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君と僕の契約  作者: 大典太アスラ
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初任務4

おかあさんの目が鋭く光り口を動かそうとするがそれが叶わないと悟ったのか全身を大きく揺らす。

その様子を見てえみは一歩退く。


「大丈夫だから続けて?」


 えみは怜の服の裾を掴む。それを目の端でとらえた怜は優しく微笑む。


「わたしだってがんばってべんきょうしてるんだよ? どうしておこるの? ひどいよぅ。お父さんが死んでからままは悲しい顔してて、さんすうのテストで100点とってきたら喜んでくれた。笑ってくれた。だからままを笑顔にしようとがんばってきたのに」


 お母さんはうううとうめき声をあげているだけである。ルイさんにもえみにもお母さんが何を言っているのかわからない。ルイさんの前では使いたくはなかったが禁忌とされている術で日本語に解釈しよう。

 怜は気づかれないように小声で術を唱える。するとうめき声が次第に日本語に変わっていった。


「うう……。母さんは高卒で馬鹿だからってお父さんに捨てられたの。ままと同じ風になってほしくなくて……。学歴で馬鹿にされてほしくなくて……ううう」


 もう術が解けたのかとルイは違和感に一瞬目を見開いた。怜の横顔を覗くと少し歪んでいた。この術は使うと体力を消耗する。それを悟らせないように踏ん張っている怜。


「まま……。ぱぱは遠いところにお仕事に行ったんじゃなかったの? もう帰ってこないの?」


 沈黙が答えだった。残酷な真実にえみは愕然として涙が関どめが崩壊した水のように流れ始めた。


「うそだよねぇ。うそだぁ!」


「私が馬鹿だったばかりにごめんね。ごめんね」


 お母さんからあやかしが空へ一本のひもを作って消えていく。こんどこそお母さんは倒れて気絶するのはルイが右腕で抱え止めた。


「まま!」


 駆け寄るえみはおかあさんの背中にぴったりと顔を押し付けて泣きじゃくる。


「さあ、お母さんをベットまで運んだら僕たちは帰らなくてはいけないからお母さんを見ててあげてね」


 ベットにお母さんを横たえるとえみはおかあさんのそばに体育ずわりしてひっくひっくと泣いていた。二人は後ろ髪をひかれる思いで車に戻った。


「俺のあやかしをここに置いてしばらく見張りをつけておく」


「ルイさんと契約してるあやかしって……」


「鳩だ」


 ルイは術を唱えると金色の鳩が手にぼんやりと浮かび上がり、車をとすり抜けて家のほうへ飛んで行った。

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