繋がる記憶 ※400字 #311novels
【本文情報】
本文字数:400字
ジャンル:微SF ※すこしふしぎ
テーマや要素:近未来、科学技術、震災後、平行世界?
その他:#311novels ※オリジナルタグ
「記録」
呟き瞬くと、ぱしゃりと電子音が耳元で響いた。
「やっぱり便利だな」
目に見える風景を脳内メモリに保存する機能。つい先日手術で取り付けたものだったが、旅に発って以来大いに役立ってくれている。
「展開」
それから収めた風景を、閉じた瞼の裏に映し出した。美しく広がる海、続く浜辺、背後にある街を高く守る石の壁、そして。
「あれ?」
思わず口にする。
「どうしたの?」
隣の人がそう問うてきた。
「これは」
どこから紛れたか、次々映し出される人々の姿、街の賑わい、瓦礫の山、闇に舞う雪華と空へ上ってゆく無数の光。
「それは『記憶』よ」
再びの声にハッとして瞼を開く。
そうだ、一人の旅に、隣の誰かなど居ようはずもない。
しかし。
「そうか」
どこかすんなり納得もして。
そうして黄昏から宵へと移りゆく空気の中、一世に、懸命に点る水面のきらめきを捉えると、うっすらと揺れる眼に焼き付けながら、心からの言の葉を送った。
「どうか、安らかに」