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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
第1章

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 結局、そろそろ旅立っても良いと考えていたダグが承知し、結論を先延ばしで構わないってんで、得られる利益に目がくらんだ俺がしぶしぶ了承したんで、まずは北へと向かうことになった。護衛依頼だけを受けるんだ。

 っても、そんなに簡単に行けるわけじゃない。旅の用意なんてなんもしていねぇからまずはそっから。ダグに手伝ってもらって必要なもんを買い込んだ。

 厚手の服にマント、野営の道具。食器に鉄串、火打石。水を入れる革袋も忘れちゃなんねぇ。まあ、生活魔術があっても魔力を節約した方が良い場合もあるからな。保存食の類は旅に出る前日に買い込むことにして、値段と売り場、運べそうな量を確認だけしておいた。この辺りは、森で野営を経験しているダグに本当に世話んなった。

 ただ……武器屋と防具屋にも付き合って貰ったのは間違いだったなぁ。


「これじゃあ、二週間もこの宿にだって泊まれねぇ。高ぇ買いもんだった」

「なんだ。後悔しているのか?あれだけの物はそうそう手に入らんぞ?」

「そりゃそうだがよぉ」

「ビッグセンチビートの殻を使った足甲。しかも、裏打ちはデザートウルフ。軽いのに鉄並みの防御力を誇り、蒸れないのに伸縮性が高くて動きの邪魔をせず、金物臭さがないから気づかれにくい。あの品は買って損はない」

「理屈はわかるが」

「トンカチビートルの頭殻を使った手甲も掘り出し物だぞ?こちらは鉄の手甲程度には重いが、それよりも防御力に優れている。ホーンバイパーの端切れが余っていたのは僥倖だな」

「滑らないし、柔軟性も十分。手触りがブヨブヨしてるのが気になるっちゃぁ気になるが」

「その皮だけでもそれなりに防御力がある。下手な剣なら刺さらんよ」

「……靴も2足買ったから、革鎧を買い替える金は残らんかったな」

「最初は手足の防具を揃えるべきだ。旅に出るなら靴は必須だ。修理できる技術がなく資金に余裕があるなら予備もあった方が良い。鎧については、身体はまだ大きくなるだろうからな。残った金では大した物も買えない。どうせなら、金が入る北で買うべきだろう。

 生存率を高めるためには、手足の怪我をできるだけ防ぐのが効率的だ」

「……飢え死にしかけてた男の台詞かねぇ。

 まあ、意味は理解したが」


 店でダグに馬鹿丁寧に解説されたおかげで、買うことには異存はねぇ。それどころか、ちゃんと納得してる。森ん中じゃ、足を狙う蛇と、毒草なんかで手足を傷付けないように気を付けろって村で言われてたことも思い出した。まあ、本体がぼろ目の革鎧だから見た目あれだが。

 ……まあ、それで、貯めといた金の半分が吹っ飛んだのは、わかっちゃいても厳しい。

 残りの支出先は、ほぼ武器だ。道具類は魔道具でも買わなきゃそこまでの金額にゃならん。

 ダグに選んでもらった剣と短剣を腰に。今まで使っていた剣は、予備として荷物の中に入れる。古い短剣は料理なんかにも使うナイフとして……まあ、元々大振りのナイフだったんだが。


「……ああ、風鉄性の剣は使いやすいだろう?軽い分一撃の威力には欠けるが、重い武器はもっと力を付けてからだな」

「これまでの剣よりも一回り大きいのに軽い。使いやすいのは確かだな。そこんところに不満はねぇ。

 サブ武器として使う短剣が同じ値段なのは驚きだが」

「火銀の短剣など、買おうと思っても売っていないぞ?」

「需要がねぇからだろ?ほのかに温かい剣なんざ」

「……寒い北へ行くのであれば、無駄にならん。それに、鋭さは鉄剣の比ではない。その分、脆さはあるが」

「イザって時に刺突するのが使い方だからな。もっと良いのが手に入ったら、解体用に回したって良い」

「北の地であれば、倍の値段で売れそうではあるな。準備はこれくらいで十分だろう」

「テントはダグのを共用ってことで良いんだよな?わりぃな。調理器具も大きいのはジーナが持ってるってこったし、防寒着も買った」

「毛服と毛布は大き目の革袋に入れて、やはり、ジーナの馬車に乗せてもらう。俺達は歩くんだ。荷物くらいは運んでもらわないと。それを含めての契約だ」

「……依頼料は良かったんだがな。

 それにしても、旅ってのは不安だねぇ」

「まあ、相場通りとは言え、俺達のランクは低い。その分は、実力で返せば良い。その後の話は、お前次第だ」

「……あの話、冗談じゃねぇよな?」

「まあ、本気だろうな。

 実際、当たり前の話だ」

「はぁ?」

「村を開拓すれば、代表者は村長になる。複数の村を作り、中心となる町を作れれば、町長となる。それを領主と言えば、領主だろうさ」

「……そう言われりゃその通りか……?」

「だが、ディグ。お前がなる必要はあるか?普通に考えたらジーナが領主だろうが……いや、辺境伯の直系。その程度の領主には収まらんか?」

「つまりあれか?いくつかそんな感じで開拓して、それをジーナがまとめるってことか?」

「その可能性が一番高いな。お前がそれを断ったとしても、堀や水路が人足を必要とせずにできるのであれば十分連れていく価値があると踏んだんだろう。俺の知る魔術師には、お前みたいに器用な使い方をしている者はいないしな」

「領主。お偉いさんだねぇ。そうじゃなくても、食いっぱぐれない、か。

 そんな未来になんのかねぇ」

「夢はあるが、夢物語かもな。

 いずれにせよ、お前次第だ」

「旅の間に考えるかぁ……普通の農民だったんだがなぁ、俺ぁ。

 でも、成り上がりってのを選択肢に入れられるってことかぁ……」


 出発までには、まだまだやることがある。

 特に、俺ぁ冒険者ギルドに便宜を図ってもらってドブ掃除をまとめて受けてるんだ。そこんとこをきちんと話付けないと、まあトラブルになるわな。その話は昨日ギルドにしたんだが、たぶん、数日、急ぎで掃除をお願いするって聞いてる。俺がいるうちに一通りやっときたいんだろう。気持ちはわかるし、散財した金の補充にもな……って、それがなきゃ保存食すらまともに買えねえわ。ダグはその金も含めて準備計画してたみたいだが、それなら俺に最初に言えよ!めちゃくちゃ焦った。

 まだ数日は向こうに予定があるって話なんで、金稼ぎをするかね。ついでに『穴掘り』の練習になるし。『穴掘り』を使えば使うほど、まだまだ先があるって思えんだよな。これから旅の最中にジーナから魔術論とか色んな事を教えてもらえる手はずになってる。そうなりゃ、もっと上手く『穴掘り』が使えるようになるはずだ!

 同じ効果を出すのに少しでも少ない魔力でできないか。もっと広く、深く、硬く、複雑な形に。空堀と水路、落とし穴以外に使い道はないか。考えることはたくさんある。

 いつの日か、俺にしかできない『穴掘り』で……。

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