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1話:人の感情の結晶を採って扱う商人の話
人の感情の結晶を採って扱う商人の話。
採取方法は色々あって一番早く美しいものが採れやすいのは透明な入れ物を使う方法で最近ではもっぱら多くなりましたと。小さな鍵付木箱で何十年も寝かせる方法では素晴らしい結晶が採れるらしいが黒い塊や気体になったりいつの間にか空になったりと難しいらしい。
まずは入れ物に静かに流し込みます。無理に扱うと濁って台無しになるから要注意。気になっても揺らさないでしばらく置いておくと少しずつきらきらした沈殿物が固まって綺麗な結晶がとれます。その白蝶貝みたく乳白なのは哀惜のあちらで五色に光る色の定まらない透明は名無しです。なに適当な通称です。
子供や大人、男や女の違いはあるのかねと聞けば、そんなものありません、色々なものが少しずつ混ざって同じものは一つもなくそれが微妙な違いになるとのこと。
だから集めても集めても満足しないお客様は沢山いらっしゃいます。まあ、なかには一つだけを大事にされていて噂を聞きつけ持っていっても見向きもされない方もおりますが。とっときのをお勧めするのですがね…。