敗北
頭をフル稼働させる。雷、雷が苦手とするもの。いや、雷を分解させるものでもいい。化学は得意じゃないからさっぱりわからない。そんな間にもどかどかと落ちてくるのをよけているとあっという間に距離が空いてしまった。
「別に君を閉じ込めようとかそういうことはしない。ただ俺の管理下にいてもらう」
「どういう意味だ?」
「怜には俺と一緒に暮らしてもらう。それだけだ」
「はぁ?」
「男同士なら問題はないだろ」
いやいやいやいやこのまえカマかけてきた奴が何を言っているんだ? 要は私の行動を制限し監視するのが目的なんだろう。そんなのは困る。
「断固拒否」
「悪い話ではないと思うけど? 光熱費は俺が持つし、何なら衣食住もつけるよ? 雷に君の身辺調査は頼んであるからお金に困っているくらい知ってるよ?」
「飯を一日二回にすれば問題ないんで」
先輩はあきれてため息をつくと雷に攻撃を再開するように命令した。さすがにもう限界だった。雷を相手にしていてはこちらが持たない。だから頭の先輩に狙いを定め氷の雨を降らせる術をかけながら突撃する。
「これなら逃げられまい」
「どうかな」
雷が雹を降らせて雨を地面にすべて落とした。
「そんな……」
「俺のランクになると一つのあやかしでも複数のことができるんだ」
ならばこちらも禁忌を犯すしかない。意識を集中させてあたりにいるあやかし達に話しかける。
『あなたの力を貸して頂戴。見返りはあなたの望むままに』
この空間にいる数匹のあやかしが私との契約に応じる。
『何をくれるのかな?』
『悪いけど今時間がないの。後払いでいいかしら? あの人を止めてくれさえすればいいわ』
数匹のあやかしが先輩めがけて一直線に向かっていき彼に巻き付く奴もいれば、足に噛みつく奴、腕を縛り上げる奴。先輩は奴らを自身ではがせることができないと悟ると動じることなく雷に排除するように命令する。
「雷」
雷は的確にあやかし達に雷を当てていく。次々に丸子げになって地面に落ちていく。
「たいしたものだね。こんなけのあやかしを使役できるのか。感心した」
雷が私の前に来て雷を落とす。最終勧告ってわけか。
「残念だけどここで気絶してもらおうか」
雷が光り始めた時ーー
「そこまで」
雷が止まり先輩が振り向くと、扉には髪をなびかせた男の人が立っていた。
「店長? どうしてここに?」
「ジャクライが知らせてくれたんだ。君と怜君が戦っているとね。いやはや驚いた数匹のあやかしを一度に使役してルイをあそこまで仕留めるとはね。私の目に狂いはなかった」
「怜の処分は如何様に?」
「うーん、そうだねぇ。君と一緒に住んでもらおう。何かやらかしたらその時は……ね?」
私を見て薄笑いを浮かべる。これは牽制だ。何かしたら次はない。そういうことか。