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第16話 成功への閃き

 町長のカレンさんに、冒険者ギルドから視察に来た人をビックリさせてくれと頼まれ、すでに三日が経った。

 ただいまプレオープン中のお店は、今日も大賑わい。

 午前中にマッチが完売し、昼には営業を終了する。


 そして俺は持て余した午後を、日本からどんな商品を持ってくるか考えていた。

 なんせ俺の商品チョイスにこの町の未来がかかっている、と言っても過言ではない状況だ。

 そりゃ悩んじゃうよね。


「うーむ」


 カレンさんはマッチだけで十分みたいなことを言っていたけれど、俺としては視察に来た人の心にグッとくる物をもう一つぐらいは用意しておきたい。

 しかし、冒険者どころかこの世界の住人ですらない俺には、何を用意すればいいのかいまいち想像がつかなかったのだ。

 こうなっては仕方がない。


「よし。決めたぞ」


 俺はある決心をした。


「ん? シローお兄ちゃんなにをきめたの?」


 お昼ご飯(俺が用意した)を食べ終えたアイナちゃんが訊いてくる。


「よくぞ聞いてくれたアイナちゃん。こないだカレンさんに頼まれた件があるじゃない?」


「ぼーけんしゃギルドのひとのやつ?」


「そそ。それそれ。視察の人にマッチを見せてくれー、ってやつ。でも俺としてはさ、マッチの他にも冒険の役に立つ物を用意しておきたいんだよね」


「あ、わかった。それでなにを持ってくるかきめたんだ。そうでしょシローお兄ちゃん?」


「ブブー。外れでーす。正解は……」


「正解は?」


 小首を傾げて訊いてくるアイナちゃんに、俺は自分の考えを伝える。

 アイナちゃんは、


「えええ~~~~~~~~っ!?」


 と叫んじゃうぐらい、すっごくビックリしていた。



 ◇◆◇◆◇



「というわけでですねカレンさん、俺ちょっと冒険者の人に同行してみようと思うんですよ」


 ここは役場にある町長の執務室。

 椅子に座るカレンさんは、机越しに俺のアイデアを聞き、


「……シロー、君は本気で言っているのか?」


 真剣な顔で訊き返してきた。


「ええ。本気です。冒険者たちが何を必要としているかを知るには、やっぱり冒険者に同行するのが一番だと思うんですよね」


 俺が思いついたことはいたって簡単。

 冒険者と行動を共にし、どんな物が売れそうかを実地で学ぼうと考えたのだ。


「この町で冒険者が行くところは東の森しかない。そしてあの森は君が考えているよりずっと危険なところだぞ?」


「覚悟の上です。ああ、でも危ないことはしませんよ。薬草……でしたっけ? 薬草や鉱物の採取に向かう冒険者たちに同行できればと考えています。なんだったら冒険者を護衛として雇い、森で何日かキャンプするだけでも構いません」


「ふむ。それなら危険は少なそうだな」


「ですよね! というわけで」


 俺はここからが本題とばかりに身を乗り出し、


「どなたか冒険者を紹介してもらえませんか?」


 とカレンさんに言う。


「ふっ」


 カレンさんはにやりと笑い、頷く。


「わかった。明日の朝、森へ入る準備を整えてからここに来てくれ。信頼の置ける冒険者パーティを紹介しよう」


「ありがとうございます」


「いや、感謝するのはわたしの方だ。商人である君が、なんの縁もゆかりもない町のために無理をしてくれるのだからな。シロー」


 カレンさんは椅子から立ち上がり、深く頭を下げた。


「町の発展のために尽力してくれて感謝する。君の働きには必ず報いるから、いまは甘えさせてくれ」


「いやぁ、そんな風に言われると照れちゃいますね。でも……うん、どーんと俺に甘えちゃってください。まあ、しょっぱいかもしれませんけどね」


「ふふ、君は本当に懐が深いな。……本当にありがとう」


 こうして俺は、明日カレンさんに冒険者を紹介してもらうことになったのだった。

 よーし。今日中に準備を整えておくぞ。

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