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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
第1章

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1-12

「俺達が若手にしては有望だとしても、そのためにわざわざここまで来るのは狂気の沙汰だな。ましてや、将来有望な魔術師が」

「ははっ。有望などではないよ。うちでは一番下さ」

「……ふむ」

「難しい話は後にしてくれ。俺ぁいくら聞いてもわかんねぇから。

 それよりも、依頼は護衛だけか?」

「まずは、と言っただろう?最初は北の領都リアンナが目的地さ。その後は、開拓村までの護衛。

 そして……」

「「……そして?」」

「一緒に村を開拓してほしいんだ」

「「はぁ?」」


 さっきまでも変なことを言ってたジーナだったが、まあ、奇想天外な発言を放ちやがった。はぁ?俺が開拓?思わずダグと顔を見合わせちまった。あいつの顔にも呆れたような疑問の表情が載っている。俺も同じだろうな。

 目の前には、軽く肩をすくめてスープに手を伸ばす魔術師の姿が。平和そうに味の論評なんかしてやがるが、俺らの反応を楽しんでんな。こっちに向けられる目が笑ってる。

 驚きで乱れた呼吸をなんとか落ち着けて、質問するために口を開く。


「俺ぁ開拓なんてやるつもりないぜ?それに、大して役にゃ立たねぇだろ。何をどう考えたらそんな話になんだ?」

「俺もだ。修行にならん」

「あちらの開拓を、こちらと同じように考えてもらっては困るな。北部はまだまだ未開の地が多い。迷宮も魔獣の数も国で一番だ。開拓初期など、寝る間がないほどひっきりなしに襲来がある。修行相手には事欠かないさ。いくらでも実践できる。

 それに、ディグ!認識が甘い!君の『穴掘り』がどれだけすごいか語るには時間が足りないが……少なくとも、君の魔術であれば、広域に空堀を掘ることも、井戸も、水路も作れる。村を作るにあたって、それがどれだけすごいかは言うまでもないだろう?」

「そりゃぁ……」


 借金返済のために村やら町を回って堀を深くしたり、水路を広げた時のことを思い出した。めちゃくちゃ感謝されたし、提供された飯なんかも豪華だった。村にいた時にゃ幼くて手作業でやった記憶がねぇからどれだけ違うかは実感わかねぇが、ここでの堀掃除を考えりゃ何十倍もの効率だったんだよな。

 村の開拓時代を知ってんのは、長老くれぇだったかな?グダグダと話が長ぇんで、あんまり聞いたこたぁ覚えてねぇ。が、簡単でも家を建てて柵を作ったときにゃ、初めてまともに眠れたって言ってたなぁ。あと、水の確保にゃ苦労したってのも。

 そう考えりゃ、早々に空堀や井戸ができんなら開拓の成功率は上がるか。でも、俺ぁ井戸掘ったこたぁねぇぞ?


「井戸も空堀も水路も、専門の者が調べて位置も決める。君はただ掘るだけだ。まあ、時間があれば学んでもらえると助かるけどね」

「教えてもらえんのか?専門知識なんて、金にゃ変えられねぇ価値があんぞ?」

「それくらいは報酬に入れられるさ。他に学びたいことがあればできるだけ手配しよう。

 開拓だって、ずっとそこでと言う訳じゃない。いくつかの村を作って、さらに、中心となる町を作る」

「はぁ。壮大な計画だな」

「で、そこの領主に君がなる」

「はぁ。誇大な妄想だな」

「真面目に聞いてくれ!」

「真面目に話せや!誰が信じんだ。んな夢物語」

「……ダグ。君からも何か言ってくれ」

「……そこで俺に投げるな。

 まあいい。ディグ」

「なんだよ。お前も、こんなバカげた話を信じんのか?」

「お前の目の前にいるのは魔術師だ。それはわかるな?」

「ったりめぇよ。あんだけ容易く『ヒール』ができる人間が魔術師でないわきゃねぇだろ。これでも学院に行ってたんだぜ」

「ならば、まともな魔術師がどれだけのことができるかわかるだろう?あやつは、その中でも優秀なはずだ。

 北の魔女。

 そう言えばわかるか?」

「……北で貴族になったバケモンだろ?こいつな訳ねぇだろうが。どんだけ昔の話だと思ってる」

「その力で平民から北の辺境伯にまでなった立志伝中の女傑。北の魔女、『渇き』のマティー。その身内だろうな」

「……おばあ様だから、あまり化け物呼ばわりは止めてほしいな。慕われてもいる。北の魔女の呼び名も、ほとんどの者は気にしないが、中には激昂する者も居る。気を付けてほしいね」

「孫か。優秀な後継者がいるとは聞いていたが……」

「それは妹だね。私は『乾燥』がそれほど得意ではなくてね。後継者足りえないのさ」

「……それで開拓地の領主か……嘘ではないだろうが……何故、今話した?」

「駆け引きが苦手でね。どうにも面倒に感じるんだ。

 それに、君たちには先に話した方が良い結果になると思ったんだよ。長い付き合いになるんだ。嘘もつきたくない」


 話にゃ現実味がねぇが、まあ真面目な奴だな。うーん。ダグじゃないが今話して大丈夫かって気にもなるが、嘘ついて連れていかれたら、その先で協力するかって言われりゃ……まあ、やんねぇわな。

 開拓だろ?村の生活よりも大変だって話だし。

 まあ、開拓時に比べりゃよくなったらしいが、余裕のある生活はしてなかったな。俺が領都の魔術学院に行くってんで、村をあげて応援してくれたんだが、逆を言えば、村全体でやっと一人送り込めるレベルだ。もちろん、なんとか送れるだけで、向こうじゃ生活できねぇ。だから、授業料も生活費も領主様からの借金だったし、その返却に1年かかって今がある。

 きちんと成り立ってる村でそうだぜ?開拓村なら生活するのだって厳しい。だから、十年は税がかかんねぇって話だし。

 それを聞いてっからあれだが、ジーナが言うには、汎用性のある魔術師と、村の守りを固める空堀に井戸類があれば、初期の苦労が十分の一以下になる。下手したら、三年目から百人が生きていくのに十分な畑ができるってんだからすげぇな。村の人数が百を超えるのは十年程度じゃ難しいって聞いてんだけど。


「人の手配はできている。だから、君らにお願いしたいのは本当に開拓だけなんだ。

 すぐに回答が欲しいなんて贅沢は言わないよ。道々説得するつもりだから。

 北へ行く際にこの辺りの村をいくつも回っていくんだ。その間に色々と話し合おう」

「本気で言ってんのか?」

「冗談で言える話か?

 領主としての教育とまではいかないが、私が知っていることはどんどん教えよう。たとえ領主にならなくとも、知識はあっても損はしないぞ」

「そう言われりゃそうだが……」

「護衛依頼の報酬は、相場と同じで頼む。日当銀貨1枚。もちろん、食事や飲み物はこちらで用意するし、村での宿も手配する場合の相場通りの金額さ」

「ふむ。西から直接に北へ向かうとのことだが」

「ああ。村を回って穀物類の買い付けや、堀の整備などをする。交易の際は護衛はいらないよ。ダグは森で狩りをしてても問題ないさ。

 襲撃を含め、倒した敵、狩った獣はきちんと買い取るよ」

「……」

「北部について袂を分かつなら、王都へ向かう商隊に紹介するよ。

 で、どうだい?」

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