第１３話 本日の利益は？
「すみません。今日の分はもう完売してしまいました」
「「「えええ～～～～～～～」」」
市場に露店を出して二日目の今日も、見事完売御礼と相成った。
ぶっ続けで接客していたから、俺もアイナちゃんもヘトヘトだ。
でも、
「シローお兄ちゃん！ ぜんぶ売れてよかったね！」
やっぱりアイナちゃんはニコニコ笑っていた。
「アイナちゃんが手伝ってくれたおかげだよ。さーて、今日の売上を数えておくか」
俺はありえないぐらい詰み上がった銅貨と銀貨を数えていく。
「ひのふのみのよ～――――……」
マッチ小（定価銅貨４枚）が６００個売れて、銅貨２４００枚。
マッチ大（定価銅貨４０枚）が２００個売れて、銀貨１７枚と銅貨６３００枚。
１個銅貨５０枚の値をつけたサバイバルマッチが１００売れて、銀貨３４枚と銅貨１６００枚。
トータルで銀貨５１枚と銅貨１０３００枚の売上だった。
日本円で１，５４０，０００円。
マッチの購入資金が１２７，５００円だから、その分を引いた純利益は実に１，４１２，５００円もあった。
なんてこった。
昨日は１時間で２０万円稼いだと思ったら、今日は３時間で１４０万円も稼いでしまったぞ。
「時給換算したら４６万円か……。いったいどこの富豪だよ」
大金を前に呆然と呟く。
おっといけない。
手伝ってくれたアイナちゃんにバイト代を払わなくては。
俺は封筒を取り出し、銀貨を１０枚ばかり入れ、
「はいアイナちゃん、今日の分のお給金です」
アイナちゃんへと手渡した。
「あ、ありがとうございます」
「そのおカネでお母さんと美味しいものでも食べてね。今日は本当にありがとう」
「ううん。アイナこそありがとう！ アイナをはたらかせてくれて…‥ホントにホントにありがとうシローお兄ちゃん！」
「助かったのは俺なのにそんなに『ありがとう』って言われると照れちゃうよ。だからもう『ありがとう』は禁止ね」
「ぶー。アイナもっといいたいのにー」
俺は照れてるのを隠すためアイナちゃんに背を向け、銀貨と銅貨をリュックへとしまう。
背負うとかなり重い。
空間収納を使っても良かったんだけど、スキルは無暗に人前で使わない方がいいと思ったから使わないでおいた。
「あんなにいっぱいあった『まっち』をぜんぶ売るなんて……シローお兄ちゃんはすごいなぁ」
アイナちゃんは何度も「すごいすごい」と言っていた。
目の前でマッチがどんどん減っていくのを嬉しそうに見ていたアイナちゃん。
正に飛ぶように売れる経験はかなり新鮮だったようだ。
「あはは、凄いのはマッチで俺じゃないよ」
「ううん。そんなことないよ。シローお兄ちゃんがすごいの！」
両手をぎゅっと握り断言するアイナちゃん。
でも手に力を入れすぎちゃったからか、
――ぐぅぅぅ。
とアイナちゃんのお腹が鳴ってしまった。
ぼっと赤面するアイナちゃん。
慌ててお腹を押さえ、恥ずかしさからか俯いてしまう。
「あ、これはね、その――」
「朝からぶっ続けだったからお腹も空くよね。アイナちゃん、よかったらこれ食べる？」
俺はリュックからサンドイッチとおにぎりを取り出す。
どちらも朝コンビニで買ったものだ。
「これ……パン？」
アイナちゃんがサンドイッチを指さして訊いてくる。
「そうだよ。ハムや卵をパンで挟んだものだ」
「アイナ、まっしろなパンはじめて見た」
「そうなんだ。食べてごらん」
「……いいの？」
「いいさ。俺も食べるし」
「……ありがとう」
「あ、また『ありがとう』って言ったな」
「いまのはちがう『ありがとう』だからいいんだもん」
アイナちゃんはそう言って笑うと、小さな手でサンドイッチを持ち、ぱくり。
瞬間、アイナちゃんの目がキラキラと輝いた。
「おいひいっ！ しろーほにいひゃん、これおいひい！！」
と、サンドイッチをあむあむしながらアイナちゃん。
こんなに喜んでくれるなんて、嬉しいよね。
喜ぶアイナちゃんを見ながら、俺もおにぎりを食べていると、
「すまない。少し良いだろうか？」
きれいなお姉さんが話しかけてきた。
歳は俺よりちょっと上ぐらいかな？
クール系な美人さんだ。
「俺ですか？」
「そうだ。この市場で『まっち』とやらを売っているのは君で合っているかな？」
「合ってますけど……ごめんなさい。今日の分のマッチは売り切れてしまったんです」
「いや、まっちとやらを買いに来たわけではない。私は君に話があってやってきたんだ」
「俺に話ですか？」
「そうだ。ああ、まだ名乗っていなかったな」
お姉さんはクールに笑い、続ける。
「私の名はカレン・シュワジョ。この町で町長をやっている者だ」
クールビューティーは、まさかの町長だった。
【現在の所持金】
・金貨 00枚
・銀貨 51枚
・銅貨 10300枚
