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穴掘り少年と乾燥少女  作者: ネルシュ
第1章

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 この街にもこんな店があったんだな。個室があって中が見えねぇ、お貴族様なんかが入るような店。そもそも看板も出てなけりゃ、入り口も狭い。つーか、なんでこんなでっかい家がある地域の奥に店があんだか。

 建物の造りだって違う。金かかってんなぁ。

 俺が生まれ育った村は、こっちでは掘っ立て小屋と言われるレベルの木の家だった。冬場の隙間風は寒かったが、まあ、どこも同じだったからそんなに気にしたこたぁなかった。でも、ここのような大きな街じゃなくとも、村の倍以上ある町なら、中心となる建物は石造りだった。ここの街も中心に向かうにつれて石が使われるようになっていく。貴族様のお屋敷なんて全部が石だって話だ。門と塀くらいしかまともに見たこたぁねぇけど。

 石は重いから下の方に使われるんだが、飯処だからかお偉いさん相手の店だからか、なんか奇麗に並んで使われてる。まるで模様のようだ。木の部分だってつやつやしていて、油でも塗ったみたいにキラキラしてやがる。

 入るのに躊躇する雰囲気の店だが、間違いなく飯を食うとこだ。美味そうな匂いが漂ってて、思わず唾をのみ込んじまった。いつもいってる屋台だって良い匂いしてるんだが、なんか違う。……そうだな。村で年1回くらいしか嗅げない甘い匂い。嗅いだことのない鼻の奥を刺激する匂い。まあ、値段は聞きたくねぇな。奢りじゃなけりゃ近寄りたくねぇ。

 なんの気負いもなく中へと進むジーナと、いつもと変わらないダグの後に続いたが、こんなかで一番怪しいのは俺だよなって自分で思うくらいにはギクシャクした動きになってる。……はぁ。今からこんなんで、俺飯の味わかるのかよ。

 中に入って見りゃあ酒も出してるみてぇだけど、なんつーかお上品に飲んでんなぁ。正直言って、居心地が悪い。場違い感半端ねぇ。正直、旨そうだって思うよりも、高そうだと感じちまう。ここで飯を喰うのか?思いっきり注目されてっぞ?

 俺らはここじゃないみたいで、店の中のさらに奥に通された。広めの個室だな。……おっ、裏口もついて……なんで、裏に馬車が止められるような広ぇ空間があんだ?あ、お忍びで来れるように?……はぁそぉですか。


「すまんが、話は料理が全て来てからだ。あまり聞かれたくない」

「ずいぶん時間をかけるんだな。こんな高級料理店ならコースで2時間はかかるだろう」

「はははっ。そこもすまんが、料理はまとめて出してもらうことになってる。食事は話をしながらだ。話を後にすると夜遅くなってしまうからな。

 本当ならマナー通りおいしく食べたいんだが、今回は話がメインだからそうしてもらったんだ」

「……それは助かる。マナーがどうとか言われる場所だとディグは何を食べたかわからないだろうからな」

「さすがにわかるわ!そこまで馬鹿にすんない」


 学院に居た時に、何回か個室がある店に入る羽目になったから高級料理の味は知ってはいるし、そこまで緊張しねぇよ。……あ?最初?んなもん、覚えてっこねぇだろうが。普通の村人が人生で一回でも行くような場所じゃねぇよ。

 まあ、飯がまとめて来るってんで、疑問が解消した。たった三人でこんなに広ぇ部屋と机はいらねぇだろって思ってたからな。一気に全部持ってくるならこれくらいじゃなきゃ無理だな。

 声がちと裏返ってたみてぇで二人とも笑ってやがる。けっ。お嬢ならまだしも、ダグだって俺と変わんねぇだろ!……って最初は思っちゃいたが、めちゃくちゃ落ち着いてやがる。やっぱ、こいつも良いとこのお坊ちゃんだったんだな。まあ、訓練し過ぎで飢え死にしかけるような馬鹿だから、その可能性は高いって思っちゃいたが。

 パンとスープと肉は当然として、全部で5品くれぇだろって思ってた俺は、ずらずらずら~っと並んだ皿にちと引く。野菜となんかわからんもんが載った平皿、スープは野菜と肉が入ったのとトロっとした黄色っぽい何かが入った深皿2枚。

 肉料理が2種になんと魚!なんか美味そうなソースがかかってる。おまけに果物が3種類載った籠が置かれている。

 順に出て来るならまだ何とかなるんだが、こう、いっぺんに来るとどれから食べていいか、迷うなんてもんじゃない。順番に使う食器が違うんだたよな?まあ、最初に良い匂いさせてる焼いた肉を食うのは間違ってるってのはちゃんとわかってるぜ。


「マナーなど気にせず、好きな物から手を付けてくれ。これだけの物を目の前にしたら、少し腹の中に入れないと、まさに、話にならんだろ。私も、美味しいうちに食べたいしな」

「すまんな、馳走になる」

「奢りだかんな?じゃ、遠慮なく。

 ……っめぇ!なんだこりゃ?単純に焼いただけの肉じゃねぇな。香辛料っての使ってんじゃねぇか?」

「ああ、これか。……ふむ。良い肉を使っているが、それだけではないな。焼き加減や付け合わせの味付けが良いのはもちろん、下味と下処理がこの柔らかさと深い味わいを生んでいる。

 香辛料はわずか。香草と野菜を使っているのかな?使われている素材はなじみがないが、西部の料理も良いものだな」

「こちらのスープは南部でしか取れない香辛料を使ってるし、このトロリとしたのは煮た野菜か?芋のようだが……」

「これはポタージュだな。煮て、潰して、濾して、ミルクとスープで伸ばしたものだ。他地方ではあまり見ないが、北部では家庭料理でもあるんだが……ここまで手をかけたのは久々に食した。使っているのは西部で取れるものだろうな。芋だろうが、初めての味だ」

「前菜も手が込んでいるな。単なる野菜かと思ったら……」

「食感が楽しい物、酸味、甘み、苦みのある物。口に入れるごとに違った味わいが楽しめる一皿。見事な前菜と言うしかない」

「淡白な川魚だな。上にかかっているのは、酸味と甘みがあるトロリとしたソースか」

「たしか、東部で取れる野菜を乾燥させた、とろみ粉だったか?が使われてるな。この独特の辛みがその証拠だ。

 ここのシェフは知見が深いな」

「……ふぅ」

「ふふっ。どうしたディグ。もう食べないのか?」

「あんたらと違って口よりも手ぇ動かしたからな。

 それに、こりゃ冷めたって美味い料理だろ?ま、ある程度腹に入れたから落ち着いた。そろそろ消化に悪い話をしようぜ」

「言うじゃないか。

 ……まあ、そんなに悪い話じゃない。いや、悪いどころか良い話だ。君たちにまずお願いしたい依頼は、護衛依頼だ」

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