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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
第2章

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2-10

「いやぁ~君もやらかすねぇ。思った以上の成果だよ」

「調子に乗ったのは否定できない」

「だが、村長は喜んでいたぞ?説明を聞けば便利だということもわかる。道もきれいになったしな」

「ジーナのアイデアからできたことだからなぁ。俺だけじゃ思いつかなかった。道端の草がなくなったのは思わぬおまけだな」

「この応用は君の手柄だね。小さな水路。考えれば考えるほど、便利だね。

 でも、できればやるまえに相談してほしかったな。少々やりすぎだろう。確かに便利そうだが」

「以前、雨水が道に溜まると困るってジーナが言ってただろう。角度付けて横に流すって話。それはそれで道のわきが水浸しだろ?だから、小さな水路を作ってみたんだが」


 ほんの僅か角度をつけた道。雨水が流れる先に作られた小さな水路。そのまま緩やかに村を囲む水路へと流れるように設置してある。これはなかなか良い物を考え付いたと自画自賛してるんだが、ジーナによるとちょっとやりすぎだってさ。メインの道を整備し、家に戻りがてら水路を作って報告したらそう言われたわけだ。便利になったなら良いじゃんね?

 疑問に思って首をひねっていたら、早めの夕食を用意しながら教えてくれた。なお、明日早朝に出発だから夕食が少々早めである。


「スープが熱いから気をつけて。

 ……うん。上出来。

 さて、ディグ。さっきも言ったけれど、君の作った小水路は中々良いね。もう少し改良したらここの領都でも採用されると思うよ。私たちの領地には必ず付けたいね」

「評価は上々だね。なら良いだろう?」

「だから困るんだ。まあ、まだ改良点があるから良いんだが、普通は試作だとしても計画立てて行わないと、思わぬ影響を及ぼすこともあるからね。それに、領都が最新でないと気に入らないという考えの人もかなりいる。その辺りもある程度は配慮しないと」

「面倒なことだな。やっぱり領主には「それに。他人の土地に勝手に物を作るのは良い事ではないよ」そりゃそうだ。俺が悪かった」

「新しいことを考え付いたら最初に相談してほしい。

 今回の件はこの村の村長も喜んでいたし、こちらが勝手にやったことだから特に利益を求めなかったことで、次回以降の取引に向けて好印象を与えることができたので、かえって良かったけれどね」

「……交渉の材料にもなるのか」

「それと、こう言ってはこの村に悪いけれど、君の出身村に行く前の練習になっただろうから、差し引きプラスだよ。よくやったね」

「結局ほめるのかよ。お小言貰うのかと思っていたよ」

「いや、あれは便利だろう。道にわずかに角度をつけることを考えたジーナはさすがだが、小水路を作ったディグもすごいと思うぞ。

 精密な魔術だな。相当訓練しないと難しいくらいに細かい作業に思える」

「いやさ、空気を掘るって感覚が中々難しくてさ。ほんの数ミリしかできないんだよ。だから、地面ぎりぎりで掘ると精密に制御しているように見えるんだ。実際は、あれだけしか効果がないってだけさ。道の端っこを固めるだけだからそれで十分だったけど。

 ま、そっちが無理だったら最初の掘り起こしを少し広めにすればできるんだけどな。左右から固めるのに空気じゃなくて土を掘るだけだし。今の俺の『穴掘り』なら10センチの穴が掘れるからな」

「お前の『穴掘り』の精密性も、かなりのものだな。門外漢なので何とも言えんが、聞いたことがある魔術師の力量をはるかに超えていると俺は思う」

「そうだね。威力のある魔術は使えなくても、『穴掘り』に関しては類を見ないほどの使いこなしだよ。素晴らしいね」

「ありがとう。

 それはそうとダグ。お前の人気ぶりもすごかったな。会う人会う人みんなが声かけてきたぞ」

「昨日、ゴブリンを倒したからだろうな。今日の訓練に参加する村人が多かったし、お前らと違って会話した数も多い」

「……俺も倒した……いや、俺が倒したんだが」

「それはそうだが、私が聞いた限りでもダグがいてこそだろう?狩人が村長に報告しただろうが、その内容も、村人への伝わり方もわからないけれど、聞けば聞くほど彼の強さが引き立つ話だ」

「……否定できない」

「それもあるが、村人にとって魔術師は気軽に接しにくい。冒険者ならまだ身近だからな。剣士である俺の方が声をかけやすかったんだろう」

「俺も冒険者なんだが」

「見た目だけではそれはわからないからな。

 お前ら二人とも忙しそうにしていたというのも理由だろうが」

「その分君が積極的に交流してもらえると助かるよ。どうしても、護衛の冒険者ですら小さな村では忌避されがちだし、私たちはよそ者だからね。付き合いを継続するためにも顔見知りを増やすのは重要なのさ」

「ジーナは本当に、色々と考えているんだな」

「当たり前だろう。小さくとも交易を任されたのだ、それなりに頭を使うさ。

 あ、それはそれとして、次の村でも同じように整備していこうか。元手はかかっていないから少しぐらいやりすぎても問題ない。領主への貸しにできる。村の整備については話もできているから、こちらも問題ない」

「……良いのか?」

「ああ。君の生まれ故郷だけに色々すると、他の村からのやっかみがありそうだからね。途中の村でやるのは練習だと思えば一石二鳥ではないかな?」


 ちょっとばかしジーナの笑顔が黒い。まあ、俺も似たようなことを考えていたから異議は唱えないけどな。

 食後、片付けと明日の用意をしながら、工夫点を聞いてみる。……ほほぅ、確かに、それができると助かるな。ただ、大雨が降ったら……。

 こんなのはどうだろうか?

 そんな話をしていたら、思いのほかダグが積極的だった。故郷では畑仕事をしていたこともあるみたいだ。こいつも経歴不詳な奴だよな。まあ、冒険者なんてそんなものか。

 話し込んでついつい夜更かししそうになったが、明日の出発も早い。道行、皆で相談することにして就寝。

 あと二つの村を通り抜ければ半年ぶりの故郷だ。どちらの村でも整備と行商、作付けや交易の相談などもあるから数日は必要となるので、着くのは来週だろうが。

 前回は念入りに堀を整備したんだけど、今回はどうかな?道や小水路は当然として、俺には他に何ができるだろうか。

 ……もしかしたら、万が一、ほんの少しの可能性として、俺が北で領主にでもなれば気軽に里帰りなんてできやしない。家族はもとより、世話になった村のみんなのために、為になることをしてあげたい。それが、俺にできる恩返しだ。

 そんなことを考えているうちに、気が付けば眠気が這い寄ってきた。心地よいいざないに身を任せ……おやすみなさい。

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