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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
第1章

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1-11

 護衛対象はもちろんこの私をだ、ってウインクしながら言われてもな。ただ余計に胡散臭いだけだ。それに、Dランク間近のダグならまだしも、俺が護衛依頼?ランクはまだFだぞ?受けようにも受けられねぇだろ。ありゃEランクからだ。

 パーティー組んだって、実績がなけりゃ護衛依頼は受けられねぇ。下手な依頼を通したら、ギルドの責任が問われっからな。そんな無理は通さねぇ。なにせ、護衛依頼をするなんて、依頼者がかなりの金やら何やらを持ってるってこったし。

 ますます胡散臭ぇって顔で見ていたら、ダグが頷きながら口を開いた。


「個人依頼か。

 こんな状況じゃ、あまり褒められたもんじゃない。怪しんでくれと叫ぶ方がまだましだな」

「まあそう言わないでくれ。確かに怪しいのは自覚している。

 冒険者ギルドも商人ギルドも通さない個人依頼。直接契約するのだから、普通なら、お互いにある程度の信頼関係が築けてこそのものだ。しかし、こちらにはそれだけの時間が惜しい。なので、事前に君たちを調べたうえで、直接見て、話をして、依頼することを決めたんだ」

「……そのために魔術師がはるばる旅をしてか?」

「そうだ。

 うちには必要なことだからな。行商を兼ねて、ちょうどこちらに向かう冒険者を護衛として雇ってね」

「行商?」

「ああ行商さ。北はいつでも物資が十分とは言えないからね。交易の機会は逃したくない。

 北部は雪深い山が多いが、その分、他の地域にない物もたくさんある。日持ちするものを中心に運べば、三人分の旅費くらいは簡単に稼げる。ここの費用もそうやって出しているのさ」

「……道楽だな。それに危険すぎる」

「岩塩。宝石。武器防具に希少鉱石。そんな物を運んでいれば護衛を山ほど付けても危ないが、その辺りは私でも手が出せないから問題ないさ。運んだって、売り先が限定されすぎてて動かしづらいし。

 でも私が持ってきたものにそんな問題はない。あちらでは安いスノー系の毛皮もこちらでは安定した人気があるし、素材も消耗品もそうだ。高値は付かないが利益はそれなりさ」

「そしてこちらでは、こちらでしか手に入らない物を買っていくわけだ」

「いやいや、それはしないよ。そんな物を買い集めたら大商いになるからね。まずは海塩と雑貨、鉄器類。北へ向かう際に通る村々で穀物と物々交換さ」

「村にとっちゃそいつぁは助かるが、利益は少ねぇぞ?自慢じゃないが、辺境の村なんて、自分たちで食ってくのに精いっぱいだ。塩も鉄器も必要だが、大金は出せねぇ」

「ははっ。わかってるわかってる。その通りさ。

 でも、こっちはむやみやたらに利益を求めているわけじゃないからね。やるべきことだからやっているのさ」

「けっ。裕福な奴は言うことが違うね」

「ふむ。生活が懸かっていないから、その分こうやって贅沢ができている。そこは否定しないよ」

「行程は?」

「来るときは王都経由で2カ月だったけど、行くときは直接向かうつもりだから、3カ月かな?。雪が降る前には帰りたいね」

「時間かかんなぁ……」

「大分遠回りでゆっくりだな。

 普通なら、王都経由で1カ月、直接なら3週間ほどのはずだが?」

「行商しながらだからね。どうしても、時間がかかるのさ。それに、考えがあるんだ」


 北部は、森の恵みは多いそうだが、どうしても穀物の生産量が少ない。平らな土地が少ねぇから大きな畑が難しいんだな。だから、外に出た際は穀物類を買い集めて運んでいるらしい。本当は温熱系の魔道具なんかを買い集めたいみたいだが、ここらで作られるもんはそれなりに高い。消耗品にそこまでの金は出せない。逆に、あっちでは素材の関係で寒冷系の消耗魔道具が作りやすいんで、安く買ってこっちで売り払ったみてぇだ。

 お役目だと笑っていたが、はぁ、マジで良い所のお嬢かよ。嫌味にも動じねぇし。まあ、そりゃダグもだが。

 護衛が居ないのが変だと思えるくらいだが、魔術師ってことは下手な護衛よりも強いわけだ。なら、わざわざ偉い人が居ますって宣伝する形の護衛兵よりも、それなりの強さの冒険者と一緒に商隊に紛れようって方針かよ。

 でも、こっから先は交流の多い王都方面じゃなく、山越えを含んだ直接北に向かうルート。さらに言えば、西も北も辺境の外れを通るルートだ。盗賊なんかよりも魔獣を気にする道行になる。

 低ランクと一緒に?そんなところに食い物持って行くのか?自殺行為だろ?


「……目的が見えん。ただ北へ食料を運ぶ目的なら、東の方がよほど楽だろう」

「大穀物平原があるし、街道は通っているし、いたせりつくせりだね。まあ、そのおかげで北部は発展したよ。毎年の餓死者もかなり減った。でも、あちらとばかり繋がりが強くなっても困るんだ。西でしか得られない物もたくさんある。

 それに、東に君らはいないだろう?」

「そう、そこだ!」

「どこだ?」

「……はぁ。

 ディグは、なぜ、俺達なのかを疑問に思っているんだろう。俺も同じだ。俺達程度の強さを持つ者は、王都なら掃いて捨てるほどいるレベルだ。わざわざ時間をかけてここまできて、護衛を依頼する必要はない」

「……いや、いないだろ。オーク相手にソロで戦う低ランク冒険者も、使える魔法は限られていてもそれに精通している低ランク魔術使いも。

 君たちは自分に対する評価が低いな」

「あんたが高すぎだろ。『穴掘り』しか使えねぇガキと、剣術馬鹿だぞ?オークを単騎で倒せるダグはまだしも、俺なんかまだゴブリンすら倒してねぇよ」

「君は、魔術の有用性をきちんと理解していないな。

 『穴掘り』の魔術どころか、生活魔術を1つですら使えるのは王都ですら十に一人と言われている。君の村には何人いた?」

「あー……司祭様含めて3人か」

「大きめの村でも十人いれば良い方だ。適性がなくても魔力が大きければ使えるようになるけれど、習得にはどうしても時間がかかる。それに、教えられる人がどれだけいることか。

 だから、日々の生活に忙しい辺境に行くにしたがって、生活魔術すら使える人が少なくなる。たとえ一つでも魔術が使える人間は、貴重なんだよ」

「……そう言われると、嬉しいねぇ」

「君もだ、ダグ。

 ソロでオークを狩れるEクラスがどれだけいることか。ましてや、まともに剣技を教えられる冒険者など、西部全域でも両手で余るに違いない」

「認識の違いだな。きちんと教えられるほどに俺は修めていない」

「謙虚も過ぎると嫌味になるよ」

「「お前もな」」

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