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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

退屈しのぎに学園最強になった少年、持て余した暇を潰すために始めた何でも屋が大繁盛する

掲載日:2020/09/29


 人生は死ぬまで暇潰しだ。

 魔法使いになって日本の裏側にある魔法都市に入ってもその認識は変わらなかった。

 暇潰しに来栖木くるすぎ魔法学園に入学し、退屈しのぎに園内ランキングでトップを取ってみたりもしたものの。

 上り詰めるだけ上り詰めると結局また暇を持て余すようになってしまった。

 時間を有意義に使うにはどうすればいいか?

 それを真面目に考えた結果、何でも屋を開くことに決めた。

 頼まれようが頼まれまいが、興味を引かれた物事に首を突っ込み、これを解決する。

 そうしていれば暇を持て余さずに済む。

 俺は学園トップの権限を使って学園校舎の一角にある空き教室で何でも屋を始めた。


「――ねぇ、知ってますか? 想真くん」


 学園校舎の一角にある部室に、亜美あみの声が響く。

 夕焼けで赤く染まった黒髪を揺らして振り向き、大きな瞳でこちらを見る。

 その垢抜けて整った顔には、得意気な子供のような表情が貼り付いていた。


「うちの女子生徒が何人か行方不明になっているそうですよ」

「年頃の女子が行方を眩ますくらいよくあることだろ? どうせ家出かなにかだよ」


 あくびを一つしつつ、椅子の上で伸びをする。


「私もそう思いますけど。捜索の依頼が二件くらい来てるんですよ」

「あー、そう……ほかには?」

「想真くんが好みそうな依頼はないです」

「どうでもいい依頼は腐るほどくるのにな」


 いくら繁盛しても、興味を引かれる依頼がないなら何でも屋を始めた意味がない。


「なにかほかにもっと、こう……興味が湧くような話はないのか? なんでもいいからさ」

「じゃあ……あ、こういうのはどうですか? ケルベロスの目撃証言です」


 ケルベロス?


「ケルベロスって、あのケルベロス?」

「そうです。あのケルベロスです。冥界の番犬」


 三つの頭を持つ犬の門番。


「最近、よく目撃されているみたいですよ」

「この魔法都市にケルベロスが、か」


 ここには表の世界にはいない幻想生物が多数存在している。

 ケルベロスもその一種だが、授業でも見たことがない。

 本当にいるなら見てみたいものだが、情報源が亜美の右手にある携帯端末だ。

 信憑性を疑わざるを得ない。


「本当なのか? それ」

「たぶん、間違いないですよ。目撃者の年齢層はバラバラで、共通点も見当たりませんし。計画的な悪戯って線はないと思いますよ」


 なら、多少は信じてもよさそうだ。


「ちょっと興味が出てきた」


 失踪した女子生徒を捜すよりも、よほどいい暇潰しになる。

 実際に存在していたならよし。

 存在していなくても見間違いの元になった原因を突き止められればそれでよし。

 どっちに転んでも退屈しのぎにはなりそうだ。


「どこでケルベロスを見たんだ? その人達は」

「えーっとですね。ゴミの埋立地ですね。そこでゴミを漁ってたって」

「ケルベロスがゴミ漁りか。イメージと違うけど、まぁいいか。行ってくる」

「はい、行ってらっしゃーい」


 亜美に見送られて学園を後にする。

 その足でゴミの埋立地へと向かい、ケルベロスの捜索を開始した。


§


 ゴミが山のように積み重なる不衛生な埋立地。

 決していい匂いなどしない淀んだ空気の中を歩きつつケルベロスを捜索する。


「想真くん、なにか見つかりました?」


 不意に亜美の声が聞こえ、右耳に取り付けた魔道具のイヤリングに触れる。


「いいや、まだだ」


 返事をしつつ手を離して捜索を再開する。


「目撃情報が夕方に固まってますから、時間的にも見つけやすいと思うんですけど」

「今のところ手がかりはなしだな。そろそろ鼻が曲がりそうだ」

「まぁ、ゴミ山のまっただ中ですからね。あ、右手にオモチャの犬が落ちてますよ」


 右手を見てみると、たしかにゴミ山の麓に薄汚れた犬のオモチャが転がっている。

 それ見つけてから足を止めて周囲を見渡すと、ゴミ山から突き出た自転車のハンドルに一羽の鳥が止まっているのを発見する。


「そこだな」


 指差して、そう言った。


「大正解です」


 鳥が飛び上がって、差し出した指にとまる。

 見た目は本物と区別が付かないが、その体重はずっしりとしていて重い。

 亜美がいつも使用している飛行型の監視魔道具だ。

 名前はピー助だったか。


「どうせなら空から手がかりを探してくれ」

「はーい。じゃ、行ってきますね」


 再び飛び上がると広い空へと飛び上がっていく。

 それを見届け止めていた足を再び動かした。


「ここにあるのは燃えないゴミだけか」


 ゴミを漁っていたらしいが、ここに食えるようなゴミはない。

 なら、ここに棲み着いた犬やら猫、鼠を食いに来ているのかも知れない。

 それなら先ほどからちらほらと見かけている。

 ゴミだらけの地面を踏み締めて、犬猫や鼠にも注意しつつ周囲に目を向ける。

 なかなか手がかりを見つけられないが、その時間は苦じゃない。

 なんの目的も持たないまま無為に流れていく時間に比べたらマシなほうだ。


「――ん?」


 不意に鼻をつく嫌な匂い。

 それは強烈な腐臭に代わり、思わず鼻を押さえた。


「なんだ、この臭い」


 顔をしかめつつも近づいていくと、食い荒らされた鼠の死体が落ちていた。

 それも一つや二つではなく点々と転がっている。

 そして、これらはまだ血も固まっておらず、腐るほど時間が経っていなかった。


「なんなんだ?」


 鼠の死体を辿るように歩くと、その先で鼠の死体を貪っている一匹の生物を発見する。

 いや、あれは本当に一匹か?


「グルルルルルルルルルルッ」


 喉を鳴らすような低い唸り声が二重に響き、その生物が食事を止める。

 顔を上げて視線をこちらに向けると四つの瞳に睨まれた。

 白と黒の毛並みがツギハギに繋がれた二つ首の大猫。

 胴体は一部が腐ったように爛れ、腐臭を放っている。

 その尾は根元から白と黒の二つに分かれていた。


「ケルベロス、じゃないよな」


 これじゃまるで二叉だ。

 もっともあの妖怪の首は一つだが。


「フシュゥウウウゥウウウウウウッ」


 体勢を低くし、白と黒の頭が威嚇するように声を上げた。

 牙が剥き出しとなり、爪が地面を深く抉る。

 そうしても引かない俺を見て、その白黒猫は地面を蹴って跳び上がった。

 その牙と爪で八つ裂きにせんと迫り、こちらは冷静に魔法を唱える。


火々炎纏(かかえんてん)


 火炎を身に纏い、熱波で白黒猫を怯ませると同時にそのツギハギの胴体を殴りつけた。

 火炎を伴う殴打を受けて地面を跳ねた白黒猫は重傷を負って弱々しく立ち上がる。

 そして、一目散に逃げて姿を消した。


「亜美」


 イヤリングに触れて連絡を取る。


「はい、ちゃんと追い掛けてますよ」

「仕事が早いな」


 頭上を見上げるとピー助が飛んでいくのが見えた。


「北の方に逃げていきますね」

「わかった。そのまま追跡してくれ」


 通信を終えて爪先を北へと向ける。


「それにしても……」


 先ほどの白黒猫、あれは明らかにキメラだった。

 ツギハギだらけなところを見るに人為的に二体をバラして一体に組み立てている。

 通常の個体よりも体格が大きいことから、臓器も二つずつあって骨格もツギハギだな。

 だが、接合がうまくいっていないのか、壊死して腐っている箇所がある。


「下手くそが」


 そう吐き捨ててゴミの埋立地を後にした。

 

§


 魔法で光球を宙に浮かべると、朽ち果てた廊下が照らし出される。

 老朽化して黒ずんだ壁と、剥がれ落ちた破片が積もる埃だらけの床。

 煤けたように汚れた蛍光灯が転々と並び、部屋のネームプレートは文字が所々剥げていた。

 そして障害物を避けるように、血痕が続いている。


「いかにも廃病院って感じだな」


 廃業して久しいのか内部は荒れ放題で薬品の匂いもしない。

 かつては真っ白だった院内は、宵闇のせいで黒に侵食されていた。


「五号室、か?」


 血痕が続いているのは五号室とネームプレートに書かれた病室だった。

 引き戸を開けるとがたがたと揺れて抵抗を感じ、手を離すとその場で静止する。

 病院の扉は手を離すと勝手に閉まるようになっているはずだが、立て付けも随分と悪くなっているみたいだ。

 血痕を辿り、その大本を光球が照らし出す。


「……死体か」


 白黒猫はすでに息絶え、死体になっていた。

 見開かれた目に瞳孔反射も見られない。


「せめて焼いてやるか」


 火葬してやろうと手を翳して、ふと気配を感じて振り返る。

 その先で影が動き、仕切りに使われる医療用カーテンが大きく揺れた。

 そちらに焦点を合わせるとまたしても影が飛び、部屋中を駆け回る。

 そして、それは死角から跳びかかって来た。


「甘い」


 体を捻って反転し、その勢いを乗せた蹴りをその影に見舞う。

 足にたしかな感触と手応えを感じ、そのままその何かを蹴り飛ばした。

 吹き飛んだそれが壁にぶつかって床に落ち、光球に照らされる。


「ギギギ……」


 それは猫の要素を多分に含んだ人型のキメラだった。

 恐らくは猿かなにかと混ざっている。


「ギギャッ!」


 キメラが跳ね、突き出された鋭爪が身に迫る。

 それを軽く躱すとまた部屋中を跳ね回り始めた。

 二種が混ざっているだけあって身体能力が桁外れ。

 カウンターを狙うのもいいが、ここは撃ち落とすか。


火々散華(かかさんげ)


 魔法を唱え、頭上に炎の花が咲く。

 それは線香花火のように火炎を撒き散らし、部屋中に弾け飛ぶ。

 無差別に拡散したそれを躱すことが出来ず、キメラは直撃を喰らって吹き飛んだ。


「ギャァァアァアァアアアッ!?」


 病室から飛び出て廊下の壁へと激突し、汚れた床に倒れ伏す。

 震える手足で立ち上がると、こちらを一睨みして廊下の奥へと逃げていった。


「タフだな」


 一度、振り返ると先ほどの魔法で白黒猫の火葬は済んでいた。

 骨すらも残らず灰となったのを確認しつつ逃げていく背中を追う。

 キメラは逃げるのに必死なのか、常に音が慣らして逃げている。

 それを頼りに廃病院の奥へと進んで行くと、ホルマリン漬けの瓶が壁際にずらりと並んでいた。

 詰められているのは多種多様なキメラの死体だ。

 元の動物が連想できるほど原型が残ったものから、想像も付かないほど変わり果てた者まで、数え切れないほど並んでいる。


「動物愛護団体が黙ってないな」


 一部、瓶が割れて中身が床に転がっていた。

 逃げたキメラが引っかけていったみたいだ。

 その跨いで先へと進むと通路の奥に明かりが突いているのが見える。

 警戒して足を進めると両開きの扉が小さく揺れているのを目にした。

 あの先にキメラが逃げ込んだのだと確信し、ゆっくりと近づいて扉を押し開いた。

 侵入するとまず医療用カーテンの仕切りが目に入る。

 それは室内を二分していて、人影を映し出していた。

 キメラのような歪なシルエットではなく、それは完全に人の形をしている。


「おい」


 カーテンを引き、声を掛ける。

 その先には薬棚に手を伸ばす一人の女がいた。

 彼女は手を下ろすと、ゆらりとこちらに振り返る。


「あらぁ、見つかっちゃった」


 赤く穢れた白衣を身に纏い、血塗れのゴム手袋を嵌めていた。

 頬にも血の跡があり、彼女はそれは白衣の袖で拭う。

 その隣には先ほどのキメラがいて、負傷した腹部を押さえながらもこちらを睨んでいる。


「重傷を負って帰ってくるものだから何事かと思ったけど、そういうこと」


 視線が俺からキメラへと向かう。


「意外と使えないのね、人のキメラも」


 そして、キメラの負傷した箇所を抉るように蹴り上げた。


「ギャ……アァ……」


 悲鳴を上げ、のたうち回る。


「人のキメラ?」

「そうよぉ、動物を混ぜるのに飽きちゃって。適当な女の子を攫って混ぜてみたのよ。猫とか鼠とかとね」


 倒れ伏したキメラを踏みつけ、女は続ける。


「多少は知能が残ったみたいだし、結構使えると思ってたけど。迷い込んできた人間一人も狩れないなんてとんだ期待外れだわ」


 踏みつけられ、患部から出血しても、キメラは抵抗しない。

 そういう風に造られている。


「まぁ、でもいいわ。あなたに新しい実験体になってもらうから」

「実験? なんの実験だ?」

「私のスキルはね。ミックスって言うのよ」


 キメラから足を離し、薬だなから小瓶を取り出す。


「色んなものを混ぜ合わせることが出来て楽しかったわぁ。フルーツを沢山買ってもらってミックスジュースなんかも作ったわね」


 小瓶をデスクに置くと椅子にどっかりと腰掛ける。


「でもね、ある日思ったのよ。生き物同士を混ぜ合わせたらどうなるんだろう? って」


 くすくすと彼女は笑う。

 思い出し笑いでもするように。


「始めはなんだったかしら? あぁ、そう。虫だったわね。チョウチョとカマキリを混ぜてみたら、空飛ぶカマキリが造れちゃったものだから楽しくなっちゃって。虫から魚へ魚から動物へ、動物から人間へ。このあと幻想生物も試して見るつもりなのよ? ふふふ」


 薄気味悪い笑みをまた浮かべ、彼女は懐に手をやった。


「これまで色んな動物を混ぜてきたけど」


 そう言いつつ、ベルを取り出す。


「この子は特別、自信作なのよ?」


 ちりんとベルがなり、右隣の壁が音を立てて吹き飛んだ。

 衝撃で天井のレールが外れて医療用カーテンが地に落ちる。

 それを踏みつけて乱入してきたのは、見上げるほどの巨体を有する猛犬。

 三つの頭を持ち、それぞれが自立して動く、冥界の番犬。

 ケルベロス。

 ツギハギだらけではあるが、たしかに噂通りに存在していた。

 本物とは程遠い完成度をしてはいるが。


「私の可愛いケルベロス。あんまり歯形を付けちゃダメよ。使えなくなっちゃうから」

「グルルルルルルルルルルルルルルッ」


 唸り声が三重に連なり、低く響く。


「ウォオオオォオオオオォオオオオオオオッ」


 連なる咆哮を叫び、牙を剥き出しにして駆け出した。

 引き裂けるほど大きく開けられた大顎が三つも迫り、噛み砕かんと閉じられる。

 それを紙一重で躱して顎下を潜り抜け、ケルベロスの側面に逃れて手を伸ばす。

 ツギハギだらけの胴体に振れ、俺の固有スキルを発動した。


「クラフト」


 瞬間、ケルベロスがバラバラに砕け散る。

 三つの首も、巨躯も、四肢も、ツギハギが解けて瞬く間に解体された。


「な、なん……ですって?」


 自慢のケルベロスが瞬殺されたからか、女は現実が受け入れられていないようだった。

 目を見開いて動揺し、開いた口が塞がらないでいる。


「俺の固有スキルは解体と構築の能力を併せ持つ。このスキルでケルベロスを解体し、もとの動物に構築し直した」


 その宣言通り、砕け散った肉塊が元の犬へと回帰する。


「そ、そんな馬鹿な話ッ、ありえないッ」

「でも、ご覧の通りだ。ケルベロスは消えて、犬が残ってる」


 ケルベロスを構成していた十数頭の犬たちが立ち上がった。

 生きて呼吸をし、周囲を見渡している。


「解体……構築……あなた、まさか」

「その通りですよ!」


 廊下の奥からピー助がやってきて肩に止まった。

 設定をスピーカーにして自ら喋っている。


来栖木くるすぎのクラフトマスター、津繰想真つくりそうまくんです!」

「そう呼んでるのは一人だけだけどな」


 正直、恥ずかしいから止めて欲しい。


「なんで、あなたみたいな子が」

「ケルベロスがいるって聞いたもんで見学しに来たんだ。そしたらこんな出来損ないのキメラを見せつけられた」


 部屋の角に放置されていたホルマリン漬けの瓶をちらりと見る。


「俺ならもっと上手く造れるぜ?」

「――このクソガキッ!」


 デスク上の小瓶を手に取り、こちらに投げ付けようと振りかぶる。

 だから、その前に決着を付けた。


「瑠璃燕」


 魔法を唱え、瑠璃色の燕を飛ばす。

 それは女の胴を撃ち抜き、その意識を刈り取った。

 ぐったりとして地面に倒れ込んだのを確認し、一息をつく。


「さて、と」


 纏わり付く犬たちの隙間を縫って人のキメラへと近づく。

 ぐったりとしたその身に触れて解体し、人と猫に再構築する。

 それからすぐ人に戻った彼女に医療用カーテンを掛けた。


「亜美」

「はい、失踪した来栖木の女子生徒ですね。間違いないです」

「やっぱりそうか」


 ただの家出じゃなかったみたいだ。


「あの女の口振りだとまだいそうだな」


 目を付けたのはケルベロスが開けた壁の穴だ。

 意識のない彼女に犬たちが寄り添ったので、ここは任せることにする。

 足を進めて壁の穴を抜けると、幾つもの檻が所狭しと並ぶ空間に出た。

 その中には何人もの人型キメラが閉じ込められている。


「これを全部か……」


 思わず溜息をつく。


「しようがない。やるか」


 覚悟を決めて、一人ずつ解体と構築に取りかかった。


§


「うちに来てた二件の依頼、どっちも取り下げられましたよ」


 放課後になってすぐの空き教室で、亜美が携帯端末をいじりつつそう言った。


「無事に帰ってきたのか。なら、あの廃病院に二人ともいたんだな」

「いえ、ただの家出だったそうです」

「なんだそりゃ」


 やっぱりただの家出かよ。


「まったく、人騒がせな」


 結局は年頃の女子にはよくある話だった。


「まぁ、いいじゃないですか。キメラにされた罪のない女子生徒を助け出せたんですから。犯人も誘拐とキメラ製造法違反とかなんとかって罪で捕まりましたし」

「まぁな」


 檻に入っていたキメラをすべてに解体と再構築を施したのち、然るべき行政機関に通報した。

 廃病院の中は決定的な証拠が盛りだくさんになっている。

 疑いようもなく女は取り押さえられ、手錠を掛けられたようだ。


「なんにせよ、いい暇潰しにはなった」


 俺にとっては、それがこの上ない報酬だ。


「そんな想真くんにお疲れ様のプレゼントです。はい!」


 そう言って差し出されたのは――


「ミックスナッツです」

「……ミックス、ね」


 それを受け取り、適当なナッツを頬張った。

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