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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
3章

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3-10

 目の前には、怒りの表情を浮かべた筋骨隆々の大男。それなりに広い部屋のはずなのに、壁に一面の本棚と執務机を占領している書類、そして、今座っている応接セットのせいでかなり狭く感じる。

 まあ、部屋の主のせいで狭く感じるのかもしれんが。

 俺?

 俺は今、ジーナの横で一緒に怒られているところ。聞いてみれば当たり前なんだけどね。


「で、ジーナ嬢。もう一回言ってくれ。どれだけの頻度で迷宮に入ってたんだ?」

「申請が出てる通り、毎日一回、半日は入っていたね。この半月」

「それ以外の時間はギルドで訓練するか、宿で訓練するかだったよな。おかげで強くはなれた気がする」

「……ジーナ嬢。貴女が強大な魔術師であることは周知の事実だ。だが、それと同じく、貴方は辺境伯の孫娘。貴族位も準男爵として「あ、半月前に男爵に陞爵されたよ」……はぁ、それも先に言ってください。冬場の連絡は滞るのですから、ご自分の口で告げるべきことでしょうが。

 迷宮は、容赦なく中に入った生物を殺しに来る。魔物だけでなく罠なども用いてです。だから、迷宮内では常に緊張と集中を強いられます。だからこそ、ある程度ランクが上がり、さらに、注意事項に耳を貸す者でなければ入る許可が出ない。中の魔物を間引かなければ暴走、ひいては崩壊につながります。だから、迷宮に潜れる冒険者は貴重で、騎士は重要なのです。だから、彼らが死なないように、怪我をしないように、ギルドが制限をかけているのです。強制力はなくても、辺境伯家の統治策の基盤となるルールです。

 ほかの誰かはともかく、貴女は率先して、規範となり、守る必要がある事柄でしょうが!

 そんな立場の貴女が!毎日迷宮に!それも少人数で!

 ……いくら低階層とは言っても、危険なことには変わりないのですよ」

「わかっているよ。ただ、大丈夫だから、必要だからそうしただけさ。それはわかるだろう?

 それにしても、相変わらず姿に似合わずルールに細かいね」

「……私が細かいのではなく、皆がルーズすぎるのです。ハイランクの人間はまったく」

「ははっ耳が痛いな。無事だったから良いではないか」

「無事だったからこそ、またやらかさないように言い聞かせているのです。きちんと反省してください。

 ……さて、そろそろそこの小僧達について聞かせてもらいましょうか。こいつらを守って迷宮に入っていたんでしょう?」


 目線を向けられただけで、強い風が吹きつけるのを感じた。座っててよかった。立っていたらよろけていたに違いない。下手したら視線だけでゴブリンくらいは倒せるんじゃね?これが、強者の威圧ってやつか。

 冒険者の都として名高いリステンの冒険者ギルド長だから、見た通り高ランクの冒険者だったんだろう。引退していても、俺が十人いたって一瞬で負ける未来しか見えない。ただ、話を聞いている限りだと豪快な戦士と言うよりも、厳格な執事的な人柄みたいだけど。

 内心のビビりを表に出さないように必死な俺と違い、護衛として椅子の後ろに立つダグは涼しい顔。オーク辺りと命のやり取りをしていたこいつにはそこまで堪えないのかもな。

 えーっと、たしかギルド長のお名前は、ルバン。元A級冒険者ってことだけど、なんか聞き覚えがあるんだよな。


「こっちが、ディグ。ティグルス・リロル。先日、準騎士爵になった。

 後ろのがダグ」

「ディグって呼んでください。ご迷惑をおかけしてます」

「ダグだ」

「……はぁ。準男爵までなら辺境伯の権限で授けられますから良いんですが……大丈夫ですか?そこまでの強さはなさそうですが。

 リロルの名を与えるってことは、開拓の責任者にするのでしょう?本人はどこまで承知しているのですか?」

「お祖母様のやることだ、問題ない。それにどうせ、準の貴族位はその地方でしか認められないからな。説明は、おいおいだね」

「……話には聞いていましたが、今回の開拓はかなり力を入れるんですな」

「当たり前だろう。西部との交易拠点にもなるし、あちらの迷宮攻略の起点にもなる。将来有望な地だからな」

「こちらよりも雪が少ないと聞きますから、開拓が成功すれば人気になるでしょうな。そのころには、私は死んでいるでしょうが……わかりました。仕方ありません。開拓中もそれなりの頻度で入るつもりでしょう?低階層なら許可しましょう……ただし!安全第一ですよ!」


 ルバンギルド長は、ジーナとの会話で勝手に俺達について納得してくれた。意味わからん。が、今後も頻繁に迷宮に入ることは許可してくれた。

 迷宮には、各階層をつなぐ階段があり、そこには他の魔物と一線を画した個体が巣くっていることが多い。通称『階層ボス』。だいたいどこの迷宮でも、十階までが低階層、二十階までが中階層。小さな迷宮だと中階層にコアがあり、それを破壊すれば迷宮を壊せるし、持ち帰れば数年かけて迷宮の規模が縮小する。このリステンの近くにある迷宮のように継続して活用する場合には持ち帰り、リロル地方の川のこちら側のように邪魔と判断されれば壊されるって訳だ。ちなみに、高階層にコアがあるような大規模迷宮は少なく、有名なのは北の谷にある『奈落』、竜の住む『竜ヶ峰』。どちらも、コアのある最下層がわかっていない、大規模迷宮だ。

 今のところ俺が一緒に行けるのは第一階層のみ。階層ボスに挑戦することは二人から許されていない。時々範囲攻撃ができるボスが現れるそうで、万が一はなくても、万々が一があるためにもう少し強くなってからと納得している。

 時々ドロップする魔石、本当にたまーにしか手に入らない武器類。実は、ここの迷宮の一層にいるゴブリンの武器類は質も状態も悪く、魔石の方が高く売れる。それもあって、ゴブリンは非常に人気がない迷宮魔物なのだ。おかげで、訓練の相手には事欠かないので助かってはいるんだが。

 ある程度強くなったのと、冬が本格的に終わったから開拓に手を付けるので、いったん迷宮漬けは終わりにしようってことで今回の報告(?)になったんだけど、こんだけ話が長くなるならジーナの判断は適切だったのかも。下手したら、冬の間ずーっと何もできなかった可能性だってあった。


「ルバン。リロルの開発にはそこまで時間はかからないよ。簡単にだけど、秋のうちに向こうから道を作って、整地したから」

「……もう一度、言って貰えますか?何を、いつ、どうしたんですか?」

「西部からリロルを超えてリアンナに行く間、簡単ではあるけれど道を作った。ほら、リステンからリアンナ間の道がきれいになっただろ?」

「……確かに。冒険者からそんな話は聞いています。急にきれいな道ができていると。雪が降り始めたので端までは確認できませんでしたが、リアンナ方面だけでなく、リロルにも続いていたとは」

「リロルを囲む山を越えて西部まで続いているよ。ディグの功績さ」

「それで準騎士爵ですか。納得しました。

 詳しくは聞きませんが、短期間にそれだけの道を整備できる力があればリロルの開拓もそこまで時間はかからないでしょう。楽しみですな」

「秋には未来の村人候補がここに来る。それまでに砦と村、その間の道の整備をしておきたいんだ」

「……冗談にしか聞こえませんが、本気なのでしょうな。普通なら、万単位の人間を投入して初めてできることですが」

「ああ、もちろん整地と簡単な防壁を用意して、資材をある程度準備するだけさ。人手が必要なところは、冒険者に依頼したりするつもりだ」

「常識が死滅していないようで、安心しました」


 いや。安心しないでよ。

 どう考えても、それだって無理じゃね?……まあ、できることはやるけどさぁ。

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