナが眩しく、俺は目を眇めた。

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