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幕間 沙霧美音

「くふふ」


 思わず笑みがこぼれてしまった。

 だってそうだろう。自分が思い描いていたとおり、ヒーローの様に人の危機に飛び込んで、そして救出したのだから。


 小さい頃からヒーロー物を見て育ったため、そこを目指して中学生の時に母と上京し芸能事務所にも入った。

 高校生になったら高校の寮に入り、独り暮らしをしながら芸能活動を続けた。


 しかし、選ばれたののはRe:S(リス)という名前のグループの一員だった。

 嬉しくないわけではなかったが、周りの子たちが互いに互いを蹴落とそうとしている、行ってみれば裏の顔や素顔を見てしまうのはなんとも辛いものがあった。

 それでも私は()を確立し、グループ内でもそこそこの地位を築き、ある程度は平穏に暮らしていた。ある程度は。


 ――だからこそ。


「アヤ、何してんの?」


 連絡が取れなくなってしまったメンバーの家へ様子を見に行くと、中ではメンバーの子が男の体をむさぼり食っていた。

 『食す』という意味で。


「お腹がぁー空いてぇ。寝れぇなくてー」


 『コイツはもう私が知っているアヤではない』と直感的に思った。まず、人間でもないと。

 男は、握手会によく来ていたファンだ。アヤを推していて、アヤもまんざらでもない様子だった。

 そろそろヤバイかな、と思っていたけど、別の意味でやばくなっていた。


「マネージャーに連絡入れるから」


 入れたところで、マネージャーが判断できる内容ではない、と今では思い至るけど、あの時は私自身、気が動転していた。

 だって、メンバーが人肉を喰らっているんだから仕方が無いだろう。


「待ってぇー。男と付き合ってるのはぁー、見逃してぇよぉー。誰か紹介するからぁー」


 音の合っていない間延びした声が酷く耳障りで、頑張っている他のメンバーを裏切ったことに対する憤りよりも、そちらがイラついて仕方が無い。


「アンタ、最低だな」

「「「「「おっ、良い正義面。なら、君にはこれをあげよう」」」」」


 耳鳴りのような重なった声が聞こえると、私の手には、いつの間にかユラユラと揺らめく大きな鎌が持たされていた。

 大きすぎる鎌では扱いづらい室内であっても、壁や床や天井はすり抜けるので振り回すには問題ない。


 使い方は分かっている。

 口周りを赤黒く染め、内臓をくちゃくちゃと()んでいるアヤの首に刃先を引っかける。


「えぇー!? ウケルー」

「そう。良かったね」


 アヤは病気のためRe:S(リス)を脱退したらしい。

 それと時を同じくして、あるアパートの一室で男の惨殺したいが発見された。

 恐ろしいことに、この男は生きながらにして動物に(・・・)食い殺されたそうだ。

 私が何をしたか覚えているけど、私が知らない結果になっていた。


「坂咲恭也くんかぁー。友達になれるかなぁー」


 Re:S(リス)のメンバーとしての私にはよく人が寄ってくる。アイドルだから。

 でも今日、会った恭也くんは家が厳しいらしくテレビもスマホも持っていないらしい。


 私の顔を見ても愕くことは全くなかった。つまり、アイドルというフィルターなしで友達になれる可能性がある相手だ。


 しかも、同じ異能力持ち。


 楽しくなりそうだった。

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