初任務
ルイが車の横に立ちドアを開けて待っていた。
「お待ちしておりました」
執事風喫茶なのでここでも気を抜かずそれを演じ切っている先輩はすごいと思う。久保田様がお乗りになられるとドアを閉めて運転席に座った。
「怜は助手席に」
指示されるがままに座った。
「出発してよろしいでしょうか?」
「ええ。構わなくてよ」
相変わらずの口調にも腹を立てることもなく「かしこまりました」とゆっくり発車した。たかが喫茶なのにここまで演じ切れるのは感心した。私は凛久の代わりに復讐を果たす、それしか心にない。
揺られること5分。閑静な住宅街に着いた。一軒家の二階建てで白を基調とした西洋風のデザインの家だ。久保田様が下りるときにもドアを開けて手を取る。久保田様が下りると車が上に弾んだ。見た目に違わずかなりふくよかなんだなとじろじろ見てしまう。足が悪いのか杖をついて私たちを玄関まで案内した。
「上がって頂戴」
「失礼いたします」
ルイ先輩に習って私もあわてて挨拶をして靴をそろえてお邪魔する。高そうな絵が飾ってあり天井が高い、これはお金持ちの匂いしかしない。あっけにとられてついきょろきょろと見渡してしまう。それに気づいてかそっと耳うちされた。
「仕事中だ。気を引き締めて。どこにあやかしが潜んでいるかわからない」
「ごめんなさい」
先輩の目は真剣だった。ここはどこであやかしが出てもおかしくないんだ。私も気を引き締めなきゃ。
一通り家の中を歩いてみる。あやかしなら家具などに落書きをしてここに来たというサインを出すのだが何も異変はなかった。ルイさんの判断でリビングでふたたび詳しい話を聞かせてもらうことにした。
「最近変わったことはありますか?」
「一か月前から毎晩寝ていると『殺す』と言われるのよ」
「誰かに恨みを買った覚えはありますか?」
「特にはないかしらねぇ……」
ルイもとっかっかりを見つけらずあたりがしいんとする。そこへチャイムの音が割って入った。
「娘が帰ってきたみたい。ちょっと失礼」
久保田は玄関に行く。話し声的にどうやら子供が小学校から帰ってきたようだ。先ほどまでの緊張が少し溶けて出された紅茶に口をつけて味わっていいると玄関から怒号が聞こえてきた。何事かとルイさんと目を合わせて飛んで行く。