5話
更新予定時間 明日14時30分
「ウッ」
私は、頬の痛みを感じ、目を覚ます。
「起きなさいよ。ガキが」
目の前には、恐ろしい表情と化し、口調が荒くなっているナーラと、4人の仲間の男達が立っていた。
頬にはまだ痛みが残っている。恐らくビンタで起こしたのだろう。
「ナーラさん? ッ? ……なんの真似ですか?」
私は椅子に座らされていたので、立ち上がろうとしたが、腕を縄で縛られていて立てなかった。
周りをよく見てみると、どうやら古い空き家のようだった。
周りには建物が無いのか、窓からは月の光が差し込んでいる。
「なんの真似か? それはこっちの台詞よ。何生きて帰ってくるのよこの邪魔者。手間がかかるじゃない」
「手間? 何を言って」
「この私が、直々に貴方を殺さなきゃいけないって事よ」
殺す? 殺される? ………
「……私を殺したところで、何もいい事はないですよ」
「は?」
私は続けて言う。
「既に、ギルドに森での事を伝えました。数日程経てば、貴方達を取り締まる兵も来るでしょう。私を殺せば、刑が重くなるだけですよ」
これは、脅しではない。本当の事だ。
刑が重くなるのを、この人達は避ける筈だ。
「な、何ですって⁉︎」
「伝えない訳ないじゃないですか。この事を」
すると、ナーラは自身の顔を怒りで赤く染めあげる。
そしてその状態のまま、座っている私の胸ぐらを掴み上げた。
「ウッ、ク……」
「なんて事を……よくも、よくも」
震える声で、怒りの言葉を口に出す。
「けど、どうせ私達は牢の中だ。殺す……精神をズタボロにしてから……殺してやる」
恐らく、もうナーラは刑が重くなる事などどうでもいいのだろう。
殺せれば、満足なのか。
「まあまあ、落ち着けよナーラ」
怒りで震えるナーラの肩を、側にいた男が止める。
「そんな怒る事ないだろ」
「ウェッジ、ならこいつの精神をも殺す方法でもあるの?」
ウェッジは、ナーラの掴んでいた私の襟を離させる。
「ナーラ、お前は考えが極端すぎだ。精神をボロボロにするのに必要なのは、別に痛みじゃなくてもいい」
そうウェッジは言うと、ニヤニヤしながら私の顔に触る。
「クッ、は、放してください!」
私の叫ぶ言葉に、ウェッジは全く耳を貸さない。
そして、ウェッジは顔を近づけてくる。
「それじゃあどうするの?」
「そりゃあ、勿論、犯す」
「ッ⁉︎」
私は、その意味を理解した途端、抗おうとする。
しかし、足掻こうにも、腕が縛られているため、動きようがなかった。
「い、いやっ!」
「そういえば、貴方そういう趣味だったわね。ロリコンで、縛りプレイが大好きな変態」
「……それ、全世界の俺みたいな性癖の奴全員に喧嘩売ってるぞ」
するとウェッジは、私の服のボタンをもう片方の腕で取り始める。
「口付けはまだだ。まずは体の方からたっぷりと味合わせてもらうぜ」
「やめてください! お願いします!」
私の必死の叫びに、ウェッジは聞かない。それどころか、どんどんウェッジの息遣いが荒くなっていく。
「ウッ」
とうとう、私の服のボタンが外され、肌が露わになる。
「ハァ、ハァ……フフフ。慎ましい胸だが、俺はこっちの方が好みだ」
ウェッジの顔が、私の顔ではなく、胸に近づけられる。
離れた瞬間、顔が自由になったので、すぐさま背けたが、意味など無い。
「それじゃあ、ヤりますか」
ウェッジは、私の肌に舌を伸ばす。
嫌だ。
「ヒッ」
嫌だ。
「おおっ、いい反応だ」
嫌だ。
「ラルク……さん」
助けて。
私が、心の中でそう願った瞬間、ドンッ! と、それに応えるかのように扉が勢いよく開いた。
「え?」
その時、月の光が、雲の光によって遮られた。
「あぁ?」
ウェッジは動きを止め、開いた扉に目を向ける。
「ッ⁉︎ リリア!」
そこにいたのは、見間違える筈もない、ラルクであった。
「ラルクさん!」
ラルクは、自身の目で私の存在を確認する。
すると、私の状態を見た瞬間、一瞬顔の力が無くなったが、すぐにその歯を食いしばり、怒りを露わにする。
「お前ら……」
ナーラは驚く。
「な、なんでここが⁉︎」
「こんな人も建物も無い場所まで匂いが残ってたからな」
ラルクは、驚くナーラにそう答える。
「は? 何それ」
「というか、お前は、リリアを助けた奴か」
男の中の1人がそう言うと、周りの人は一斉にラルクに警戒する。
「森の奥でリリアを助けたって事は、相当の手練れだ。あの森は強力な魔獣が潜んでやがるからな」
ラルクも、素手で構えだす。
今の彼には武器は無い。頼れるのは、恐らくあの素手だけだ。
「ラ、ラルクさん! その数が相手では!」
まだラルクの実力は知らない。
記憶が無い以上、戦い方を覚えているとは考えられないからだ。
「だからって、どうしようもないだろ。いくぞお前ら。リリアは返してもらう!」
そんな中、ラルクは戦闘を始めた。
たった数分の戦いは、実に一方的なものであった。