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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
第2章

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2-9

 新たに与えられた課題は、道を均す。馬車が通ったり、雨が降って土が流れたり、草が生えたりしてでこぼこになる土の道を平らにすることだ。

 おいおい。だから俺の魔術は『穴掘り』だって……とは言えない。ジーナにもっと先の可能性を示唆されたばかりだ。今回のこれも、応用次第ではできるとあいつは考えているから、俺に提案してきた。

 だから、俺はやりたい。

 俺ならできる。そう思うやつがいるんだから、できるんだ。

 平らにする。それはとても簡単だ。いつものように穴を掘れば良い。基本的に底は平らになる。こいつは、土であれば誰がやっても同じ。底を斜めにできるのは俺くらいだがな!石やら岩なら硬さによってちゃんと掘れないこともあるが……今回は道なんだから関係ないな。

 ……ただ、どうしても深くなる。なにせ『穴掘り』だ。掘らなきゃいけない。俺がやったことがある、一番浅いのは5センチ。先日試したばかりだから今はこれ以上浅くは難しい。

 そもそも、道はただでさえ雨でも降ると土が流れ、時間が経つと凹んでいく。土を盛って凹みを埋めるくらいなんだから、これ以上高さが低くなると色々と不便だろう。ジーナだって雨水がたまると大変だと言っていたし、俺もそう思う。そうなると、できるだけ掘らないで固めるわけだ。まあ、土を盛ってからやればへこみ自体は最小に抑えられるんだが。


「前なら、ここで諦めていたな。土を盛ってできるだけ浅く掘って固める。それしか考えられなかった。

 でも、今の俺は違う!」

「何が違うんだ?」

「……急に入ってくるな、ダグ」

「さっきからここにいたぞ?それに、突然お前が喋り出したんだろうが」

「そう言うことじゃ……いや、悪かったな」

「かまわん。

 で、何が違うんだ?ジーナから何か依頼されてたみたいだが」

「ああ。道を平らに均してほしいとさ。ほんの少し角度がついていると水はけがよくなるから、それも言われたな。

 今までならただ掘ることしかできなかった俺だけど、今はちょっと違うってことだ」

「どちらにせよ、掘るんだろう?」

「それはそうさ。『穴掘り』だからな。

 ただ、今回は空気を掘るんだ」


 ダグの顔に、お前は何を言ってるんだと書かれていた。

 わかる。わかるぞ、その気持ち。俺も、ジーナに練魔のやり方で提案されたときには同じように思ったもんさ。……まあ、つい、昨日のことだが。それが、今じゃ言う方の立場だからな。

 だが、魔術としての『穴掘り』を改めて考えると、実に、理に適っている。……気がする。

 『穴掘り』は土に穴を掘る、土系の基礎魔術である。だが、よくよく考えてみると、土系ではない、植物系の魔術でないと操作できない草が生えていても、穴は掘れる。水路の中でだって掘れるし、やったことはないが火が燃えているところでも穴は掘れるだろう。ただ、太い木の根や大きな岩などは無理だが、それは属性と言うよりも、そもそもの技量不足が問題だ。なぜなら、土系の岩が掘れないし、通常なら掘れない石畳を俺なら少し掘れるからだ。

 植物系や岩系は、土からの派生だからできるのかとも思ったが、それなら同じ基礎属性の水や火の中でできる理由にならない。一瞬ではあるけれど、水に穴が開くし……あ、そもそも何もない所にだって空気がある。そこに影響を与えるんだから単純に土オンリーってことじゃないだろう。そう考えれば、ジーナの言う『穴掘り』を練魔に応用する方策が見えてくるのだ。

 まあ、まだまだ成功はしていないが、この考えを突き詰めれば、応用先は山ほどある。

 今回なら、普通は10センチも凹んでしまう道を、ほとんど凹ませずに均せる。それだけじゃない。今思いついたことができるなら……。

 あ、あの小さな土手でやってみるか。草が生い茂っている小さな空間と小道の間にある土手に向けて魔術を使う。


「『穴掘り』」

「……土手を掘り返してどうする」

「『穴掘り』『穴掘り』」

「……ん?何か変わったか?」

「『穴掘り』

 ……よし!成功だ!」

「今度はちゃんと平らだな。何をしたんだ?」


 小山の形になっていた土手が、レンガでも埋めたような四角い土手になっていた。大成功だ。

 俺は、ちょっとばかし得意げにダグに解説をした。


「ほら、あれは平らになっているだろ?あれを道にするんだ。そうすると、奇麗な平らになる」

「……一度掘り起こしたから均一に硬いと言いたいのか?」

「そうだ。いつも人が通っている部分だけが踏み固められた道を軽くほぐすことで、『穴掘り』で固めた際に強度が偏らない」

「固めた時の強度か。気にしたことがなかったな。

 そうすると、良い道になるのか?」

「……知らん。だが、硬い所がばらけていると『穴掘り』しづらいからな。おかげで、簡単に固められた」

「……ふむ。なら、その前に2回魔術を使ったのはどういうことだ?」

「ああ、左右を固めたんだ。土の道だと、単純に上だけ硬くなったって、押されて横から土がこぼれるようになるだろ?大きな街みたいに石畳なら問題ないんだけど」

「たしか、穴掘りした付近だけ土が圧縮されるんだったな。それなら、普通にやったら踏み固められた道と大差ないな」

「だろ?だから先に両側からやってみたんだが、思ったよりうまくいった。触ってみろよ、硬くて、ちっとやそっとじゃ崩れないぜ」

「おおっ。これはすごいな。ギルドの訓練場よりも硬いんじゃないか?」

「だろ?

 これなら道としては十分だろうし、今の俺ならかなり長い距離だって大丈夫さ」

「そいつはすごいな。さすがディグだ」


 ドヤ顔の俺を、ダグは素直に賞賛してくれた。おかげで逆に気恥ずかしくなってしまったので、本来やる予定だった道の方へと体を向かせた。

 一連の『穴掘り』――命名『道整備』――でできるのは、感覚として幅1メートルの長さ3メートル。時間は一回1分もかからない。

 うーん。今の魔力量は全体の半分よりちょっとあるくらい。昼飯の間に少し回復したからな。これだけなら、暗くなる前どころか夕方には魔力切れ近くになっちゃうな。いくら『穴掘り』の魔力消費が少なくたって、何十回も唱えたらそうなるのは当然だな。でも、それだけあれば、村の真ん中の大通りは問題なくきれいにできそうだ。

 もう一つ考えていることもあるから、試してみよう。

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