第11話 本日の利益と空間収納
押入れをくぐって自宅に戻った俺は、さっそく等価交換スキルを使用することに。
現在の所持金は、銀貨6枚に銅貨2252枚。
「明日のお釣り分は……うん。ほとんどのお客が銅貨で払ってたし、300枚もあればいいか」
まず、銅貨300枚を明日のお釣り用として除けておく。
「次に等価交換スキルを……えい!」
銀貨と銅貨が消え、代わりにしおれた1万円札が25枚と千円札が5枚。
あと100円玉が2枚現れた。
もともと持っていたおカネが、24100円。
串焼きが300円。
アイナちゃんのお花が3300円。
マッチ購入資金が6500円。
出店登録料が5日分で5000円。
差し引き216,000円の利益だ。
「………………マジか」
一日の――いや、1時間の稼ぎとしては、破格な額だと思う。
というか、こないだまで働いていたブラック企業の月給よりずっと多い額だぞ。
それが――たったの1時間で。
「一日20万稼げるなら、二日に一回、1時間働くだけで月収300万。年収だと3600万超えかぁ。……俺、もう再就職しなくていいんじゃないかな?」
理想の半ニートな生活に胸がときめいてしまうぞ。
「1日中ゲームやったりマンガ読んだりできる夢の生活が手に入るかもしれないのかぁ……」
おっといけない。
夢の世界よりいまは明日の準備をしないとだ。
俺はバスに乗り、隣町のホームセンターへと向かうのだった。
◇◆◇◆◇
「マッチマッチ、マッチはっと……お、ここか」
ホームセンターでマッチコーナーを見つけた俺は、ありったけカートへと放り込んでいく。
「へええ。サバイバルマッチなんて物もあるのか」
マッチコーナーの一角にあった、サバイバルマッチなる物。
説明文を読むと、耐水、耐風に優れているとのこと。
「冒険者に売れそうだな。これも買っておくか」
マッチの代金は、全部で127500円だった。
これを今朝マッチを売って得た利益から支払う。
マッチを13万円分も買うとは思ってもみなかったけど、これが明日には何倍にもなって返ってくると思えば惜しくはない。
「ありがとうございましたー」
会計を済ませた俺は、そこで大きな問題に直面した。
「……すごい量になっちゃったな」
在庫分も買ったら、大変な物量になってしまった。
さてどうやって家まで持って帰ろう。
タクシーでも捕まえるか、そう思ったときだった。
「まてよ……」
脳裏にキュピーンと稲妻が走る。
「等価交換スキルが使えたってことは、【空間収納】のスキルも使えるってことだよな?」
カートを転がし屋上駐車場へ。
右を見て、左を見て、誰もいないこと確認した俺は、
「ふん!」
カートの中身よ収納されろ! と念じる。
そしたら、いきなり目の前の空間に裂け目が現れたじゃないですか。
きっとこの裂け目に収納しろってことだろう。
俺は大量のマッチを空間の裂け目に入れていく。
全て入れ終えると、裂け目はふっと消えた。
「おー、しまえたぞ。次は取り出してみるか」
マッチを取り出したいと念じる。
すると、頭の中に収納リストが浮かび上がった。
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【収納リスト】
・マッチ小 600個
・マッチ大 200個
・サバイバルマッチ 100個
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あたり前だけど、リストはマッチだらけ。
俺はサバイバルマッチを1個取り出したいとイメージする。
直後、空間に裂け目が生まれた。
手を突っ込むと、そこには固い感触――サバイバルマッチがあった。
「……すげー。空間収納すげー」
一度コツを掴めば、あとは簡単だった。
自由自在にマッチの出し入れができるようになったのだ。
「荷物の心配はもうしなくていいってことか。これ異世界で商売やるには最強のスキルなんじゃないか?」
等価交換と空間収納。
このふたつがあれば大金を稼げるに違いない。
「よし。まずは5日間マッチを売る。それが終わったら真剣に商売のことを考えてみよう」
明日に備え早めにベッドへと入るのだった。
【現在の所持金】
・金貨 00枚
・銀貨 00枚
・銅貨 300枚
【利益】
・88,200円




