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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
3章

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35/97

3-3

「ここもまっすぐで良いのか?」

「そうだね。ずっとまっすぐ。最短距離を進もう。休憩は森の手前だね」

「……暇だな。先行して森を見てきていいか?」

「遠距離攻撃してくるような魔物もいなければ、鳥系の魔物も見ないし……道から外れなければ問題ないでしょ」


 生まれ故郷から北へと向かう道――自家製――を荷馬車でパカラパカラと歩んでいると、ダグが暇だから魔物狩りをしたいと言う。それに二つ返事でジーナが了承した。えーっと。まだ村を出て二時間も経ってないぞ?

 まあ、行先の安全確保はありがたい。鳥系の魔物が出たって、投網があるし、そもそも魔術師のジーナが居れば、高レベルの魔物が集団で襲ってこなければ危険は少ない。

 どちらにせよ、今の俺は自動魔術詠唱装置なんだが。

 『穴掘り』で道|(仮)の左右から大量の土砂を集める。その土を使って『道造り』|(仮)。もちろん、両側には排水のための小水路を設置し、道が水でドロドロにならないようにしてある。

 きちんとした道だと馬車の進みが早く、それでいて振動が少ないため旅が今までの何倍も楽に感じる。馬車をゆっくりと歩かせながら魔術を連発するのは良い訓練になるんだが、ちとせわしない。

 発動までの時間を短くし、影響距離を長くする。そして、呪文化。それが今の俺に求められていること。達成したいこと。『穴掘り』はそもそも消費魔力が少ないから『道造り』になっても問題ないと思うし、俺の仕事が遅いからここまでゆっくりの歩みになってるんだから。ジーナは何も言わないが、北の地には冬が早くやってくることを考えれば、少しでも早く進めるに越したことはない。

 魔術訓練がてらの道路整備をしつつだとどうしても歩みは遅くなるが、それでも進めばいつかは目的地に着く。昼過ぎには森の近くへとたどり着いた。ジーナの指示に従って、森から一定の距離を取って広場を作る。かなり大きめだ。一度した休憩の時の広場よりも数倍大きく、大き目の商隊でも問題なく休めるサイズだ。


「作ったけど……大きすぎないか?」

「普通、作っている途中に気づかないか?」

「……『穴掘り』で掘る以外のことをするのが楽しくて、つい」

「できることが増えたら陥る状態だな。学院にも多かったなぁ……」

「……ああはなりたくないって思ってたんだがなぁ……今後気を付ける。済まない」

「こちらが頼んだんだ、気にするな。

 で、この広場だが、森を抜ける前の休憩所であり、森を抜けてきた者たちの休憩所だ。今後交易が活発化すればこの広さでも足らなくなる。

 おっ戻ってきたな」


 ダグが獲物をいくつか引っ提げて森から出てきた。角兎を両手に二羽ずつ持っている。大猟だな。数時間とは言え、狩りができたことが嬉しいらしく、満面の笑みだ。

 既に血抜きをしてあったらしく、ちゃちゃっと解体された兎は俺達の昼飯になった。村近くと違ってこちらには魔物の気配が薄く、その分獣類が多いらしい。気配を察するころには逃げ出されてると笑っていた。それでも、二羽も角兎を狩るんだからすごいよな。それに、気配だの獣や魔物の痕跡とか。ついこの間までは、そんなのできなかったんじゃなかったっけ?だから、こちらに向かってくるゴブリンやらオークと戦っていたはずなんだけど、ちゃんと学べばすぐに身につくのは羨ましい。一年頑張って、装備整えないとゴブリンとまともに戦えない俺からするとな。

 簡単ではあるけれど昼食を食べたら、すぐに森を抜けるのかと思ったら待ったがかかった。


「この馬車だと途中で動けなくなるぞ」

「だろうね。だから、道を整備するんだ」

「……いくらなんでも、俺の魔術じゃ無理だぞ。木が邪魔で道が作れないし、穴掘ったって木はどかせない」

「もちろん、君だけにさせるわけがないじゃないか。露払いは私だよ『風刃』『風刃』『風刃』」

「いきなり……へっ?」

「十五本ってところか。練り込みが足らない……いや、木が太い、北とは種類も違うし硬さが違うのかも……」


 突然の魔術三連発に驚いていると、音を立てて十数本の木が倒れていく。横でジーナがぶつぶつ何かつぶやいているけれど、そんなことも気にならないほど。つーか、あれが『風刃』の威力か?学院で見たことあるのはもっと威力が低かったんだが。魔力を大量に消費すると威力が上がるって話だけど、どれだけの魔力を込めたんだろ。そんで、どれだけの魔力があるのか。俺の知識じゃ推し量れないほどの強さをジーナは持っていると改めて認識した。

 お次は何かと思ったら、切り株周りを俺が『穴掘り』で緩め、『身体強化』をかけられたダグが、『軽身』がかかった木を広場へと運ぶ。魔物とかが寄ってこないかを『探査』で調べつつ、『風刃』で木を伐り倒す……魔術使いすぎじゃね?珍しい魔術の大盤振る舞いだ。

 属性系の『風刃』は比較的見るし、風で重さを軽減する『軽身』は、大規模な工事なんかでは時々使い手が呼ばれるってことは知っている。が、探知系や強化系は使い手が少なかったはず。……まあ、ジーナは旅の途中で滅茶苦茶使っていたが。

 なんでこれだけの力があって、俺なんかの魔術を必要とするのか。魔力消費がどうとか、応用性がどうとか、効率がどうとか言われたけれど、ここまで圧倒的な魔力があればそんなのはどうにでもなるだろうに。

 荷馬車部分を外した馬で道を作るのに邪魔になる切り株だけを抜く。根っこ周りの土はなく、太目の根っこはジーナの『風刃』で切ってあるから簡単に抜き出せる。ある程度抜けたらダグが力仕事だ。馬ですら苦労する切り株を持って歩けるってのはどういう理屈だろうか。


「そろそろ、森を抜けるんじゃないか?積まれた木が広場の半分を占拠してるぞ」

「……これで半分ってところだな。私は野営の準備をするから、ディグはでこぼこの道をきれいにしてくれ。ダグは護衛だ」

「……あの道を?どうやっても土が足らん。それに、森の中の土はふかふかし過ぎで馬車が通ればすぐに凹むぞ」

「それなら、広場の奥のあそこに煉瓦を作ったからそれを使って。広場反対側の小山も全部煉瓦にしよう。道全部に煉瓦を敷くんじゃなくて、車輪の倍の幅で二本。まずは、うちの馬車が通れれば十分だ」

「ふかふかな森土を煉瓦を敷く分だけでもどけないと脱輪して横転しかねないぞ。森土をどこか避けられる場所があるかな」

「それなら、レンガを作った跡地に入れよう。それもお願いね」


 ……仕事が増えたぞ、言わなきゃよかった。

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