第44話 7桁の買い物
アイナちゃんとステラさんと一緒に住むことが決まった。
となると、いま俺がやるべきは『部屋作り』。
ばーちゃんの家に戻った俺は、さっそく買い物リストを作ることに。
店の二階には、部屋が四つある。
一つは俺の自室にするとして、残り三部屋。
「ステラさんの部屋とアイナちゃんの部屋と、あとはリビングって感じでいいかな? ああ、でもアイナちゃんはステラさんと一緒に寝てるんだったな。じゃあ寝室と親子部屋の二部屋に分けて、ベッドはダブルサイズを一つでいいか」
頭の中に間取り図を描き、家具の配置を考えていく。
一人暮らしが長かった俺にとって、三人分の配置を考えるのはとても楽しかった。
「ルームシェアってこんな感じなのかな? んー、でも子供のアイナちゃんもいるし、どちらかというと家族か。まるでお父さんだな、俺」
必要な家具のリストを作り、いざ大型家具店へ――とその前に、
「買い物の前に、家具の調達資金を作っとかないとね」
等価交換のスキルで日本円を得ることにした。
「そういえば、いまどれぐらいおカネを持っているんだろう?」
先日の金貨も含め、いまのところ順調に稼いでいる。
ここいらで一度、自分の総資産を把握しておこうと思ったしだいだ。
「まずは空間収納からおカネを取り出して……っと」
仏壇の置かれた和室に、金銀銅貨をじゃらじゃらと。
お釣り用に銅貨を500枚取っておき、残りを種類ごとに10枚ずつ積み上げ、並べていく。
「お次は等価交換だ」
等価交換のスキルで、異世界のおカネを日本円に替えていく。
その結果、目の前でとんでもないことが起こった。
「…………え? ろ、ろくせんまんえんんっ!? はぁぁぁぁっ!? マジか!? これマジか俺!」
ニノリッチで商売をはじめて、三ヵ月足らず。
たったの三ヵ月で、俺は6000万円もの大金を得てしまったのだった。
これにはおカネにがめつい俺も慌てるばかり。
このままのペースが続けば、俺の年収は2億4000万円。
億超えだ、億超え。
一部の界隈で『億り人』と呼ばれる、富裕層の仲間入りをすることになる。
「2億4000万とか……そんなの、プロ野球の一流選手クラスじゃないか。やったぜばーちゃん。人生逆転ホームランだ!」
遺影でダブルピースしているばーちゃんに向かって、俺もダブルピース。
祖母と孫のダブルピースによる共演がそこにあった。
「前の会社じゃ、鬱に両足突っ込みかけていた俺が……億かぁ」
勝ち組。
脳内にそんな単語が響き渡った。
「2億もあれば、あれやこれも簡単に買え…………うへへ、うへへへへ」
欲にまみれた想像を数分ばかりしたあと、
「…………ハッ!? いけないいけない。これから家具を買いに行くんだった」
俺は我に返り、やっと家具を買いに行くのだった。
◇◆◇◆◇◆
この日、俺は自分用にベッドフレームとマットレス(税込み18万1500円)に、机と椅子(5万9400円)を。
アイナちゃんとステラさん用として、やっぱりベッドフレームとマットレス(ダブルサイズで23万9800円)に、北欧調の4段チェスト(19万1400円)と、やっぱり北欧調のメイク台(19万5800円)を。
みんなで食卓を囲めるようにと、ダイニングテーブルとイスのセット(26万1800円)も忘れない。
しめて、112万9700円のお買い物。
もちろん、現金一括払いでの購入だ。
「ありがとうございましたっ!!!」
出口まで見送ってくれた店員が、頭が膝にくっつくんじゃないかって勢いで深く頭を下げる。
彼は入社したての新人で、購入金額が100万円超えの客は、はじめてだったそうだ。
まあ、一度に100万超えの買い物したのは、俺もはじめてだったけどね。
購入した家具が届くのは一〇日後。
その間に、アイナちゃんたちには荷物をまとめておいてもらおう。
そんなことを考えながら、俺は大型家具店をあとにするのだった。
【現在の所持金】
・金貨 00枚
・銀貨 00枚
・銅貨 500枚
【日本円】
・60,213,200円