暗黒龍と家族になります 4
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フィリアを抱きかかてたまま山を暗黒龍は降りていく。
その身は軽く、フィリアはあまりの速さに驚いた。
フィリアの家は、山を降りた林の中にあった。小さな屋敷で、中にはいると、しんと静まり返っていた。
「フィリア。そなたの両親はどうしたのだ?挨拶をせねばいけないだろう。」
一体どんな挨拶をするつもりなのかとフィリアは思ったが、首を横に振る。
「えーっとね、私の母親は平民で、父親は男爵だったの。だから結婚出来なくてね、父親はこの屋敷を母に与えたの。母がいたころは、父親もここに通っていたのだけれど、去年母が亡くなってからは、一度も見ていないわね。あ、でも、通いのお手伝いさんが来てくれるからごはんとかには困らなくてありがたいのよ。」
その言葉に、暗黒龍は驚いた。
屋敷の中を見回すと、薄暗く、寂しい。
「ここに、、たった一人なのか?」
すると、フィリアはにっこりと笑みを浮かべた。
「人間はいないけれど、この屋敷は賑やかなの。きて!貴方を皆に紹介しなくちゃ!」
フィリアは意気揚々と暗黒龍の手を引いて、庭へとつれていく。
「目をつむって!いい?あけちゃだめよ。」
「あ、、ああ。」
手を引き、ゆっくりと庭への扉を開く。
少しずつ、朝が近づき、薄っすらと太陽の暖かさを感じる。
「いいわ!目を開けて!」
ゆっくりと瞼を持ち上げる。
そして、息を呑んだ。
緑の暖かな光、淡い水辺にきらめく光、花々のように色とりどりに輝く光。
その庭は、庭園のように人の手で整えられたものではなかった。
緑が活き活きと広がり、花々が咲き誇る。その中央にある噴水の水は、煌めき、虹色の魚が水面を揺らす。
「これは、、、精霊、、か?」
フィリアは自慢げに頷いた。
「1年前から修行を初めたら、集まってくるようになったの。今ではみんな大切なお友達よ。」
「修行?」
「うん。そっちの広場は体の鍛錬用。こっちの庭は魔力を体の中でねって、使う練習用なの。災いの魔力を消すために頑張ったんだよ。」
ほめてほめてと言わんばかりに、にっこりと笑顔を向けてくるフィリア。だが、暗黒龍からしてみれば、1年の修行で成し得たフィリアの才能に驚く。それに、フィリアの体があちこち怪我をしている理由も分かった。
「そなたは女の子なのだぞ。、、だからこんなに傷だらけだったのか、、、。」
その言葉にフィリアは慌てて両手を後ろに回して隠した。
「、、そんなに怪我してない、、よ?」
小さく息を吐き、暗黒龍は跪き、フィリアの手を取った。
ちゅっと、手の甲にキスをされ、フィリアは一気に真っ赤になった。
小さな手、小さな体。
きっと才能だけではない。並大抵の修行ではなかったはずだ。
転生者だろうと、我の事など関係もないだろうに。それでも我の為に、力を尽くしてくれたのだ。
なんと稀有な存在か。
人が見て見ぬふりををするものを、自ら動くことは存外難しい。
愛おしい。
これは、久しぶりに人の子にあったからではない。フィリアだからこそもたらす感情だ。
この愛し子を守ろう。
「ありがとう。フィリア。我が姫よ。」
あの暗闇の底から、光へと導いてくれた。
憎しみに負けそうになっていた心を救ってくれた。
感謝してもしきれない。
ここに誓おう。
「我、グリードリッヒ・フェラザードの名において、これから先、姫フィリアを守り抜くと誓おう。」
フィリアは驚き、首を横に振った。
「そんなの別にいいの!貴方は自由なのよ!」
グリードはにやりと笑った。
「ならば自由に、そなたを守ろう。」
精霊達が煌めき、笑ったような気がした。
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