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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
第2章

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27/97

2-13

「今日は、私は村長と井戸の場所に印をしてこよう。道についても決めてくるが……基本は、まっすぐに造るから。

 君には、内堀と外堀の拡張をお願いしたい。

 ダグは森で討伐をお願いしたい」

「今、内堀は幅も深さも1メートル。外堀が1メートル半だよ。それをどうするの?」

「内堀を1メートル半、外は2メートルで。それと、底は沼地の方向へ下げてね」

「本当に、沼地を使うんだな。あそこに水を流すとは」

「そのためにも、明日から少し遠征して使えるように準備しないと。ダグ、今日の討伐は、あちらの森を中心にお願いするよ」

「わかってる。それと、明日は着いていくぞ。沼地にはフロッグ系がかなりいるようだから、気を付けないとな」

「何回も往復するんだろ?簡単に道を作ろう」

「荷車も借りられたし、馬車も使おう。そうしないと手も時間も足らない。

 北の冬は来るのが早い。残念ながらあまりここに長居はできないんだ。だから、できることはやっておきたい」

「それならば、俺は討伐だけでなく、切っても問題なさそうな木の目星も付けておこう。その辺りも同行してくれる狩人ならわかるだろう。ジーナに時間ができたら、魔術で伐採してくれ」

「うちの村には木こり専門の人なんていないから、狩人のおっちゃんと村長が伐る木を決めてたはず」

「だろうな。この人数の村だと畑仕事以外の人間はそんなにいられないだろう」


 大き目の村だと木工や鍛冶、薬作りを専門にしている人もちらほらいるらしいし。ちなみに、隣村には木工を専門にしている人が居て、荷車などはそこでお願いしたって聞いている。うちの村には居ないけど、その分、どの家でもある程度のことはできる。というか、できないとやっていけない。鍛冶仕事は二つ先の村か、行商人が持ってきたのを買うのだ。それも重要な鍬の先とかを購入して、木製で消耗する柄などは自分たちで作るのだ。ま、どの家でも鉄の道具なんてほとんどないけどな。金属製品は高いのだ。小さな村じゃあそうそう買えるもんじゃなく、まぎれもなく貴重品だ。だからどの村でも行商の馬車に荷物番をつけてくれていた。お互いのためにも、万が一がないようにって。


 朝食を食べながら、なんだかんだと打ち合わせをして、俺は堀の拡張に、ダグは狩りに、ジーナは明日のためにと、それぞれの作業を行った。俺はここ一カ月ほどの旅の間にかなり『穴掘り』が上手くなった。特に、道造りをしたのがよかったんだろう。ロンダリアに居た時はゆっくり歩きながらだとなんとか『穴掘り』できていたレベルだったが、今は同じく歩きながらなら普通の速度でいたとしても、今までより広い範囲で掘れる。効果範囲も広がり、動きながらの発動にも慣れたってことだ。

 だから、外堀の半分は昼前に終わり、夕食までにいくつかの井戸と一番中心となる道を作ることはできた。

 この能力の向上は、依頼として街でやっていたころは数をこなすことを主に考えていたけれど、今は一回一回、どうやったらよりよくなるかを考えながら唱えているからかもしれない。そう思うと、ますますもっと考えて唱えるようになる。例えば井戸。途中までは周りの土を圧縮することで崩れにくくして、底の部分からは水が出てくるように圧縮しないで土を井戸の外まで掘りだす。それを後でジーナが『煉瓦作成』で数個の煉瓦に変える。間違えて落ちないように枠を作るのに使うのだ。まあ、全然数は足りていないが、それは後で。

 そんな感じて一日歩き詰めで『穴掘り』三昧。俺としては単純に訓練していた感覚だけど、村は今まで以上の防御力と水を一日で手に入れた。

 ジーナの勧めで夜は家族と過ごした。ぼんやりしていると穴に落ちかねないから井戸作りについては村の皆に特にしっかりと話があったらしく、家族にはめちゃくちゃ褒められ、妹のシルビアからも尊敬の目で見てもらえた。学院に行くと決まったころのようだ。半年前は、俺の気が引けて家族とゆっくり話ができなかった。そのときにできた溝を埋めるように、今までで一番家族と会話した夜だった。二人の兄によくやったと褒められた時には思わず涙が出たほどだ。その光景を両親がほんわかと眺めていたのが印象に残っている。


 滞在三日目。今日は内堀の予定だったけど、それ以上に村人の関心がこちらに向いているので、急遽協力してもらうことになった。だいぶ予定を早めた形だ。

 沼地活用プランである。

 本当なら、今日は沼地を活用するための整備に費やし、明日からってことだったんだが、俺の『穴掘り』技術も思ったよりも向上していたのでやることになった。まあ、森の奥と違って、沼地に近づかなければ厄介な獣や魔物に会うことが少ないってのも決め手だ。

 馬車を操るはジーナ。護衛はダグと狩人のおっちゃん。ジャルって名前なのは実は今回初めて知った。村で住んでた頃は狩人のおっちゃんで十分だったからなぁ。で、俺は歩きで、父ちゃんよりも若く畑仕事が一段落している、パロさん、ジャンさん、ケンさんの三人が荷車組としてついてきている。小さなうちの村としては最大限の協力だろうな、これ。


「……本当に、ティー坊は魔術師様になったんだなぁ」

「ばかっ。ジャン黙っとれ。本人が言ってたろうが。なれなかったって。

 ああ見えて、あいつは気にしぃだから、少しは気ぃ使え」

「でもよう、パロ。これ見りゃ俺らにとっちゃ魔術師様と変わらんぞ。歩く端から綺麗な道ができやがる。一ん日でいくつの井戸ができたと思うんだ。長老だって、レックの野郎だってそんなこたぁできねぇ」

「レックの野郎ってなぁ……あいつはあれでも努力家だぞ?昔村に来た冒険者に必死に教わって、今じゃ魔術じゃ村一番どころか、この辺りじゃ一番うめぇじゃねぇか」

「肝心の『手当』だって、擦り傷やたん瘤を治すんが精いっぱいだろうが」

「俺達にゃそれすらできねぇだろうが。ティー坊位の頃にあんだけ練習したのに」

「……それを言うなや」

「あの嬢ちゃんは本物の魔術師様なんだろ?昨日も、泥を煉瓦に変えてたぜ。すげぇなぁ」

「……そりゃそうだがよう」

「ほらほら。三人とも遅れてるぞ。荷物もないんだ早く来い」

「「「へ~い」」」


 道を作りながら歩くこと1時間で、隣村と沼地へとの分かれ道に着いた。村長以下、5人はこんなに早くと驚いていた。普通なら2時間コース。目印にしていた岩まで、今回は平坦な道で一直線に来れたからこんなに早く着いたんだ。

 ここから沼地まで遠くなく、道を均しながら行けば30分ほど。ちょっと早いが休憩するならここしかない。休憩しながらも、ジーナの勧めで隣村までの道を少しだけ作ってみる。


「ここから動かずにどこまで遠く整備できるか試してほしいんだ。できるだけ沼地に入りたくないし、ここなら練習しても安全だからな」

「『穴掘り』『穴掘り』『穴掘り』」

「……20メートルくらいだな。これはすごい」

「掘るだけならもう少し行けそうだけど……」

「試してみてくれ。その時、土をできるだけこちらに近く置いてくれ」

「なら、あっちにちょっと穴掘ってみる」


 道を作るにも休憩するにも邪魔にならない方向で、30メートルくらい遠くに穴を掘ってみよう。土は、できるだけ近くにっと。


「うーん……『穴掘り』」

「……近すぎる」


 土を被ったジーナに怒られた。理不尽じゃね?

 まあ、数回やって、30メートル先からでも、ある程度思った位置に土を寄せられるようになったんで許してもらったが。……それでも理不尽じゃね?

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