暗黒龍を助けたい! 3
楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!
山から溢れ出していた災いの魔力が、空気に溶けるように消え、自分を縛っていた力も消えた。
体に染み付いてしまった暗黒の魔力は消えずとも、今までの、苦しみや痛みは感じられない。
『これは、、、』
目の前の小さな幼女は、放った聖魔法の光を少しずつ弱めていく。そして、その場に崩れるように倒れた。
暗黒龍は、息を呑むと、慌てて体を人へと変化させ、幼女を抱き起こした。
「大丈夫か?!」
小さな手が、ゆっくりと伸び、頬に触れる。
「もう、痛くない?苦しくない?、、、ごめんなさい。本当に、、、。」
大きな瞳から、大粒の涙がぽたりぽたりと流れ落ちる。
なんてキレイなのだろうか。
自分の事を心配しているのだ。小さな体で無理をして、体が辛いだろうに。
「あぁ。もう大丈夫だ。、、そなたのおかげだ。礼を言う。」
幼女はにっこりと微笑んだ。
その微笑みに、胸の中がじんわりと暖かくなる。心臓がどくんと脈打つ。
「そなたは伝説の、聖女なのか?」
幼女はクスリと笑った。そして首を横に降る。
「違うわ。でも、、、貴方が無事に解放できて良かった。」
そういうと、幼女は気を失ってしまった。
魔力を使いすぎたのだろう。
体を抱き上げると、羽のように軽かった。よくよく見ると、体にはあざや、小さな怪我があり驚いた。
「この幼女はいったい何者なのだ。」
そう呟いたものの、答えは帰ってくるはずもなかった。
夜が深まり、月が上った頃、幼女は身をよじり、ゆっくりと重たい瞼をあげた。
「ぅ、、、んぅ。」
「目が冷めたか?」
「え?、、、はぇ!?」
抱きかかえていた幼女は起きた途端に顔を赤らめてこちらを見つめたきた。
小動物のようでとても可愛らしい。
「こ、、、、ここは?」
「山の山頂の岩の上だな。今日は満月だ。」
頬をかすめていく風は少し冷たく、心地がいい。
山頂から見下ろすと、町の明かりがチラチラと見える。
「気持がいい。こんなに、心が穏やかなのは久しぶりだ。」
瞼を閉じて風を感じていると、腕の中の幼女が身をよじり、腕から抜け出そうとする。
「どうした?」
「お、、重たいかと思って。」
暖かなぬくもりを手放すのが惜しくて、わざと抱きかかえ直した。
それに幼女はきょとんと首を傾げる。
「あ、、あの。」
「重くない。」
「え、、あの。」
「重くない。」
有無を言わせないようにそういうと、幼女は小さく恥ずかしそうに頷いた。
可愛らしい。
久しぶり人間だからこんなに可愛く見えるのだろうか?
「そなたは何者なのだ?」
すると、微妙な顔を幼女は浮かべた。
「名前はフィリア。あのね、私、信じてもらえないかもだけど、違う世界から生まれ変わってこの世界に来た転生者なの。」
その言葉には驚いた。
龍の中のお伽話にはよく出てくる。
聖女、いずこかの国より、世界を超え、この地に舞い降り、平和をもたらす、と。
先程の力を見せられては嘘だとは思えない。
「なるほど、そして、そなたは我に何を望む?」
フィリアは首を傾げた。
その姿も愛らしい。
「何も。しいていうなら、18歳まで待っていてほしくて、その頃にもう一回会えれば、貴方を聖龍に戻せるのだけれど。」
それを聞き、驚きよりも寂しさを感じる。
離れないと、いけないのだろうか。
「そなたの側にいてはだめか?」
フィリアは大きな瞳をよりいっそう大きく見開くと、少し顔を赤らめる、首をぶんぶんと横に大きく振った。
それを見て嬉しくなる。
「でも、、貴方は嫌じゃないの?私は人間だし、人間達の学校へ通わないといけなくなるわ。」
「嫌ではない。、、、確かに我は裏切られたし、とても長い間苦しんだ。だが、その闇から助け出してくれたのも、そなた、人間だ。」
フィリアは複雑そうに顔を歪めた。
「それにな、我も苦しかったが、友も苦しかっただろうと思う。」
「え?」
「あの時、どうしようもなかったのだ。災いの魔力をそのままにしていれば世界そのものも危うかった。友は、、、泣いて謝っていた。我も、仕方ないと、受入れたのだ。」
その言葉にフィリアは衝撃を受けた。痛みや悲しみ、苦痛が延々とくるものを受け入れるなど、自分には無理だ。
自分だったら絶望し、狂っていたかもしれない。
「、、、、ありがとう。」
思わずそう言葉がもれた。
暗黒龍は驚いたように目を丸くしそして優しげに微笑んだ。
「どういたしまして。」
月夜の晩、二人は互いにほほえみあった。
少しずつ、糖度はましていこうと思います。
読んで下さりありがとうございました!