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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
第2章

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2-11

 かっぽらかっぽら。


 馬車がでこぼこ道をゆっくりと歩む。

 俺は、ジーナから御者席を奪い取ってなれない御者の真似をしながら、だんだんと近づいてくる故郷を見やる。

 つい先日まで住んでいた街からいくつもの村を回り、村の整備を無償でやりながら交易のための下準備をしてきた。少しずつできることも増えたため、街から遠ざかるにつれ設備が良くなるなんて逆転現象も起きてしまったが、その辺りの尻ぬぐいはジーナに任せることにしている。

 たった半年。

 それなのに、懐かしさと、少しばかりの気恥ずかしさが胸に飛来する。

 ジーナにもダグにも言ってないが、領主云々って話について、ここで結論を出そうと思っている。北には護衛依頼で行くつもりだが、その後について、その時に自分一人で決められるとは思っていない。まだまだガキだってことを自覚してるから。

 だから、他の村での作業は早めにきっちりと終わらせ、故郷での滞在時間を長めに一週間確保してもらった。季節は夏の終わりに近いが、収穫祭はまだまだ先だから、本当なら一月ほどいて祭りを楽しみたいところだが、北の冬は足が速い。もたもたしていると、雪の中の移動になり、死の歌声が聞こえてきてしまう。


「まだ遠いが、小さめな村だな」

「……西で一番端にあるからな。良いのか?遠回りだろ」

「いまさらだな。ここから北へ回るルートはほとんど開拓されていない。普通なら無謀だが、私たちなら比較的簡単に馬車が通る道くらい作れるさ。交易路が増えることは十分意味がある。それで恩が売れるなら言うことなしだ。

 それに、君の故郷であるだけで充分に回る価値がある」

「わりぃな」


 生まれ故郷のために、堀や水路、村内の道の整備は俺でもできる。でも、柵を強化したり、森を切り開いたりはできない。それをしたければ、余計な労力をジーナとダグに強いることになる。堀を増やした安全な土地を確保したって、一朝一夕で畑にできるわけじゃない。そのリターンが交易の拡大じゃあ、正直割に合わないと思う。特にダグには何にも利点がない。

 まあ、ダグとは半年とは言え付き合いが深く、お互いさまって言えなくもないが、ジーナはなぁ……ここで領主になるって宣言できるならすっきりするんだろうが、一生のことだ。そのためだけに決められるもんじゃない。

 ずるずるとジーナに甘えている自覚はあるが、少なくとも、その分は北の領地開発で返す予定だ。誰が領主になろうと、作った堀は変わらないのだ。それも含めた「わりぃな」だ。


「森が他の村よりも近いな。あの森は山まで続いているのか?北への道を作るなら、かなりキツイぞ」

「ああ、そっちの山じゃない。あっちの西の方の山に続いているって話だ。北は、少しずつ木が減っていく。荒野とまではいかないけど、荒れ地だな。だから、そっちに村はなくて、開拓は西に西にって進んだらしいぞ」

「……道を通して、北と人が往来するようになれば変わるさ。ここからは、できるだけ道も整備しておきたいな。雪にはまだ時間があるし、幸い荷物の大半は食料だ。ある程度は手間がかかっても問題ない。

 それにしても、山が近いのに荒野とは……川がないのか?」

「小さな川があるだけだな。ほら、あの川だ」

「本当に小さな川だな。この先に広い森があるとは思えないな」

「森に流れているのは別の川だな。こっちは荒野の手前から流れてる。北に向かって森の端っこだな。

 森の中もあるんだが近くには流れてないぞ。かなり奥にあるって話だが行ったことはない。森には獣も魔物もいる。薬草なんかも結構ある。果物や木の実が豊富。それくらいか?」

「他に近くのことで覚えているのはないか?どんなことでも良い」

「森に入れなかったガキに何期待してんだよ。えーっと、奥に行くと狂暴な魔物がいるらしい。

 ……あっちの森の手前に沼があったかな?」

「ほほう!沼か!遠いのか?」

「そこまで遠くなかったぞ」


 そんなに喜ぶことか?ビッグフロッグがいるし、時には厄介なポイズンフロッグも紛れ込んでる。この当たりじゃ珍しめの素材が手に入るらしいが、この辺りで必要とされていないから、あってもあまり価値はない。虫も多いし、汚れるので、好んで近づく冒険者も少ない。

 内心首をひねるが、ジーナの目線は俺とは違う。なんか活用法を見出したんだろう。

 迷惑だった沼が上手に利用できるならもっと村は良くなる。そう思うと、なんか嬉しい。


「森も近いし、開けた土地もある。川は遠いが、沼地がある。思っていた以上に好条件の場所だな」

「魔物も多いし、荒野もある。水は何とか確保できているが、使えない土地がある。どこが好条件なんだ?」

「生まれ故郷をそこまで貶さなくても良かろう。何よりも大事に思っているならなおさら」


 そういうのをサラッと言うのは止めてくれ。恥ずかしいし、反論しづらい。

 ……まあ、村全体で俺を魔術学院に入れてくれたし、何よりも見知った顔ばかりの村だ。懐かしいし、大切なのは違いない。正直言えば、今もうきうきしているし、ドキドキもしている。両親は、兄達は、妹達は元気だろうか?村のみんなは?今年の作付は上手くいったのだろうか?収穫祭は問題ないんだろうか。

 でも、たった半年とは言え、ここは辺境だ。魔物に滅ぼされた村だって、ないわけじゃない。いくら前回堀を大幅強化したからって、心配の種は尽きない。強力な魔物。不作。盗賊に大雨。ゴブリンどころかスライムが大量発生したって、村の存続にかかわる。

 いや、わかっている。領都ローラでも、商都ロンドリアでもそんな話は聞いてないから、みんな元気なんだろうって。でも、ふと不安に駆られるのだ。


「そこの丘を越えればすぐかな、ディグの故郷ロル村は」

「隣村から馬車で一日。その通りであれば間近だろう」

「あー、この道通ったのは前回が初めてだから確実ではないが、たぶん。旅立ちの丘がそれだろうから」

「そうか。村から出たのは学院に行くのが初めてか。こちら側から見ることはあまりないか」

「当たり前だろ。用もないのに一日かけて隣村まで行く意味がない。

 旅なんて普通は縁がないんだ」

「それよりも、今回は一週間はその村にいる予定だな。その間、森に遠征しても良いのだろう?」

「もちろんさ。できれば、村の狩人も連れて行ってほしい。干し肉をたくさん作りたいからね。期待しているよ」

「……本当に、ここから北へ抜ける道を作るつもりなのか?どれだけの時間がかかるか」

「まずは、一台の馬車が通れれば良い。北側から山が越えられることは確かめてあるから、麓までたどり着ければ問題ないさ」

「……そう願うよ」

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