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第1話 こんにちは異世界

「こんなことって、あるんだなー」


 俺はいま、森の中に立っていた。

 前方にはファンタジーっぽい町並みが小さく見え、空を見あげればお月様がふたつ。

 そんで後ろを振り返れば、


「ばーちゃんの仏壇が置かれた和室があるっと」


 俺は気持ちを静め深呼吸。


「落ち着け。落ち着くんだ尼田士郎(アマタシロウ)。まずは状況を整理するぞ」


 先月末でブラック企業を退職した俺は、本日ばーちゃんが残した一軒家に引っ越してきた。

 掃除を済ませ、引っ越し業者が荷物を運びこむ。


 荷ほどきをはじめた俺は、ばーちゃんの仏壇(最初からあった)が置いてある和室の押し入れを開けたら――


「ファンタジーな世界に繋がっていた、と。はぁ……わけわかんねー。どんな怪奇現象だよこれ。俺疲れてるのかな」


 俺は一度和室に戻り、押し入れのふすまを閉める。

 キッチンで濃い目のコーヒーを淹れ、10分ほど休んだ後、改めて押し入れを開けてみたけど、


「やっぱり、めっちゃファンタジーしてるんだよな~」


 どうやら目の錯覚とかではなかったらしい。

 今夜は満月なのか、二つのお月さまが真ん丸に輝いていた。

 再び襖を閉じ、ばーちゃんの仏壇に線香をあげる。


「ばーちゃんはこのこと知ってたの?」


 当然答えなんか返ってこない。

 遺影の中のばーちゃんは、ちょっとイっちゃってる顔でダブルピースするばかりだ。


 ばーちゃんは3年前に行方不明になり、1年前にやっと役所から死亡認定が下りた。

 あの時はすっごい大変だったけど、いまとなっては家族全員がばーちゃんの死を受け入れている。


『士郎……いつか婆ちゃんの秘密を教えてやるからのう』


 そう言ったばーちゃんは、その『秘密』を教えぬままダブルピースで逝ってしまった。


「ばーちゃんが教えたかったことって、ひょっとして押し入れの中(コレ)のことだったのかな?」


 ばーちゃんとの思い出に浸っていると、


「ん? これは……手紙?」


 仏壇の隙間に手紙が挟まっているのを見つけた。

 手紙を手に取る。

 そこには『家族へ』の文字が。


「まさか……ばーちゃんの遺書か!?」


 俺は封を破り手紙を広げた。


「これは……ばーちゃんの字だ。なになに――――……」


 ばーちゃんが残した手紙は、『この道を行けばどうなるものか』という冒頭からはじまり、主に6つのことが書かれていた。


 1、押入れが地球とは違う世界(異世界)に繋がっていること。


 2、異世界は文明レベルが低く、代わりに『魔法』や『スキル』という不思議な力が存在すること。


 3、地球では考えられないような危険なモンスター(魔物)がいること。


 4、人間以外にも意思の疎通ができる種族が多数存在すること。


 5、手紙と一緒に異世界の言語が理解できる『魔法の指輪』を入れておいたこと。


 6、異世界の書物を仏壇の裏に隠してあるから、指輪をはめてから読むこと。


 以上のことが書かれ、手紙は『迷わず行けよ。行けばわかるさ』との一文で締められていた。


「ばーちゃん……」


 手紙に書かれていたように、封筒の中には銀色の指輪が入っていた。

 よく見ると、薄く光っているようにも見える。


 次に仏壇の裏を覗き込むと、


「本……か?」


 確かに本が2冊あった。

 謎言語で書かれているため、タイトルはおろかページをめくってもまるで読めない。


 手紙に書かれていたことが本当なら、この指輪をはめればこの謎言語――異世界の文字も理解できるそうなんだけど……。

 俺は指輪を左手の人差し指につける。

 結果――


「……等価交換の書に……く、空間収納の書?」


 さっきまで読めなかった本のタイトルが、マジで読めるようになっていた。

 等価交換の書と書かれた本は、30ページほどと薄い。


 空間収納の書に至っては10ページほどだ。

 内容はチンプンカンプンだったけど、読み終わると、


『スキル、【等価交換】を得ました』


 と頭の中で声が響いた。


「だ、誰だっ!?」


 部屋を見回しても仏壇とダブルピースしてるばーちゃんの遺影しかない。

 なにこれ? めっちゃファンタジーなんですけど。


「ふーむ。よくわからないけど、【等価交換】ってスキルを得たってことかな? なんかラノベやゲームみたいだな」


 続けて空間収納の書を読む。


『スキル、【空間収納】を得ました』


 また声が響いた。


「スキルを入手するたびに声が聞こえる仕様っぽいな」


 さて、異世界の言語を理解する指輪に、等価交換と空間収納なるスキル。

 これらをゲットしたいま、俺はどうしたもんか。


 ブラック企業を退職したばかりの俺は、ぶっちゃけかなり暇だった。

 ブラック企業では散々、それこそ命をすり減らす勢いで酷使されてきたんだ。


 失業保険はきっちり貰うつもりでいる。

 受給期間はダラダラと怠惰な生活を送るつもりだったんだけど……目の前に――というか、自宅の押入れに『異世界』が広がっているっぽいときた。


『迷わず行けよ。行けばわかるさ』


 手紙に書かれたばーちゃんからの遺言。

 俺は腕を組み、


「……どうする? 俺」


 と呟くのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ま、行方不明からの死亡認定は7年ですが、漫画版は7年になっていたので、こちらで間違っていても、まあ良いんじゃないですかね?
[気になる点] 行方不明からの死亡認定は7年だと思います。2時間ドラマ情報なので断定はできかねますが
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