初任務2
「どうされました?!」
駆けつたことも気づかずに久保田は赤いランドセルを背負った女の子を叱っていた。
「あんたこんなんでK中学にいけるわけないでしょ? 学校のテストもできないなんて馬鹿娘っ! 何回言えばわかるのっ!」
ビンタの音が響き渡る。
「あの、久保田様……?」
「あなたには関係ないでしょ!」
強い剣幕で制止されてしまった。私には他人事だけれどもさすがにこれは止めないと子供がかわいそうだ。けれども他人と言われた以上私には何もできないもどかしさを感じる。
「この馬鹿者! いくら塾代がかかってると思ってるのよ!?」
久保田様が娘に手を上げてもうだめだと思った時、ルイがその手を掴む。
「なによ?」
憎しみと怒りがにじみ出た目でにらみつける。
「そこまでにいたしませんか? お嬢様の顔をご覧ください。は……」
久保田様怒りが頂点に達したらしく頭の上に黒いもやのようなものが集まり始めていた。
ルイさんに名前を叫ばれて反射的に勢いよく返事をする。
「あなたはこっちに来て」
女の子の手を引いてリビングに連れて行く。怒られた恐怖でいっぱいで軽い放心状態の女の子の手はまるで人形のように軽かった。
「お母さんとお話してくるから僕がいいよって言うまでソファで休んでてね」
返事を確信しないでルイさんのもとへ急ぐ。あのタイプは憎しみを糧として生きるあやかし。玄関に戻ると一部あやかしと同化した久保田様がいた。
「怜、こいつはなかなか厄介だぞ」
ルイさんが久保田様を緊縛して暴れないように術で押さえている。久保田様からあやかしを引きはがさなくては久保田様はあやかしに飲まれてしまう。久保田様は殺すと呻きながら動こうともがいている。ルイはあやかしだけを人体から引き離す呪文を唱える。
「やったか?」
まとわりついていた黒い靄は消えて久保田は気を失って地面に倒れた。
「俺は久保田様を担いでベットまで運ぶから女の子のほうを頼む」
ルイさんはよっこらせと右肩に担ぎ寝室へ歩いていくが何かが変だ。言葉では言い表せない不穏な感じがする。凛久との任務中にも感じた違和感。これはよくないことが起きる予兆だ。自分でもわからないがだいたいこういうのを感じ取ったときは……
怜は直感で叫ぶ。
「ルイさんその人降ろして!」
「へ?」
「いいから!早く!」
何も異変はないのに慌てる怜の行動がわからずに怪訝な目で見るが刹那怜の言った意味が分かった。
「結界!」
久保田に残っていたあやかしがルイの首めがけて襲ってくる。