3話 町に着く
視点 ラルク
更新予定時間 明日14時30分
【オーデリア】という国について、歩きながら説明された。
「オーデリアは、この世界に存在する国の中でも、最大級の大きさを誇る国です。オーデリアには、世界中のありとあらゆる物が流れてくるので、【文化の宝庫】と呼ばれているんです」
「凄いな。そのオーデリアって国」
そんな事を俺は言う。
というか俺、そんな事も覚えてないのか。
「それで、私はクエストで、そのオーデリアから、色々な町や村を通って、この森に、仲間達と来ていました」
「クエスト?」
「はい。私は、【冒険者】でして。【冒険者】とは、人が出したお願い事【クエスト】をして、クリアした時に出る報酬で生活をしている人の事です。モンスターの討伐だったり、場合によっては普通のお手伝いだったりと、何でもこなします」
「モンスター討伐……この森に来ていたって事は、それが目的?」
すると、少女は暗い顔になる。
「……はい」
「それじゃあ、仲間は?」
「……目障りだからと言って、私を追放しました」
リリアは、少し涙目になりながら、そう答える。
「そんな理由で」
目障りだからって、そんな事が、許される筈がない。
「はい……それよりも、オーデリアは、何日かかるので、町や村で休みながら行きます。オーデリアなら、ラルクさんを知っている人もいますよ。きっと」
「ああ。ならいいけど」
確かに、オーデリアなら、俺の知人や、いるかも分からない兄妹に出会えるかもしれない。
だが、可能性としては決して高いわけではない。
「そういえば」
俺は、ふと思った疑問について聞いてみる。
「リリアは警戒していないのか? 俺の事」
今朝、あんな事をしたのだ。普通なら警戒している。
しかし、リリアは俺の事を強く警戒しているように見えない。
「そうですね。していないって言ったら嘘になりますけど、決して悪い人じゃない、と思えるんです」
「なんでだ?」
「だって、悪い人はそんなに謝ったりしませんよ。それに、もしまだ殺そうと考えていたりするのなら、とっくに私は死んでいます」
リリアは、俺の問いにそう答える。
「確かにそうだな。けどさ、この短い間で人を信用しようとするのは、やめた方がいいんじゃないのか? いつか、裏切られたりするぞ」
俺は、リリアの事を心配して、忠告する。
「……ですよね。実際、同じパーティだった人達に、置き去りにされたりしたので、直した方がいいですよね」
「大袈裟に捉えるなよ。別に完全に直せなんて言っていないからな。信用するのも大事な事だ」
実際、リリアが信用してくれたから、俺はこれからどうすればいいのかが、少し分かったんだ。
最初に会ったのが、リリアでよかった。
数時間後……
歩き続けた俺達2人は、なんとか魔獣に遭遇せずに、1番近い町に着いた。
「ここが、町か」
「はい。とりあえず、隠していた予備のお金で、服を買いましょう。流石にそれだと」
さっきから周りの人達は、俺の格好をジロジロと見ている。
こんなほぼ全裸な格好ならそうなるよな。
「ああそうしよう。安物でいいからな」
俺達はその後、服屋に行き、テキトーな男用の服を買い、俺はそれを着た。
「とりあえずは、これでいっか」
「はい。そうですね。安心です」
ああ安心だ。本当に安心だ。
「それじゃあ、もう夜になりそうですし、宿を取りましょう」
俺達は宿に向かおうとする。
すると、
「リ、リリア⁉︎」
リリアの名前が呼ばれた。
その呼ばれた方向に振り返ると、そこには男女5人の集団がいた。
武器を持っているので、冒険者だろうか。
「ナーラさん……」
リリアは、震える声でそう言う。
なんだ、知り合いなのか……待てよ。知り合い? 今の反応からすると、まさか、リリア追放した奴らか?
「なんで……なんで貴方が生きてるの? 私達は確かに貴方を森の中へ」
「お前らが、リリアを」
俺は、怒りで震える。
「な、なんなの貴方……ああ、その男に助けてもらったの?」
「……そうです」
リリアは、暗い顔をしてそう答える。
「……な、なによ。冗談よ冗談。単なるおふざけよ。何? あんなので本気になってたの?」
ナーラは、少し笑いながら誤魔化す。
「……ふざけてるのか?」
「は? ふざけるも何も、本当の事だもの」
完全に誤魔化そうとしているナーラに対し、リリアは口を開く。
「なら、私の所持品。全部返してください」
「え?」
すると、ナーラ達5人は固まった。
「"え"じゃないですよ。冗談なら、私から奪った物も、返せる筈ですよね」
「そ、そうね。アレは」
ナーラは、戸惑い始める。
こいつら、まさか、
「売りましたね。私の物、全部」
「ッ⁉︎ ち、いや、あ、あんな安物、またすぐ手に入るわよ」
売ったなこのクズ共。
それに、酷すぎるだろ言い訳。
リリアは、低い声を出しながら続ける。
「安物? 私が貯金をしてまで買った物が、安物ですか。なら本当に買えるんですか? 今すぐに」
「ウッ、流石にそれは……」
買えない。つまり高価な物を売ったんだな。
「冗談なわけないですよね。冗談で済む事だったら、世の中酷いですよ。私はこれを、オーデリアのギルドに、この事を報告します。処分はあちらが下すので、覚悟しておいてください」
リリアはそう言うと、ナーラ達に背を向き、宿に向かって歩き出した。
ナーラ達の顔は、絶望の色に染まっている。自業自得だ。
「ラルクさん。行きますよ」
俺は、そう言うリリアについて行った。
ブックマーク登録や評価の方もお願いします。